農業共済(・農業保険)の現状と今後の課題…コンプライアンス・マネジメントの立場から

1.農業共済(・農業保険)の現状に関する責任

要するにこの責任をひとり農業共済組合だけに押し付けていいものであろうか。中川総合法務オフィスでは、数多くのNOSAIでの講演やコンプライアンス研修講師、さらには顧問業務を務めた経験から言うと、以下の三者それぞれに問題があろう。

(1)農林水産省の農業共済組合等への指導体制の問題

 ①関係の希薄化

そもそも、農業災害補償に基づく共済制度は国の仕事である。農業は社会の基盤である。人間社会が他の生物と違う繁栄ができたのも、国が発展したのも、人が生きることと同義と言っていい食の安定があってこそである。

ところが、総務省の戸籍発行業務ような市町村に全面的に任せて済む業務ではないのである。市町村農業共済組織は戦後破綻したではないか。災害時の補償額を考えれば市町村ができることでないのを先見の明がない。しかも共済制度であれば、加入母体を十分に確保できる見通しがあったのか。

国の財政力をもって、災害に対応して農業を守るべきなのである。

そうだとすると、国が現場を十分に把握できるようにして、しかも基本は農業者の自主組織である形態をとらざるを得ない。他国の制度を見てもそうである。

だったら、のちに述べる法定受託事務第1号を洗練する必要もさることながら、農林水産省の政策が現場の農業共済組合に十分伝わる組織と運営をすべきなのである。

これができていない。

だから、農林水産省まで出かけて繰り返し申し上げている。

後述の諸点も含めて、現状では隔靴掻痒の感があり、NOSAI指導態勢の改善案若しくは抜本的な変更案を提示したが今現在一部しか取り入れていない。さらに強力に再訪して具申する。

 ②人員不足を理由にし過ぎる。

かって私が民間企業にいて事業本部長取締役をやっているころに「乾いた布をさらに絞る」といったコスト削減策をやっており、コストの最大はもちろん人件費である。

国家公務員だから言って甘えることは人事院も許さないだろう。

労働生産性を上げる人材育成をしていないからである。

 ③著作権法も順守を

当オフィスの東日本での某農業共済組合研修テキストを著作権法違反で複製して所有しているようであるが、その経緯はともかく、他のNOSAI団体でもあることであることは先刻承知しているが、農林水産省もNOSAIにコンプライアンスの指導をしているのであれば、自らも基本法である著作権法などは遵守すること。

国家公務員に対するコンプライアンス指導も厚生労働省・国税庁等を含めこれまで何度もしているが、今後とも公務員はこのような基本の法への知識が乏しく理解を深めていくことが必要と再認識している。

(2)法定受託事務の都道府県指導と検査のいい加減さ

どんなにひいき目に見ても凸凹があり過ぎる。

例えば、ある都道府県の農業団体指導課に参考にしたい資料があると言ったときは、数週間に何度か電話しても「ない」の一点張りであった。

思い余って、当該NOSAIに指導課に出したことを確認して、ついでに農林水産省にもこのような書類は都道府県に原本があるかと聞いたら「必ずある」というので、これらを踏まえて最後通牒で言ったら笑いながら「棚の奥に隠れていました」と言った。

怒りを通り過ごしてあきれてものも言えなかった。

農林水産省も吃驚するような他の都道府県の指導事例をいくつか伝えたらさすが顔色が変わっていた。

しかし動きが鈍い。

そのしわ寄せはNOSAIを通じて結局は熱心に農業を支えている貴重な農家に来ていることが最も怒りを感じる原因なのだ。

地方公務員法を熟読せよ。

他にも刑法を大学で久岡教授や中山教授、佐伯教授等から厳しく指導を受けた私は、刑法の構成要件に造詣が当然これらの方々の学恩があって深いわけであるが、刑法的に問題なる事例にも遭遇しないとは言わない。

