特捜検事の逮捕と検察組織のコンプライアンス違反
もくじ
1.特捜検事が逮捕された(検事の功名心と検察組織のたるみ)
■大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件(2010年9月)
大阪地検特捜部で「障害者郵便制度悪用事件」の担当主任検事であったM氏が、証拠物件のフロッピーディスクを改竄したとして証拠隠滅の容疑で逮捕され、その上司の特捜部長等が故意の証拠の改竄を知りながら、これを隠したとして犯人隠避の容疑で逮捕された事件である。有罪で確定した。
逮捕された特捜検事は、一言でいえば「うまくやろう」としたであろう。
郵便不正事件の有罪に持ち込むための構図にそのFDの改竄があればよかったから。
自分の実績になるし、将来を期待されていることは組織にいればわかることであろう。
私も平社員から取締役になった人間だから、自分の経験からそう思う。
2.検察であっても組織のコンプライアンスの基本はまったく同じ
組織は、特捜部で巨悪を眠らせない最強集団であっても、仕事のルールを守るコンプライアンスは同じことで、広い意味で検察ガバナンスの問題とも言えよう。
かって、組織の京大閥と東大閥その他の確執があり、検察は京大卒が検事総長や最高幹部を務めることが続き、それはそれで、組織としては一枚岩で良い面もあったであろう。
しかし、仕事の評価のみならず人物「アリストテレスのいう優れた性格・卓越性・徳」で上に立つ人は選ぶことが大切であろう。
それは簡単のようでなかなか感情や利害があってできない。
しかし、それができた組織が生き残る。
3.不祥事を発生させた検察のどこに問題があったのか
国民の信頼を失った不祥事があったのは、法律集団のコンプライアンス態勢に問題があったからである。
内部の牽制ルールに緩みや欠陥があるとこうなる。
信頼して仕事を任せることとその仕事を確認しチェックすることは表裏一体である。リーダーシップ論になろう。
法律の専門集団でも、このようなコンプライアンス違反が起こる。
コンプライアンスは法律よりも倫理の世界に紐帯が強い理由はこの点からも明らかである。
公益通報者保護法、内部通報、内部告発の観点からも
朝日新聞等へ不祥事情報がリークされることが検察組織のでさえも避けされない時代である。
つまり、公益者通報者保護法の対象はこのような検察組織や裁判所でも適用がある。
自民党や民主党などの政治組織でも同様である。
4.精神医学的な「頑張りすぎる状態」とコンプライアンス違反
特捜部は検事のエリート集団で脚光を浴びるのであるが、精神医学的にいわゆる「頑張りすぎる」状態になると挫折することが多い。
最高検は徹底的にやると言って、勾留までやって取り調べ、起訴有罪に持ち込んだ。
自浄能力の高さは認めざるを得ないであろう。
もっとも、その後のM氏等の文筆活動では、一部に批判もある。冤罪となった厚生労働省の村木さんへの態度等について。
警察組織のような、人数はいないし、連日の警察不祥事のようなことは検察にはないのであるが、今後ともコンプライアンス違反はしっかりと処置をすべきであろう。