【建設業法第4条(附帯工事)完全解説】 - 許可業種以外の工事を適法に実施する方法
条文と基本構造
建設業法第4条は、建設業者が許可を受けた業種以外の工事を適法に実施できる重要な規定である。
建設業法第4条(附帯工事)
建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合においては、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事を請け負うことができる。
この条文は、建設業界の現実的なニーズに応えるための例外規定として位置付けられている。
附帯工事制度の趣旨と必要性
なぜ附帯工事制度が必要なのか
建設業法は原則として、各業種について許可を受けた範囲内でのみ工事を請け負うことを義務付けている。しかし、実際の建設現場では、主たる工事に付随して他の業種の工事が必要となることが頻繁に発生する。
例えば、屋根工事業の許可を持つ業者が屋根の葺き替え工事を行う際に、必然的に塗装工事や防水工事が必要となる場合がある。このような現実的な需要に対応するため、建設業法第4条は附帯工事制度を設けている。
制度の基本的な考え方
附帯工事制度は、主たる工事の完成に必要不可欠な従属的工事について、別途許可を要求することの不合理性を解消する制度である。ただし、この制度は厳格な要件のもとでのみ適用される。
附帯工事の成立要件
国土交通省の解釈運用基準に基づけば、附帯工事が適法と認められるためには以下の3つの要件をすべて満たす必要がある。
要件1:主従関係の存在
附帯工事は、次のいずれかに該当する工事であって、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものをいうとされている。
- 主たる建設工事の施工をするために必要な工事
- 主たる建設工事の施工により必要となる工事
この要件により、附帯工事は必ず主たる工事に従属する性質を持たなければならない。
要件2:従属性の確保
附帯工事は独立した工事目的を持ってはならず、あくまで主たる工事の一部として位置付けられなければならない。この要件により、単に同一現場で行われるというだけでは附帯工事とは認められない。
要件3:規模の適正性
附帯工事の規模は、主たる工事と比較して従属的な範囲内にとどまらなければならない。附帯工事が主たる工事を上回るような規模となる場合は、附帯工事としての適用は困難である。
具体的な適用事例
適法な附帯工事の例
屋根工事における附帯工事
- 主工事:屋根工事業による屋根葺き替え工事
- 附帯工事:塗装工事業に該当する屋根材の塗装工事
建築一式工事における附帯工事
- 主工事:建築一式工事による住宅建設
- 附帯工事:電気工事業、管工事業、内装工事業等に該当する各種専門工事
附帯工事として認められない例
規模が不適切な場合
- 小規模な外構工事を主工事として、大規模な建築工事を附帯工事とする場合
独立性を有する場合
- 同一敷地内であっても、別棟の工事を附帯工事とする場合
実務上の注意点
技術者配置の問題
専門の技術者を配置できない場合や自ら施工しない場合は、附帯工事の建設業許可を受けた建設業者に下請を出す必要があるとされている。
附帯工事であっても、適切な技術者の配置や施工体制の確保が必要である。
他の法令による制限
建設業法上は附帯工事として適法であっても、他の法令により制限される場合がある。
電気工事の場合 電気工事士法により、電気工事士の資格を有する者でなければ施工できない工事がある。
消防設備工事の場合 消防法により、消防設備士の資格を有する者でなければ施工できない工事がある。
一括下請負の禁止との関係
附帯工事を下請業者に委託する場合であっても、建設業法第22条の一括下請負の禁止規定に違反しないよう注意が必要である。
判断基準の明確化
附帯工事に該当するかどうかの判断は、個別具体的な事案に応じて行われる。判断に迷う場合は、以下の観点から検討することが重要である。
技術的関連性
主たる工事と附帯工事の間に技術的な関連性が認められるかどうか。
時間的関連性
主たる工事の施工と同時期に行われる必要性があるかどうか。
場所的関連性
主たる工事と同一の場所または密接に関連する場所で行われるかどうか。
コンプライアンス上の重要性
附帯工事制度の適用を誤ると、無許可営業として建設業法違反に問われるリスクがある。違反した場合は、以下のような処分を受ける可能性がある。
- 営業停止処分
- 許可の取消処分
- 刑事罰(罰金刑等)
そのため、附帯工事制度の適用に当たっては、慎重な検討と適切なコンプライアンス体制の構築が不可欠である。
まとめ
建設業法第4条の附帯工事制度は、建設業界の実務に即した重要な制度である。しかし、その適用には厳格な要件が設けられており、安易な拡大解釈は許されない。
建設業者は、この制度を正しく理解し、適切に活用することにより、効率的かつ適法な事業運営を実現することができる。一方で、制度の趣旨を逸脱した運用は重大な法令違反を招くリスクがあるため、十分な注意が必要である。
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中川総合法務オフィスの代表・中川恒信は、これまで850回を超えるコンプライアンス研修を担当し、不祥事組織のコンプライアンス態勢再構築支援や内部通報の外部窓口業務を通じて豊富な実務経験を積んでおります。また、マスコミからも不祥事企業の再発防止についてしばしば意見を求められる専門家として活動しています。
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