コンプライアンス専門メールマガジン 第3号 2008/11/16
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コンプライアンス専門メルマガ 第3号 2008/11/16
◆◇◆目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆◆◇◆
1.セクハラとコンプライアンス
2.創刊の挨拶と第1回・第2回発行メルマガ
「コンプライアンス経営…全ての企業・団体の市場と社会での存続条件」
3.中川総合法務オフィスのご紹介 http://rima21.com/
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1.セクハラとコンプライアンス
(1)セクハラは,今日,企業の信頼を失う最たるものです。コンプライア
ンス違反がストレートに当てはまり,まず労働者の信頼を失い,社会の信頼
を失います。マスコミの報道も非常に厳しいものです。裁判例も多いです。
(2)男女雇用機会均等法第11条では、職場において行われる性的な言動に
対する女性労働者の対応により、女性労働者がその労働条件につき不利益(
降格、減給等の不利益)を受けること(対価型セクハラ)と性的な言動によ
り看過できない程度の支障を生じ、女性労働者の就業環境が害されること(
環境型セクハラ)について、事業主に対し、防止するために、雇用管理上必
要な措置をしなければならないとしています。
ここで、「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所であ
り、通常以外の場所でも、勤務後の宴席でもその延長線上であれば職場に該
当します。
また、人事院規則は、セクハラを「他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動」と表現しています。
(3)セクハラは、個人の尊厳や名誉などの人格を害する、精神や身体の健康
を害する、職場の人間関係を悪化させる、職場の秩序を乱すなど深刻な影響を
及ぼすことが考えられますので、セクハラについての認識を十分に深めること
が必要です。
セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)は、基本的に被害者が不快だと思
えば成立すると考えていいでしょう。
(4)まず、コンプライアンス経営の観点からは、男女雇用機会均等法は、事
業主にセクハラを未然に防ぐ措置を講ずることを求めているので、その方針を
明文化する。
セクハラに対する方針を明文化したら、説明会や研修等を通して、従業員に
周知徴底し、啓発する。セクハラ相談員等を設置し、被害者からの相談・苦
情を受けつけ、迅速・的確な対応を行なう。
これにより、会社がセクハラ対策に取り組んでいることを、従業員等に表明
できる。
セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)が発生した場合、加害者とと被害
者が和解したとしても、職場の雰囲気が悪く有り、被害者が会社を辞めるケ
ースが多い。これほ、会社にとって大きな損失である。
(4)従業員も重要なステークホルダーです。セクハラを受けたと感じた従業
員が、会社への信頼を失うことを考慮すれば、コンプライアンスの観点からも
、セクハラを早急・確実に対応しなければなりません。
対価型セクハラは、「労働条件に関する不利益の有無」という要件があるの
で、合理的で、客観的な判定ができます。しかし、環境型セクハラは、労働
者が他者の性的言動により、自分の就業環境が害きれたと感じれば成立する
ので、判定がむずかしいところがあります。
(5)「異性を性的言動の対象と見なさない」という姿勢により、会社として
セクハラをなくすように努めとともに、男性と女性は、肉体的にも生理的にも
異なるので、「女性に重いものを持たせるのは酷だ」といった配慮は必要でこ
の点、改正された男女雇用機会均等法(平成19年4月1日施行)65条以下にお
いても、女性労働者にあっては母性を尊重される必要があると定めています。
★ 男女雇用機会均等法
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)
第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する
労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該
性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働
者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管
理上必要な措置を講じなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。
第29条 厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
★労働省による具体的措置項目
(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
1.職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
2.職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者に対し、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
3.セクシュアルハラスメント相談窓口を定めること。
4.相談窓口担当者が、相談の内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。
(3)事後の迅速かつ適切な対応
5.事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
6.行為者に対する措置及び被害を受けた労働者に対する措置をそれぞれ適正に行うこと。
7.職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。
(4)(1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置
8.相談への対応又は事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。
9.労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントに関し相談をしたこと又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
