アカデミックハラスメントはこんなに多いが、防止体制の実効性はどうなっているのか、ハラスメント研修は真摯になされているのか

1.アカデミック・ハラスメントの多さ

アカデミック・ハラスメントについての報道は非常に多い。

■鳥取大学 令和4年7月14日公表

「‥被処分者は、平成28年度から令和2年度にかけて、自己の指導する複数の女子学生に対して、学生の意に反する言動を繰り返し、セクシュアル・ハラスメントと認められる行為を行ったほか、教育又は研究の適正な範囲を超えた不適切な言動を繰り返し、アカデミック・ハラスメントと認められる行為を行いました。‥‥」とある。

■大阪大学 平成30年2月

「大阪大学、60代男性教授を停職3カ月 学生らへの複数のハラスメント」

「…大阪大は、学生らに複数のハラスメントをしたとして、大学院国際公共政策研究科の60代の男性教授を停職3カ月の懲戒処分とした。

大阪大によると、教授は平成25~26年、研究室に所属する学生や学会の事務局スタッフらに対し、授業後の懇親会への参加を強制するなどのハラスメントを繰り返した。…」

等の報道がとても多い。

教授の密室で、単位認定や卒業を脅しに、堂々とセクシュアル・ハラスメントが行われていた東京の大学の例もある。フォーカスされたがあまりに鮮明な写真であり、記事だけであった。

大学等では、上下関係がはっきりしていて、指導と称してパワーハラスメントが行われてきたのも事実である。

このようなことを防ぐためには、司法のリードもさることながら、意識改革のコンプライアンス研修等が必須である。

※具体的事例についてはこのサイトの「コンプライアンスの事例」参照

2.大学等の教育機関でのコンプライアンス

大学のステークホルダーは、何といっても「学生」である。また学費負担の「保護者」であろう。しかし、大学へのかかわりを持つステークホルダーは非常に多いのだ。補助金を出している国、そして納税者もそうであろう。

これらのステークホルダーの信頼を得るには、やはり不祥事リスクも含めた「リスクマネジメント」とアカデミック・ハラスメントなどの不祥事を発生させない職業倫理が求められる。

■大学でのコンプライアンスは全体的に問題が多々あるが、中でもアカデミック・ハラスメントはこれまで、半ば教授という特権階級の許された権限のように見逃されてきたのであり、その根は深いものがある。

3.アカデミック・ハラスメントを防ぐ「ガラス張りの研究室」

私が非常勤講師で教えていた近畿のある大学では、まだ卒業生の出ていない大学で設立が間もないこともあるが、講演会でしばしば取り上げる様に、教授室は完全に外部から見えるようになっている。

パソコンの画面が見えないだけが多いが、教授室によっては、覗くことはできないので内容は全く分からないが、なんとパソコン画面も斜め方向からはわかるようになっていた。

通路に面してガラス張りであるし、居場所をはっきりとわかるようになっている。

大学でのコンプライアンスの徹底のために工夫はそれぞれしているであろうが、ハラスメントで自殺する学生もいて、企業のみならず、大学におけるコンプライアンスも急務であろう。

4.アカデミックハラスメントの研修内容はどのような内容が効果的なのであろうか

アカデミックハラスメントは、外部からはとても分かりにくいハラスメントである。大学などの研究機関におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントは隠されるからである。

そこでなかなかなくならない。悲劇は続いている。以下の内容で教授参加のハラスメント研修が不可欠であろう。

5.アカデミックハラスメントの定義

(1)アカデミックハラスメントとは

アカデミックハラスメントとは、Academic(=学術的)とharassment(=嫌がらせ)を合成した和製英語だが、一部の外国でも使われている言葉である。

その中心は、研究教育の場における権力を利用した嫌がらせである。

性差別にとどまらず、大学教育・研究の場での不当な権利侵害全般、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントも含めたハラスメント全般に用いられる。

広義では、大学内のすべてのハラスメントを指す。

教授に人事権や予算配分権などの権力が集中していること、

大学の閉鎖性、

何か言って睨まれたら就職が難しくなるという被害者側の不安などが背景にある。

(2)多くの大学がガイドラインや相談窓口を設けている。

何よりも極端に閉鎖性が強く、オープンにならず、窓口にもいかない。

6.アカデミックハラスメントの具体例

(1) 研究活動に関連したもの

適切な研究指導等を意図的に行わないこと等正当な研究活動を妨害したり,

正当な理由がないにもかかわらず研究活動に関しての考え方または自主性を否定するような言動を行うこと。

(2) 教育指導に関連したもの

指導を行わない,

研究テーマを押しつける等本人の自主性を認めないこと

必要な教育指導を怠って教育指導の面において,人としての尊厳を著しく否定するような言動を行うこと。

(3) 就労に関連したものその他

暴力的な言動,人格を傷つける言動,悪口・中傷及びプライバシーに関することを言いふらすこと

等不当に就労環境を悪化させ,就労に関し正当な理由がないにもかかわらず不利益を与えるような言動を行うこと。

(http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~epsc/academic.html 参照)

7.アカデミックハラスメントの判例

(1) 神戸大学 アカハラ認め275万円賠償命令 神戸地裁判2013年6月29日

(2)京都大学 留年措置及び共著勧奨等違法事件 平成22年06月24日大阪地方裁判所

(3) 京都大学 京大教授のアカハラ認めず 2013年6月12日

(4)教授の講師に対する指導に人格権侵害を肯定 東京地方裁判所 平成19年5月30日判決

8.アカデミックハラスメントの防止

※大学におけるセクシュアル・ハラスメントの防止について 文部科学省高等教育局大学振興課
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/027/siryo/06021607/031.htm

① 相談や苦情に適切に対処できる体制を整備すること、

② 相談体制の整備を行う際には第三者的視点を取り入れること、

③ 教職員への研修等により服務規律を徹底すること、

④ セクシュアル・ハラスメントを行った教職員に対しては懲戒処分も含め厳正な対処を行うこと、

⑤懲戒処分については再発防止の観点から被害者のプライバシーを考慮しつつその公表について検討すること

9.アカデミックハラスメントに関する外部相談窓口

法的な守秘義務に基づいた実績のある弁護士等が一番いい。値段が高くても価値がある。

いろいろな内部のものや外部のものもあるが、自分の判断で秘密を開陳することである。

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