建設業法第5条【許可の申請】逐条解説

概要

建設業法第5条は、一般建設業許可を受けるための許可申請手続きについて定めた重要な条文である。本条は許可申請書の提出先と記載事項を明確化し、建設業者が適切に許可を取得できるよう具体的な手続きを規定している。

一般建設業の許可
(許可の申請)
第五条 一般建設業の許可(第八条第二号及び第三号を除き、以下この節において「許可」という。)を受けようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣に、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事に、次に掲げる事項を記載した許可申請書を提出しなければならない。
一 商号又は名称
二 営業所の名称及び所在地
三 法人である場合においては、その資本金額(出資総額を含む。第二十四条の六第一項において同じ。)及び役員等(業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者又は相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者をいう。以下同じ。)の氏名
四 個人である場合においては、その者の氏名及び支配人があるときは、その者の氏名
五 その営業所ごとに置かれる第七条第二号に規定する営業所技術者の氏名
六 許可を受けようとする建設業
七 他に営業を行つている場合においては、その営業の種類

条文の構造と解釈

条文の全体構造

建設業法第5条は以下の構造となっている:

  1. 適用範囲の明確化(括弧書きによる限定)
  2. 許可申請書の提出先に関する区分
  3. 許可申請書に記載すべき事項(第一号から第七号まで)

第一項の解釈

条文冒頭の「一般建設業の許可(第八条第二号及び第三号を除き、以下この節において「許可」という。)」との規定は、本条が適用される許可の範囲を明確化している。第八条第二号及び第三号で規定される更新許可申請及び許可の取り消し後の再申請については、別途の規定が適用されることを示している。

提出先の区分について

大臣許可と知事許可の違い

建設業の営業所を2以上の都道府県に設ける場合は国土交通大臣の許可、それ以外は都道府県知事の許可を受ける必要がある。この区分は、建設業者の営業展開の規模と行政の効率性を考慮した制度設計である。

大臣許可が必要な場合

複数の都道府県にわたって営業所を設置する建設業者は、国土交通大臣に許可申請を行う。大臣許可の場合は国土交通省の各地方整備局長へ提出する。これは、広域的な事業展開を行う業者について、統一的な基準による審査を行うためである。

知事許可が必要な場合

一つの都道府県内にのみ営業所を設置する建設業者は、当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事に許可申請を行う。知事許可の取得は各都道府県庁へ申請する必要がある。地域に密着した建設業者については、より身近な行政機関が許可事務を担当することで、効率的な行政サービスの提供を図っている。

許可申請書の記載事項

建設業法第5条では、許可申請書に記載すべき事項として七つの項目を掲げている。これらの記載事項は、許可行政庁が適切に審査を行うために必要不可欠な情報である。

第一号:商号又は名称

法人の場合は商号又は名称、個人の場合は氏名を記載する。この情報により、申請者の同一性を確保し、許可後の監督や指導において正確な対象者の特定を可能にする。

第二号:営業所の名称及び所在地

建設業法上の「営業所」とは、本店、支店その他常時建設工事の請負契約の締結や契約履行に関する事務を行う事務所をいう。営業所の所在地は許可の効力範囲を決定する重要な要素である。

第三号:資本金額及び役員等の氏名(法人の場合)

法人である場合には、資本金額(出資総額を含む)と役員等の氏名を記載する。役員等の定義は極めて広範囲で、「業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者又は相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者」まで含まれる。

第四号:氏名及び支配人の氏名(個人の場合)

個人事業者の場合は、その者の氏名及び支配人があるときはその者の氏名を記載する。支配人制度は商法上の制度であり、事業の管理運営を任されている者を明確にするために必要な記載事項である。

第五号:営業所技術者の氏名

各営業所に配置される第七条第二号に規定する営業所技術者(専任技術者)の氏名を記載する。専任技術者は建設業許可の重要な要件の一つであり、技術的な適格性を確保するための制度である。

第六号:許可を受けようとする建設業

建設業法別表第一に掲げる29業種の中から、許可を受けようとする具体的な業種を記載する。業種ごとに技術者要件や財産的基礎要件が異なるため、正確な業種の特定が重要である。

第七号:他の営業の種類

建設業以外に営業を行っている場合は、その営業の種類を記載する。これにより、申請者の事業全体を把握し、建設業との関連性や影響を審査することができる。

実務上の留意点

申請書類の準備

許可を受けようとする場合は、許可行政庁に許可申請書及び添付書類を提出することが必要である。申請書の記載事項以外にも多数の添付書類が必要となるため、事前の準備が重要である。

提出方法と手続き

大臣許可について、令和2年4月1日より都道府県経由事務が廃止され、各種申請書・変更届出書等全ての手続きについて、営業所がある各地方整備局に直接持参または郵送による提出となった。この変更により、手続きの迅速化が図られている。

法改正の動向

建設業法は社会情勢の変化や建設産業の実態に応じて継続的に改正が行われている。最新の改正情報については、国土交通省のホームページやガイドライン等を確認することが重要である。

まとめ

建設業法第5条は建設業許可申請の基本的な手続きを定めた条文であり、建設業者が適法に事業を開始するための出発点となる規定である。提出先の区分と記載事項を正確に理解し、適切な申請を行うことが建設業経営の第一歩となる。許可申請は建設業者の法的地位を確立する重要な手続きであるため、専門的な知識と経験に基づく適切な対応が求められる。


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