トリアージと災害時医療システムは危機管理に際してなぜに機能していないのか。

1.トリアージと災害時医療システム(危機管理)

(1)災害時のトリアージ

災害時の危機管理における難しい問題として、トリアージ、フランス語でtriage(選別)の問題がある。

東日本大震災の緊急医療見直しが問題になっていて、危機管理における災害時のトリアージ=救命順序決定についてが機能していないのではないか。過去事例の検証が不可欠であろう。

(2)過去事例の検証

実際過去に日本では、

・「JR福知山線脱線事故」 – 大量の負傷者にトリアージが実施された。

・「秋葉原通り魔事件」

…タグの付け間違いによる搬送の遅れ、負傷者は17人で周辺病院は30以上で災害医療に用いるトリアージがそもそも必要であったのか等の問題点

・2004年8月9日に福井県の「美浜原子力発電所」において発生した重大労災事故(10数名死傷)においても、救出時に心肺停止状態だった4名には「黒」の評価が現場でなされ、救急搬送はされなかった

などが取り上げられる。

また、自治体の活用例として

・札幌市 …夜間の産婦人科救急の判定を行うために2008年10月よりテレフォントリアージをスタート

・横浜市 …2008年10月1日から施行された横浜市救急条例により、119番通報時に緊急・重症度を識別する「コールトリアージ」が運用

がある。

2.トリアージの基本の確認

(1)トリアージトリアージ判定

そもそも、トリアージの考え方では、

搬送されてくる負傷者の傷病の軽重を即座に判断し、重症患者を優先して救助する方法である。

死亡又は生存の可能性のほとんどない場合は「黒」、重症の場合は「赤」、中等症の場合は「黄」、軽症の場合は「緑」となる。原則として、被災者の右手につける。

トリアージ・ドクターは、「黒」の蘇生手術はせず、軽症者は止血程度しか行わず、手当てをしなければ死んでしまう人から判定し、救急隊はその「赤」のクツグを付けた人か優先的に救助する。

(2)阪神淡路大震災の教訓

阪神・淡路大地真の際、軽症者が病院に殺到し、重症者が放置され、多くの貴重な命が失われたことを考えると、国の制度として早期にトリアージ制度を導入すべきとの考え方に私は賛成である。

しかし、判断ミスのおそれもあり得るこから、国家賠償等の制度を適用することも必要であろう。

トリアージタグの例 東京都消防署使用(同HP参照)

トリアージタグ

3.災害医療体制のあり方に関する検討会報告書

平成13年6月 災害医療体制のあり方に関する検討会

(1)厚生労働省HP参照

1.阪神・淡路大震災後の取り組みの現状と今後の課題
1)地方防災会議等への医療関係者の参加の促進
2)災害時における応援協定の締結
3)広域災害・救急医療情報システムの整備
4)災害拠点病院の整備
5)災害医療に係る保健所機能の強化
6)災害医療に関する普及啓発、研修、訓練の実施
7)病院防災マニュアル作成ガイドラインの活用
8)災害時における消防機関との連携

2.災害発生時の緊急医療チームの派遣体制の整備(日本版DMAT構想)について

3.診療の優先順位に応じた傷病者のトリアージについて

4.今後の課題のまとめ

(参考資料)
資料1 災害発生時における初期救急医療体制の充実強化について(平成8年5月、健発第451号)
資料2 指定航空会社の災害医療搬送ヘリコプター及び飛行機の運航に係わる運用管理要綱(抜粋) 財団法人 日本救急医療財団
資料3 地域保健対策の推進に関する基本的な指針(厚生省告示374号、改正平成12年3月厚生省告示第143号)(抜粋)
資料4 緊急消防援助隊要綱の改正について(消防救第315号平成12年12月25日)
資料5 災害被災地派遣医師等への被災時の保障について

(2)トリアージに関して一部引用

3.診療の優先順位に応じた傷病者のトリアージについて

1)トリアージの重要性と既存の提言内容

トリアージとは、被災地において最大多数の傷病者に最善の医療を実施するため、傷病の緊急度と重症度により治療優先度を決めるものであり、限られた人的・物的医療資源を有効に活用するための重要な行為である。

「震災時における医療対策に関する提言(阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する検討会、平成7年5月29日)」においては、

(1)阪神・淡路大震災では一部トリアージが未実施のため、限られた医療資源が有効に活用されなかったこと、

(2)トリアージ技術等に関し医療関係職種の訓練・研修を実施する必要があること、

(3)災害時のトリアージの意義等に関して国民に対する普及啓発活動を行う必要があること

などが提言されている。

「阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する検討会報告書(平成8年4月)」においては、トリアージの際に用いられる識別票(トリアージ・タッグ)の標準化について提言されている。

2)現状と今後の課題

トリアージ・タッグの標準化は既に完了している。

トリアージの際の「死亡群」「即治療群」「待機治療群」「軽治療群」への分類については、被災地域における医療資源等の状況に応じて適切に実施される必要があることから、今後、現場での適切なトリアージを適切に実施するために必要な手続きや手技等に関するマニュアル作成や、研修を実施していくことが必要である。

トリアージ実施に関する法的責任に関して本検討会としては、「トリアージは、判断如何によっては傷病者の生命に危険を及ぼす可能性があることから、原則として医師が行うべきものである。

ただし、大災害の発生現場において医師の到着を期待できない、あるいは到着を待てないような状況下において救命救急士、看護婦等がトリアージを行うことの医師法第17条に関する違法性については、『緊急避難』に該当するものとして、違法性が阻却されるのではないか。

また、トリアージを行った場合の個別の判断については、「事後的にみて他の判断が最善と考えられる場合であっても、当該状況下で収集可能な情報に基づいて行われた合理的な判断であれば、一般に法的責任は生じない。」という整理が可能と考える。

※現在、「災害医療」については、http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089060.html

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