(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。

一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。

二 その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。第十一条第四項及び第二十六条の五において同じ。)を専任の者として置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。第二十六条の八第一項第二号ロにおいて同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。同号ロにおいて同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。同号ロにおいて同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者

三 法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。

四 請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。

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建設業法第7条「許可の基準」逐条解説

はじめに

建設業法第7条は、建設業許可における最も重要な条文の一つである。建設業を営むためには、同条が定める4つの基準をすべて満たすことが不可欠であり、これらの基準は建設業の健全な発展と消費者保護の観点から設けられている。本記事では、国土交通省が公表している許可要件に関する資料等を参考に、同条の詳細な解釈と実務上の留意点について解説する。

条文の構造と概要

法的性格

第7条は、建設業の許可を受けるためには、法第7条に規定する4つの「許可要件」を備えていることを求める根拠規定である。これらの基準は、許可申請時のみならず、許可取得後も継続して満たし続けなければならない要件である。

4つの許可基準の構成

  1. 経営業務の管理を適正に行う能力(第1号)
  2. 営業所技術者の設置(第2号)
  3. 誠実性(第3号)
  4. 財産的基礎又は金銭的信用(第4号)

第1号「経営業務の管理能力」の詳細解説

制度趣旨

建設業の経営は他の産業の経営とは著しく異なった特徴を有しているため、適正な建設業の経営を期待するためには、建設業の経営業務について一定期間の経験を有した者が最低でも1人は必要という考えに基づく。

「国土交通省令で定める基準」の具体的内容

建設業法施行規則第7条では、以下のような基準を定めている。

法人の場合

常勤の役員のうち1人が以下のいずれかに該当することが必要である。

  1. 5年以上の経営業務管理責任者経験
    • 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  2. 準ずる地位での経験
    • 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位(経営業務を執行する権限の委任を受けた者)として経営業務を管理した経験を有する者
  3. 補佐業務経験
    • 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
  4. 複合要件
    • 建設業に関し2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る)としての経験を有する者で、常勤役員等を直接に補佐する者を配置する場合

経営業務管理責任者制度の重要性

許可取得後も継続して要件を満たす必要があり、例えば、許可を取得した後に経営業務の管理責任者等が退職し、後任が不在となった場合は要件欠如で許可の取消し(建設業法第29条第1項第1号)となるため、事前の準備が必要である。

社会保険加入要件

平成28年の法改正により、健康保険、厚生年金保険・・・適用事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること 雇用保険・・・適用事業の事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていることが追加された。

第2号「営業所技術者の設置」の詳細解説

制度趣旨と重要性

建設工事に関する請負契約の適正な締結、履行を確保するためには、許可を受けようとする建設業に係る建設工事についての専門的知識が必要であり、各営業所において建設業に関する営業が行われることから、専門的な技術者の配置が求められる。

営業所技術者の資格要件

一般建設業の場合

学歴・実務経験による資格

条文第2号イに該当する者として、以下の要件を満たす必要がある。

  1. 高等学校卒業者:指定学科修了後5年以上の実務経験
  2. 大学卒業者:指定学科修了後3年以上の実務経験
  3. 高等専門学校卒業者:指定学科修了後3年以上の実務経験
  4. 専門職大学前期課程修了者:指定学科修了後3年以上の実務経験

実務経験のみによる資格(条文第2号ロ)

許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し10年以上の実務経験を有する者

大臣認定による資格(条文第2号ハ)

国土交通大臣が同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者

特定建設業の場合

一般建設業よりも厳格な要件が設定されており、以下のいずれかに該当することが必要である。

  1. 国家資格者
  2. 指導監督的実務経験者:一般建設業の要件を満たし、かつ請負代金4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的実務経験を有する者
  3. 大臣特別認定者(指定建設業のみ)

専任性の要件

営業所技術者はその営業所に常勤していることが必要であり、他の営業所や工事現場での兼務は原則として認められない。

第3号「誠実性」の詳細解説

制度趣旨

建設業における請負契約は、消費者にとって高額かつ専門性の高い取引であることから、契約締結から履行に至るまで、事業者の誠実性が特に重要視される。

判断基準

請負契約の締結やその履行に際して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかである場合は、建設業を営むことができませんとされており、法人の場合はその役員等についても同様の判断が行われる。

具体的な不正・不誠実行為の例

  • 工事内容の故意の手抜き
  • 契約に違反した一方的な工事の打切り
  • 建築基準法等関係法令を無視した設計・施工
  • 不正な請求や代金の詐取

第4号「財産的基礎」の詳細解説

制度趣旨

建設工事を着手するに当たっては、資材の購入及び労働者の確保、機械器具等の購入など、一定の準備資金が必要であり、また継続的な営業活動のためにもある程度の資金確保が必要である。

一般建設業の財産要件

以下のいずれかに該当することが必要である。

  1. 自己資本が500万円以上であること
  2. 500万円以上の資金調達能力を有すること
  3. 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること

特定建設業の財産要件

特定建設業者は多くの下請負人を使用して工事を施工することが一般的であること、特に健全な経営が要請されること等の理由から、より厳格な要件が設定されている。

以下のすべてに該当することが必要である。

  1. 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
  2. 流動比率が75%以上であること
  3. 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること

軽微な建設工事の除外規定

条文第4号では、「請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)」と規定されており、軽微な建設工事については財産要件の対象外とされている。

実務上の留意点

許可取得後の継続的要件充足

許可の基準は許可取得時のみならず、許可の有効期間中も継続して満たし続けなければならない。要件を欠いた場合は許可取消しの対象となるため、日常的な管理が重要である。

変更届出の義務

許可基準に関わる事項に変更が生じた場合は、建設業法第11条に基づく変更届出を適切に行う必要がある。

定期的な確認体制の構築

特に経営業務管理責任者や専任技術者については、退職等により要件欠如が生じやすいため、後継者の育成や確保を計画的に行うことが重要である。

まとめ

建設業法第7条は建設業許可制度の根幹をなす条文であり、建設業の健全な発展と消費者保護を図るための重要な規定である。各号の要件は相互に関連しており、すべてを満たすことが許可取得の前提となる。実務においては、許可取得後も継続的に要件を満たし続けるための体制整備が不可欠である。

また、建設業法は頻繁に改正されており、最新の施行規則や国土交通省の通達等を常に確認し、適切な対応を取ることが建設業者には求められる。


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