(3)農業共済団体組織の深い憂慮すべきことども

不祥事再発防止のために私がこの数年間必死で農業共済組合・農業共済組合連合会・特定農業共済組合を支えてきたことはだれも否定できないであろう。

その間に、農林水産省本省との直談判などでギリギリのところで救済できた時もある。

実際の不祥事の処理は、特に別稿で述べたような強烈さがあるが、法匪を利用した民法の信義誠実原則に反する契約変更をしたり、基本的に誠実な人間を排除したり陥れたり、人道に反する突然のキャンセルをしたり、臭いものには蓋は止めることなくば、これらはコンプライアンス違反であり、コンプライアンス遵守をうたう団体組織がクリーンハンドの原則に違反するようなことがあれば、必ずその報いは自分たちに返ってくるであろう。

不祥事がNOSAIで減少しない理由を農林水産省等と意見交換を踏まえて抜本的案を別稿で提示した。

残念ながら現在の農林水産省のコンプライアンス指導には当職のような専門家から見ると少なくとも別稿で述べた二つの点で基本ができていないことは明らかである。

先だって、ある農業共済団体で、コンプライアンス研修を始めてした時の参事さんの言葉が忘れられない。

「初めて、本当のコンプライアンスの話を聞きました」

それまでの、コンプライアンス研修は何だったのか。仲介会社のテキストで前で読み上げる自称「コンプライアンス講師」研修が企業や地方公共団体でも大流行だが、やった言い訳に過ぎない。経費も無駄である。税金であれば、国民や住民への裏切りである。

2.人類の幸せのために

国の礎は農業である。

国の繁栄の基礎は農業である。

私たちの国はずっと貧しかった。

しかし、農業が安定してくるとともに、国が落ち着いてきたのである。

人は生き物であり生き物はエネルギーを必要としており、人間も動物として食うところでエネルギーを吸収し「命」が成り立っているのである。

その農業を支える中央官庁が農林水産省であり、多数の国家政策の中の一つが農業災害補償制度なのである。

平成30年から農業保険法と名前を変えても本質は同じである。

農家を助ける仕事はひいては国を助ける仕事なのである。

だから貴いのである。

農業共済組合の諸君は、真に国を愛し、農業を愛し、農家を支える仕事に誇りをもっと持つことが不祥事防止の最高のカンフル剤である。

私はそれを全国の農業共済組合で伝えてきたつもりである。

故に厳しい励ましありだ。

故に箴言ありだ。

全人格投入だ。

いままでも、これからも。

3.農業共済団体へのメッセージ

先日は、東京の浜松町にある上場企業の東京本社でのクレーム対応講演帰りに、NOSAI全国に行ってきました。

以前お会いしたN氏は多忙で会えませんでしたが、13年間NOSAIへのコンプライアンス指導をなされた元団体班の方とは数年ぶりに再会して今後のNOSAIについての様々な意見交換をすることができました。

意見の一致した部分とそうでない部分がありました。

なるほど、農業災害補償法に代わって農業保険法が成立し、まさに「収入保険への加入推進」こそは、組織が前へ出てやるべきことでしょう。

しかし、平成18年以降の不祥事定義とその報告ルール制定以降もコンプライアンスの徹底が図られずに、未だに大きな不祥事が連続して発生しており、殊に東日本の同じNOSAIで一度起こした不祥事の再発さえしているのではないか。

足腰(コンプライアンス態勢つくり)は十分に鍛えたから、今からはNOSAIは前に出ること(営業すること)を第一義にするべきというのは、農林水産省の国会提出資料のコンプライアンス違反事例があるにもかかわらず国民は納得しないのではないか。

この点が私とズレていたのです。

その反論として、時として振り返ればいいのだと言われても、銀行等では営業ほどコンプライアンス違反が多い部署はないのですよ。

これからのNOSAIは営業第一だ、ではそのコンプライアンスラインはどうなっているのか。

個人情報の保護は?

苦情やクレーム対応は?

職業倫理への取り組みは?

内部監査は?

等の十分なコンプライアンス態勢ができているのか。

1県1組合化30都府県といっても、中には農林水産省S氏の言うように連合会・組合が単に外見を変えただけのところがないか?

ところが、帰り際には、エレベーターの横まで見送りに来られて、先だってお話しした農林水産省保険課のM氏と同じようなことを言われました。

「お体に気を付けて今後とも頑張ってほしい。ありがとう。」

この優しい言葉で、本サイトにあるような残念至極な仕打ちを受けても、もう一度やってみよう考える昨今であって、引き続き、心を込めてコンプライアンス指導をする次第です。

 

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