【民法債権法改正】債権者への詐害行為と改正法でもいえる事例なのか

京都の高級帯屋である「神泉苑」は、メインバンクや東京銀座の取引先など5社に対して合わせて3億円の一般負債を負っていたが、平成バブル後の不景気から着物がさらに売れなくなって、2020年4月25日に支払い期限が到来した洛北中央信用金庫に対する借入金債務5千万円を弁済することができなかった。そこで、神泉苑社長が洛中銀行の理事長と同大学出身であることもあって、「もう倒産するしかないが、他の債権者には弁済できなくても、おうちの借入金は何はさておき弁済したい」と伝えたところ、「それはうちにとってありがたい、他の債権者には払えなくなっても頼む」と言われ、大金庫にしまっていた金の大部分である990万円を同年5月10日に弁済した。在庫処分等しても神泉苑には100万円も財産はない。この弁済は改正法の下では、詐害行為といえるか。

(1)条文
第424条(詐害行為取消権)
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。

(2)判例
1 弁済期の到来した債務の弁済は、債務者が債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済したような場合にのみ詐害行為となる。(大判大6・6・7)

2 債務超過の状態にある債務者が一債権者に対してなした弁済は、それが債権者から強く要求せられた結果、当然弁済すべき債務をやむなく弁済したものであるだけでは、これを詐害行為と解することはできない。(最判昭33・9・26)

(3)改正条文

第四二四条の三(特定の債権者に対する担保の供与等の特則)
債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。
二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
2 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。
二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

(4)結論

改正法四二四条の三第一項の通り、神泉苑は支払い不能状態で、洛中銀行と話して他の債権者を害することになることを承知の上で弁済したと言えよう。
よって、詐害行為と言えよう。

また仮に、弁済行為が五月でなくて四月十日に行われた場合でも、改正法四二四条の三第二項の通り、詐害行為といえよう。

改正法で、弁済期前でも客観的に三十日以内で通謀性があれば詐害行為となるとしたのである。

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