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2.第2回目の内容…コンプライアンスと不祥事発生対応
不祥事発生時の「情報ファイル」と「個別ステートメント」作成の重要性
(1)はじめに
初めまして。現在,京都で行政書士をしています中川です。最近は,講演
会の依頼や研修会の講師を頼まれる事が多くて,10月は毎週1回はありま
した。
そのなかで,コンプライアンスは要望が一番多いです。また,セクハラや
パワハラ等や不祥事発生時の対応などの個別的なコンプライアンスのなかの
テーマについての要望も多くなりました。
また,会場での質問は内部通報が多いです。難しい問題をはらんでいます
からね。
さて,今日はその中で聴衆の方がとても熱心聞いていただける部分の一つ
である不祥事発生時の「情報ファイル」と「個別ステートメント」作成につ
いてお話ししましょう。
(2)不祥事発生時の情報の整理と公表・伝達の仕方
社員のミスや事故によって,不祥事が発生した場合は,初期対応がすべて
ですね。そこでの,対応のまずいことがあれば,ず~と後に尾を引きます。
そのときに,まず事実関係の迅速かつ正確な把握が最優先されます。
客観的な事実の確認と関係者の事情聴取を大急ぎでやらなければなりません。
『危機管理』の問題です。
一般企業であれば,まず緊急取締役会です。そして,コンプライアンス違反
があれば,コンプライアンス担当取締役を決めているはずですから,すぐに
コンプライアンス担当委員会を開いて,コンプライアンス違反の事実を調査
することになります。
このときに,5W1Hで事実をまとめます。
…Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(どうし
て)したのか。それは,How(どのように)したのか。
そして,コンプライアンス態勢を作るときには必ず実施マニュアルに盛り込
むべき事の一つに「文書化」がありました。
このときも見出しを付けて「○○○情報ファイル 日付」を作成します。
…このときに大事なのは「確認情報」と「未確認情報」をしっかり分ける
ことです。
そして,ともかくこのファイルに全情報を入れます。そして,不祥事に対応
する決定権限を持った会議で共有するのです。機密文書です。
社内LANなどのイントラネットがあるものであれば,アクセス制限をし
て,アップします。
このときに注意しないといけないのは「個人情報保護法」及び「プライバ
シー」の保護です。時には,関係者から刑事告訴されることもあります。
このような文書ファイルを作成した上で,マスコミへの公表,関係取引先な
どへの説明,従業員への説明などの個別のステートメントを作成するのです。
会社の少なくとも取締役などはこの文書内容を完全に理解して電話取材等が
あっても対応できるようにします。
日付は重要ですよ。中間報告的に公表すべきものも多いのでステートメント
の日付は明記して情報を個別に発信し伝達していくのです。
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3.創刊の挨拶と第1回発行メルマガの内容
「コンプライアンス経営…全ての企業・団体の市場と社会での存続条件」
企業・団体内における法令遵守活動を中心としたコンプライアンス経営がで
きない会社や団体は市場及び社会から完全に閉め出される時代になりました。
セクハラ・パワハラ等のコンプライアンス研修はほとんどすべての団体に関
係するので盛んに行われるようになってきました。
金融関係を中心として,金商法の下での法令を遵守した経営、大企業を中心
としてJ-SOX法の下での財務書類の作成、大手企業の独禁法の遵守など企業と
法との関わりは密接不可分になっています。
このメルマガでは,中川総合法務オフィス代表の中川が,コンプライアンス
の企業・団体等への指導と豊富な講師歴を生かして,業務の適正を確保するた
めの体制としてのコンプライアンス経営の方法と効果について,お伝えします。
質問と回答集も織り込みます。
まず,この創刊号では,コンプライアンス概念について,お伝えしましょう。
コンプライアンス (Compliance) とは、「(要求・命令などに)従うこと、
応じること」で、今日では「企業活動における法令遵守」を意味しています。
(服薬コンプライアンス、物体の伸縮性・可塑性は別概念)
企業統治(コーポレートガバナンス)が上位概念であり、ここではビジネス
コンプライアンスともいっていいでしょう。
CSR(企業の社会的責任)、企業倫理(ビジネスエシックス)も同位概念に
近いのです。
法を見ますと,株式会社においては、商法(会社法)上,取締役ないし執行役の義務(法定責任)として現行会社法では規定されています。
つまり,取締役の善管注意義務(330条)ないし忠実義務(355条)の発現が
コンプライアンスであり,監査役等も同様の義務を負っています(330条)。
企業も社会の構成員の一人として商法(会社法)だけでなく民法・刑法・労
働法といった各種一般法、その他各種業法をすべて遵守し、従業員一同にもそ
れを徹底させなければならないとされ(348条3項4号、362条4項6号)、特に大
会社については、内部統制システム構築義務が課されています(348条4項、36
2条5項)。
コンプライアンス違反をした企業は、損害賠償訴訟(取締役の責任について
は株主代表訴訟)などによる法的責任や、信用失墜により売上低下等の社会的
責任を負わなければならない非常に高いリスクを背負っています。
「コンプライアンスとは法令遵守とイコールではなく、法令の遵守を含めた
『社会的要請への適応』である」という考え方が唱えられていま
すが、中川総合法務オフィスの考え方に近いでしょう。
つまり、企業の存在には、利潤の追求だけでなく、食品メーカーであれば
「安全な食品を供給してほしい」、放送局であれば「歪曲されていない、良質
な番組を流して欲しい」など、社会からの潜在的な要請があり、各種法令にも、
制定に至るまでには社会からの要請があります。
法令は常に最新の社会の実情を反映できているわけでなく、司法もまた万能
ではなく,単に法令のみの遵守に終始することなく、社会からの要請に応える
ことこそがコンプライアンスの本旨であるという考え方です。
私は,従来より講演会などで「信頼」こそが,コンプライアンスの本質であ
るといっているのも同旨です。
この,コンプライアンス経営の本質について,様々は事例を取り入れながら
「コンプライアンス専門メルマガ」でお伝えしていきましょう。
どうぞ,ご愛読下さい。
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