地方公共団体の内部統制の進め方(大規模自治体と中小自治体のそれぞれの方法)

1.地方公共団体における内部統制の法制化に至る流れ

地方公共団体の内部統制の進め方(大規模自治体と中小自治体のそれぞれの方法)を、考えるにあたっては、まず今回の地方自治法改正による地方公共団体の内部統制導入がどういう経緯で為されたかを知る必要があろう。

(1)民間における内部統制

新しく2005年に制定された会社法の下では、大会社に対して、「業務の適正を確保するための体制」の整備か求められ、2016年の会社法改正では追加でその運用状況の報告が求められている。

また、2008年からは金融商品取引法の下で、上場企業に対して、経営者による内部統制の評価とそれに対する外部監査人による内部統制監査か義務付けられた。

この影響は甚大で、大企業を中心として一種の内部統制フィーバーが起こった。

これが、公的部門にも影響を及ぼしたのであるが、組織としての共通性があるので、その業務の適正要請は変わらない。ステークホルダー違いに過ぎない。

(2)地方公共団体における内部統制

①地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会(2008年)・報告書(2009年)

ここでは、民間における内部統制と地方公共団体における内部統制とはいかなる点か異なるのか、地方公共団体に内部統制を整備・運用するにはいかなる方法が考えられるかといった点からの検討が進められた。

日本版の内部統制モデルを参考にして検討が進められ、一部の大規模自治体の業務の適正に大いに貢献したのである。

中川総合法務オフィスにおけるコンプライアンス講演や研修で言及することが非常に多かった報告書である。

大阪市の課長等へのコンプライアンス・リスク講演でも大いに引用してその団体では内部統制を充実させていった。

これを受けて、2009年に第29次地方制度調査会「今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申」公表され、監査委員の監査及び外部監査制度に関する見直し提言があった。

②地方行財政検討会議「地方自治法抜本改正についての考え方(2010年)」

さらに、2010年に地方行財政検討会議「地方自治法抜本改正についての考え方(平成22年)」を公表され、監査委員制度・外部監査制度の「廃止を含めゼロペースでの見直し」も提言された。
この提言の見直しを中川総合法務オフィスが監査担当者の研修で詳細に話した時には一種の沈黙がしばし流れたものである。

ここまで国が言及したのに驚いたのである。

この結果をまとめたのが、2013年3月の「地方公共団体の監査制度に関する研究会報告書」である。

監査制度をより実効性のあるものにするには内部統制の整備及び運用が進むことが密接に関連し、監査委員が単に証憑の突合せに終始するのでなくて、然るべき点に焦点を当てた実効性のある監査を実施する前提が内部統制システムの地方公共団体への導入であろうう。

組織内部において、違法行為や不正、ミスなどか行われることなく、組織が健全かつ有効・効率的に運営されるよう各業務で所定の基準や手続きを定め、それに基づいて管理・監視がなされていれば、よりリスクの高い箇所を中心に監査することにより実効性か高まろう。

③「地方公共団体における内部統制の整備・運用に関する検討会」報告書公表 2014年3月

地方公共団体における内部統制の定義

「内部統制とは、首長が、地方公共団体の事務の処理の適正さを確保する上でのリスクを評価して、自らコントロールする取組みである」。

基本的な方針

・首長に、内部統制体制の整備及び運用の責任があることを明確化する

・内部統制の取組みの段階的な発展を図る

・財務事務執行リスクについて最低限評価するリスクとすべき

・大規模地方公共団体(都道府県や指定都市)は内部統制基本方針の作成等を行うべき

・内部統制基本方針等を公表して、常に外部の目にさらすべき

2.ついに法改正成立し、地方公共団体で内部統制へ

(1)内部統制の流れ

①「大規模地方公共団体」

首長が、内部統制の整備及び運用の責任表明を行うとともに、内部統制基本方針を作成し、住民向けに公表する。

次に、首長の下で、財務事務執行リスクに関して、内部統体制の整備及び運用を図る。

その後、内部統制状況評価報告書を作成・公表し、それは監査委員による監査の対象となり、監査委員の監査結果とともに議会に報告され、最終的には、住民向けに公表される、というプロセスを経る。

なお、住民訴訟との関連も内部統制の必要性は関連があろう。

首長や地方公共団体事務担当者に対する住民訴訟が多発しているが、一定の有効な内部統制を構築することで、結果に対する法的責任が発生しなくなり、首長や地方公共団体を本来の業務に専念できよう。

②「中小地方公共団体」

上記と流れは変わらないが、より簡易なやり方も可能であろう。例えば、財務事務執行のリスク管理では、3つのうちの特に法令違反に重点置くことは可能で、公表もHP等で公表すること簡易な方法もあり得るであろう。

また、部署も一律全て同時にヨーイドンでなくて、過去に不祥事の在った部署から始めるのもあり得るであろう。

(2)特に重要な内部統制キーワード

①内部統制基本方針:

地方公共団体における内部統制体制の整備及び運用に関する基本的な方針

②財務事務執行リスク:

次の3つのリスクを指す
・財務に関する事務の執行における法令等違反のリスク
・決算の信頼性を阻害するリスク
・財産の保全を阻害するリスク

③内部統制状況評価報告書:

財務事務執行リスク等について整備及び運用した内部統制体制を評価し、その内容を記載したもの

これらを受けて、2016年3月に第31次地方制度調査会「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」が公表され、平成29年3月の第193通常国会に地方自治法改正案が提出されたのである。 (総務省HP一部引用)

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