不当表示の防止のための課徴金制度の導入とコンプライアンス

1.景品表示法改正による課徴金制度導入の必要性

(1)ホテル・レストランにおける不祥事

2013年度に、ホテル・レストラン等で、メニュー表示とは異なる食材を使用した料理を提供していた問題が相次いで発覚した。

「食品偽装」や「食品表示等問題」として、食に対する消費者の安心を根底から揺るがす社会問題となった。

表示の不正は、原産地を偽る加工食品など製造過程における問題と思っていたが流通最後段階で消費者を騙すことも同じ食品偽装、食のコンプライアンス違反である。

(2)世論に押されて景品表示法の改正へ

内閣では食品表示等の適正化に向けた体制の強化や違反行為の抑止を目的として、2014年6月と11月に景品表示法の改正案(不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する法律)を国会に提出して、改正法が成立した。

そして、不当表示を行った事業者に対して経済的不利益を課す課徴金制度は、2016年4月1日に施行された。

(3)課徴金制度のメリット

これまでは、不当表示を行った事業者に対しては、行政がその表示をやめさせる等の措置を命ずる措置命令(景品表示法第7条第1項)を出していたが、事業者の側に不当表示によって得た利益が残ったままであり、また、消費者がその被害を事後的に回復することは困難であった。

これに対し、課徴金制度は、国が違反事業者に金銭的な不利益を課すものであり、この制度の導入により、事業者に不当表示を行う動機を失わせ、不当表示という違反行為が事前に抑止されることが期待される。

また、所定の手続に沿った返金措置(自主返金)を行った事業者についての課徴金額の減額等を定めているので、不当表示を行った事業者が自ら進んで返金措置を行えば消費者の被害回復が促進されよう。

2.課徴金制度の具体的仕組み

(1)課徴金納付命令

事業者が、課徴金の対象となる行為(課徴金対象行為)をしたときは、消費者庁長官は、その事業者に対して、課徴金を納付するよう命ずる。

(2)課徴金の対象となる行為

課徴金対象行為は、食品に限らずあらゆる商品やサービスについて、実際より著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)をする行為と、実際より著しく有利であると誤認される表示(有利誤認表示)をする行為である。

不実証広告規制の採用

優良誤認表示である疑いがある場合には、その表示を行った事業者に対して、一定の期間内に、表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求め、その資料の提出がない場合には、その表示が優良誤認表示と推定されて課徴金の対象となる。

(3)課徴金額の算定方法

課徴金額は、事業者が不当表示をした商品・サービスの「売上額」に3%を乗じた金額である。

※「売上額」は、原則として、課徴金の対象となる期間に引き渡された(提供された)、不当表示の対象とされた商品(サービス)の対価を合計する方法(引渡基準)によって算定される(不当景品類及び不当表示防止法施行令)。

(4)課徴金を課せない場合(主観的要素、規模基準)

事業者が課徴金対象行為をした場合であっても、その事業者が表示の根拠となる情報を確認するなど、正常な商慣習に照らし必要とされる注意をしていたため「相当の注意を怠つた者でない」と認められるときは、消費者庁長官は、課徴金の納付を命ずることができない。

また、課徴金額が150万円未満(不当表示をした商品・サービスの「売上額」が5000万円未満)である場合も、課徴金の納付を命ずることができない。

(5)課徴金対象行為に該当する事実の報告による課徴金額の減額

課徴金対象行為に該当する事実を消費者庁長官に報告(自主申告)した事業者について、所定の要件を満たす場合には、課徴金額の2分の1が減額される。

(6)返金措置の実施による課徴金額の減額等

事業者が、返金措置の実施に関する計画を作成し、消費者庁長官の認定を受ける等、所定の手続に従って消費者に対して返金措置を行った場合は、消費者庁長官は、返金相当額を課徴金額から減額するか、返金相当額が課徴金額以上の場合にはその納付を命じない。

※「返金措置

申出をした一般消費者が取引をした対象商品・サービスの購入額に3%を乗じた額以上の金銭を交付する措置のことをいう。

※課徴金制度に関するガイドライン

2016年1月29日に「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」を公表した。

※消費者庁ホームページ参照 http://www.caa.go.jp/

特に板東消費者庁長官記者会見要旨参照 http://www.caa.go.jp/notice/statement/bando/141021c/

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