建設業法第6条逐条解説:許可申請書の添付書類
条文の概要
建設業法第6条は、建設業許可申請に際して必要な添付書類を定めた極めて重要な条文である。本条は、適正な許可審査を行うため、申請者に対して具体的な書面の添付を義務づけている。
建設業法第6条(許可申請書の添付書類)
(許可申請書の添付書類)
第六条 前条の許可申請書には、国土交通省令の定めるところにより、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 工事経歴書
二 直前三年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面
三 使用人数を記載した書面
四 許可を受けようとする者(法人である場合においては当該法人、その役員等及び政令で定める使用人、個人である場合においてはその者及び政令で定める使用人)及び法定代理人(法人である場合においては、当該法人及びその役員等)が第八条各号に掲げる欠格要件に該当しない者であることを誓約する書面
五 次条第一号及び第二号に掲げる基準を満たしていることを証する書面
六 前各号に掲げる書面以外の書類で国土交通省令で定めるもの
2 許可の更新を受けようとする者は、前項の規定にかかわらず、同項第一号から第三号までに掲げる書類を添付することを要しない。
第1項各号の詳細解説
第1号:工事経歴書
工事経歴書は、申請者が過去に施工した建設工事の実績を記載する書面である。この書面により、申請者の施工能力や技術的経験を審査する。
記載事項
- 工事名称
- 工事場所
- 注文者名
- 請負代金額
- 工期
- 施工した建設工事の種類
工事経歴書は「様式第2号」として標準化されており、国土交通省や各都道府県のウェブサイトから取得可能である。記載に当たっては、虚偽記載を避け、契約書や請書等の客観的資料に基づく正確な記載が求められる。
第2号:工事施工金額を記載した書面
直前三年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面は、申請者の事業規模や財務状況を把握するために必要である。この書面により、一般建設業と特定建設業の区分判定も行われる。
記載上の注意点
- 各事業年度別に明確に区分して記載
- 完成工事高と未成工事高を適切に分類
- 建設工事以外の事業収入との明確な区分
第3号:使用人数を記載した書面
使用人数を記載した書面は、申請者の組織規模と人的体制を把握するために提出が求められる。常勤職員数、技術者数、事務職員数等を具体的に記載する。
第4号:欠格要件非該当誓約書面
建設業法第8条に規定する欠格要件に該当しないことを誓約する書面である。この書面は、申請者及び関係者が建設業者として適格であることを自己申告するものである。
誓約対象者
- 法人:当該法人、役員等、政令で定める使用人
- 個人:その者及び政令で定める使用人
- 法定代理人(該当する場合)
第5号:基準適合証明書面
第7条第1号(経営業務の管理責任者)及び第2号(技術者の設置)の基準を満たしていることを証する書面である。建設業許可の根幹をなす重要な要件に関する証明書類である。
主な書類
- 経営業務の管理責任者の経歴証明書類
- 技術者の資格証明書類
- 実務経験証明書類
第6号:その他の国土交通省令で定める書類
建設業法施行規則において具体的に定められた追加書類である。営業所の確保証明、資産状況証明等、許可審査に必要な各種書面が含まれる。
第2項:許可更新時の特例
許可の更新申請においては、第1項第1号から第3号までの書類(工事経歴書、工事施工金額書面、使用人数書面)の添付が不要である。これは、既に許可を受けている業者の事務負担軽減を図る趣旨である。
ただし、第4号から第6号の書類については、更新時においても添付が必要であり、特に欠格要件非該当誓約書面や技術者関係書面は継続的な確認が求められる。
実務上の留意点
書類作成における注意事項
- 正確性の確保:虚偽記載は許可取消事由となるため、客観的資料に基づく正確な記載が必須である。
- 様式の統一:国土交通省が定める統一様式を使用し、記載要領に従って作成する。
- 証明書類の添付:記載事項を裏付ける契約書、領収書、資格証明書等の添付が必要である。
電子申請システムの活用
建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)を活用することで、確認書類の取得や添付が簡素化される。効率的な申請手続きのため、電子申請の活用が推奨される。
関連条文との関係
第6条は第5条(許可申請書)と密接に関連し、第7条(許可の基準)、第8条(欠格要件)と連動する構造になっている。適正な許可審査のため、これらの条文を一体として理解することが重要である。
まとめ
建設業法第6条は、建設業許可申請における添付書類を網羅的に定めた条文である。各添付書類は許可審査の重要な判断材料となるため、正確かつ適法な作成が求められる。実務においては、関係法令や通達を十分に理解し、適切な書類作成と添付を行うことが建設業者の義務である。
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