1.契約書作成の実務ノウハウ

(1)【契約書作成…契約書の書き方】

契約書作成には、契約書書式や契約書雛形(契約書サンプル)を参考にする。

これらの契約書の書き方をよくみて業務委託契約書や雇用契約書、請負契約書等を作ろう。

近年では労働契約書も交わすのが当たり前になってきている。

(2)英文契約書作成の必要性

また、グローバル化時代を反映して英文契約書が一層重要になってきており、英文のビジネス文書文例をみて企業が英文契約書作成をすることが増えてきた。

売買契約書、不動産売買契約書、取引基本契約書はビジネスでの基本契約書ですからすべてのビジネスマンにできるようになる必要がある。

2.契約書がないと契約が法的には成立しないのか

(1)契約の基本ルール

財産行為における契約においては、契約自由の原則(契約の方式の自由)により要式性が要求される契約は一定の場合に限定される。

平成16年民法改正により保証人の意思を慎重かつ明確なものにするという観点から保証契約につき要式契約とされた(446条2項)。

これに対し、身分行為においては当事者の意思の明確化、第三者に対する公示から、そのほとんどが要式契約である(婚姻や養子縁組などは届出を要する典型的な要式契約である)。

以下では主に財産的行為における契約について述べる。

(2)契約自由の原則と例外

①日本の民法上は、契約は、双方の合意があれば、それだけで有効に成立するのが原則である。

したがって、「契約書を作らなければ契約は無効だ」とか、「契約書に調印をすませていない以上、まだ契約は有効に成立していない」ということはない。

契約を結ぶ方式はあくまで各人の自由で、口頭の契約でも書面による契約でも、契約としての法律上の効力には違いはない。

②しかし、例外として、つぎの場合には法律が契約書を作るように特別の規定をおいて契約の書面化を要請している。

ア.保証契約
(446条2項…保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。)

イ.農地の賃貸借契約
いわゆる小作契約は、これを文書にしてその写しを農業委員会に提出する(農地法二五条)。

ウ.建築工事請負契約
契約書を作成し、工事内容、請負代金、着工期などの事項を記載する(建設業法一九条)。

エ.割賦販売契約
指定商品について月賦販売契約を結ぶときは、売主から買主に対して、割賦販売価格や、商品の引渡時期などを記載した書面を交付する (割賦販売法四条)。

訪問販売、連鎖販売、特定継続的役務提供等の取引でも書面の作成が「特定商取引に関する法律」で要求される。

オ.借地借家法の契約書作成規制
●存続期間を五十年以上とする定期借地権設定契約(二二条)
●事業用定期借地権設定契約(公正証書によらねばならない(二四条)
●更新の無い定期建物賃貸借契約(三八条)
●取壊予定の建物の賃貸借契約(三九条)

※書面によらない贈与
契約をするときに、書面で契約をしたときと、口頭で契約をしたときとで法律上の拘束力に相違がある。贈与はそれが口約束であった場合は、約束を取り消すことができるが、書面で約束をしてしまったら、もはやその約束を取り消すことはできない(民法五五〇条)。

3.契約書の効用

相手が契約の存在を無視したり、契約どおり約束を実行してくれなかったら、何か証拠をつきつけて相手の責任を追求する必要がある。

この場合、契約に立ち会った立会人の証言なども有力な証拠にはなるが、人間の証言は主観性が否めず公平な証言が困難なことが多い。あくまで、副次的にしか利用できない。

そこで、文書に記載した客観的証拠である契約書があればその証明力は高く、これに署名押印した当事者は、あとになつてその存在や内容を争ったり、その効力を否定することはほとんど不可能である。

4.契約書作成時の最重要チェックポイント

(1)契約の有効期間の明記

契約の有効期間はいつからいつまでかを記載し、定めのないときは「この契約の期間は別にこれを定めない」と明記する。

(2)契約の当事者を確定

誰と誰との契約か、契約の効力の及ぶ権利者と義務者は誰と誰かを明確にする。

例えば「会社と個人の区別」、「保証人と単なる立会人との区別」、「本人と代理人との区別」など

(3)契約の趣旨、目的を明らかにする

売買契約か、貸借契約か、請負契約か、その契約の趣旨と、その契約によってお互いに何を実現しようとするか、その契約日的が明白に認識できるように、よく整理して順序、項目を構成する。

