パワーハラスメント(パワハラ)とコンプライアンス

1.パワハラ(立場を利用した激励と言語的暴力の限界)…現在,増加中の裁判と相談

パワハラとは、和製英語のパワーハラスメント(Power harassment)の略称で、セクハラと同様、職務的立場を利用して(職場の上司が立場の弱い部下などに対して)、無理難題を強要したり、私生活へ介入するといった、人権の侵害にあたるような嫌がらせ等を繰り返し行うことをいう。

パワーハラスメントは、典型的なパターンでは、上司などが職務上の権限を背景に、業務上の必要を超えて、相手の人格や尊厳を傷つける言動を行ない、職務環境を悪化させたり、雇用に関する不安を感じきせる行為である。

従来から明確な定義はなく、いろいろな定義は上記の典型例を想定して、為されてきたが、いずれにしろその救済手段等も依然として不十分なところである。

 

2.厚生労働省の提言

平成24年に厚生労働省の雇用環境・均等局雇用機会均等課 ハラスメント防止対策室では、雇用現場のパワーハラスメント対策を以下のようにまとめている。以下のサイトも参照。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126546.html

その背景として世論の高まりがあった。

・厚生労働省では、職場のいじめ・嫌がらせについて都道府県労働局への相談が増加傾向にあったことを踏まえ、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」を開催し、平成24年3月に「 職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言 」(以下「提言」と言います)を取りまとめた。

(1)職場のパワーハラスメントの定義

職場のパワーハラスメントとは、

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

と定義をした。

この定義においては、

・上司から部下に対するものに限られず、職務上の地位や人間関係といった「職場内での優位性」を背景にする行為が該当すること

・業務上必要な指示や注意・指導が行われている場合には該当せず、「業務の適正な範囲」を超える行為が該当すること

を明確にしている。

 

(2)職場のパワーハラスメントの6類型

1)身体的な攻撃       暴行・傷害

2)精神的な攻撃       脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

3)人間関係からの切り離し  隔離・仲間外し・無視

4)過大な要求        業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

5)過小な要求        業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

6)個の侵害         私的なことに過度に立ち入ること

 

(3)職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組

職場のパワーハラスメントをなくすために

提言においては、企業や労働組合が、この問題をなくすために取り組むとともに、

職場の一人ひとりにもそれぞれの立場から取り組むことを求めるとともに、

国や労使の団体に対しては、この提言を周知し、対策が行われるよう支援することを求めた。

 

(4)厚生労働省の取組

1)社会的気運を醸成するための周知・啓発

下記の媒体を通じて、企業の方、労働者の方双方に向けて、この問題の重要性や取組の方法についての情報を発信している。

・ポータルサイト「 あかるい職場応援団 」や twitter アカウント の運営

・ポスターやリーフレットの配布

2)労使の取組の支援

・企業向けのパワーハラスメント対策導入マニュアルの策定

・上記マニュアルを活用したパワーハラスメント対策導入セミナーの全国での開催

3)職場のパワーハラスメントに関する実態調査について

・厚生労働省では、企業における職場のパワーハラスメントの発生状況や、企業の対策の進捗状況を把握するため、実態調査を実施。

・ パワーハラスメント対策導入マニュアル のダウンロード(従業員向け研修資料、アンケート調査票や就業規則のひな形もダウンロード可能)

・ パワーハラスメント対策導入セミナー の開催

・裁判例の解説

・ポスターやリーフレットのダウンロード

・イラストや動画を用いたパワーハラスメントについての解説

・ 相談窓口の設置一覧

 

3.ステークホルダーである従業員の信頼

組織のトップは、倫理面において、差別行為を撤廃し、誰にとっても働きやすい公平な職場をつくり、ステークホルダーである従業員の信用を損なわないように配慮する必要がある。

部下を叱るとき仕事についてのものであって、後進を育てるという配慮があれば、パワハラには該当しない。

それが、上司の保身や責任の押しつけであれば、被害者は不快に感じるので、パワハラに該当するであろう。

パワハラ対策は、同じハラスメントであるセクハラへの対策に似ている。

セクハラと同様に考えれば、まずは、パワハラを明文化し、説明会や研修等により周知させることが必要である。

もっとも,パワーハラスメントの訴えは,ときとして、上司を命令を拒絶したり、攻撃するための武器になることもあり得るので、正当な目的に基づきしかも手段として相当性がある叱咤激励かをしっかりと見極める必要がある。

 

4.パワハラの原因と背景

世界的な現象…諸外国での立法化の増加 EU諸国・ILO

閉ざされた権力空間 抑圧された空間

集団の個人(少数派)に対する不当な攻撃

5.パワハラの法的責任

(1)刑事責任

脅迫罪 強要罪 傷害罪…PTSD発生

(2)民事責任

行為者の不法行為

使用者責任…職場のいじめ防止義務・環境配慮義務・安全配慮義務

(3)懲戒処分

6.パワハラに対する被害者の対処法一覧

自身の安全・安心と健康の確保

証拠の確保

いじめにあったとき、隠さずに公然化

相談窓口等への支援要請

損害賠償の請求

名誉毀損等で訴えられる場合

裁判外紛争解決システムの利用

厚生労働省・労働基準監督署等行政機関の紛争解決システムの利用,認証ADRの利用

労働審判

裁判所の仮処分

労災申請

刑事告訴

コンプライアンス担当者への訴えと調査

職場復帰への支援要請

 

7.パワハラのない職場作り

(1)労働契約法の規定

(労働者の安全への配慮)
第五条  使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

(2) 使用者・取締役などの職場の環境配慮・安全配慮

(3)労働安全衛生法…生理的のみならず精神面の安全

(4)憲法の基本的人権尊重の趣旨…13条の人格権の規定,25条以下の社会権的規定

 

パワーハラスメントの事例については、当サイトの「コンプライアンスの事例(不祥事)」参照

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