(4)契約の対象・目的物を正確に表示

建物の賃貸借契約であったら、どの建物のどの部分を貸し借りするのか、その場所、品目、数量、単価など、ともかく対象物件を特定できるだけの明確な表示をする(仕様書、青写真、図面などを用いる)

(5)双方の権利・義務の内容を明示

甲は乙に対しどんな請求権をもち、乙は甲に対してどんな義務を負うかを詳しく明記する。

例えば、どんな商品をいつどこへ届けさせるか、その商品が不良品だったらどのように引き取らせるか、購入後何年間その商品の保証をさせ、無償でアフターサービスさせられるか、また代金をいつ払わせるか、その支払方法は現金払いか手形払いか、支払いを引き延ばしたらどんな手が打てるか、ということを明確にする

5.契約と法の規定

(1)法の適用されるとき

契約の内容が不明確だったり、決め忘れた事項があれば、その契約と同一ないしは類似の場合を規定した法律が適用されて契約の不備を補う。

例えば契約費用の記載がなければ「売買契約に関する費用は当時者双方平分してこれを負担す」という民法五五八条の規定が適用される。

借家契約を結ぶとき、無断転貸禁止などの記載がなくても借家人が家主に無断でまた貸しをしたり、借家権を譲渡したりすることは民法六一二条で禁じられているので家主はそれを理由に借家契約を解除することができる。
契約書の中に記載しておかなくても、法律で記載されているような事項はこれを省略してしまってもかまわない。

(2)特約は明記する

しかし、法律の規定とちがった取りきめである特約をするのであればその点だけはぜひとも契約書に記載しておく必要がある。

例えば、旧規定であるが、民法上は不動産などの特定物について契約をしてから商品を引き渡すまでのあいだに、その商品が地震とか風水害など不可抗力によって滅失したり、毀損した場合に、誰がその損害を負担するかについては債権者主義にたち買主がその揖害を負担する(民法五三四条)。

買主は品物がなくなっても、代金を払わなければならない。

これは売主にとっては好都合だが買主にとっては重大な不利である。買主は特約を入れて、支払義務を免れたいところである。

6、企業契約 企業法務で必要な契約書の作成実例

【商品の供給に関する契約】
◎継続的売買契約  ◎製作物供給契約  ◎動産賃貸借契約  ◎販売店契約 ◎代理店契約
◎フランチャイズ契約

【不動産に関する契約】
◎建物賃貸借契約(一般)  ◎定期建物賃貸借契約 ◎土地建物売買契約
◎不動産管理処分信託契約 ◎土地賃貸借契約(定期借地) ◎受益権譲渡契約

【電子商取引に関する契約】
◎サイバーモール出店契約  ◎サイバーモール利用規約 ◎インターネット広告掲載契約

【ライセンスその他知的財産権】
◎特許ライセンス契約  ◎商標ライセンス契約  ◎実用新案ライセンス契約
◎商品化権ライセンス契約  ◎ソフトウェア・ライセンス契約
◎知的財産権の譲渡担保契約  ◎ノウハウ・ライセンス契約

【製造委託・サービスの提供】
◎OEM契約  ◎システム開発委託契約  ◎コールセンター業務委託契約
◎コンサルティング契約  ◎ISO認証収得支援業務委託契約 ◎ショッピングセンター等における営業と出店
◎広告媒体出稿状況等の調査に関するする業務委託

【人事・総務に関する契約】
◎雇用契約  ◎出向契約  ◎取締役任用契約  ◎退職合意書  ◎労働者派遣契約書  ◎秘密保持契約
◎派遣従業員用秘密保持誓約書 ◎請負業者用秘密保持誓約書

【金融・担保に関する契約】
◎金銭消費貸借契約  ◎保証契約  ◎保証委託契約
◎ビル入居保証金質権設定契約    ◎特許権質権設定契約
◎譲渡担保設定契約  ◎仮登記担保設定契約  ◎相殺契約  ◎債権譲渡契約
◎ファクタリング取引契約  ◎不動産売買に係る買主たる地位譲渡契約
◎リース契約(ファイナンス・リース) ◎免責的債務引受契約  ◎併存的債務引受契約
◎債務免除の覚書  ◎債務承認ならびに債務弁済契約書

【企業組織に関する契約】
◎営業譲渡契約  ◎商号譲渡契約  ◎株式交換契約  ◎分割契約  ◎合併契約
◎株式譲渡契約  ◎株式売買等契約 ◎共同研究開発契約

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