刑務所等で受けた診療結果は開示請求出来るのか。最高裁の逆転判決(R3/6/15)

1.事案の概要

行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき,東京矯正管区長に対し,収容中に上告人が受けた診療に関する診療録に記録されている保有個人情報の開示を請求したところ,同法45条1項所定の保有個人情報に当たり,開示請求の対象から除外されているとして,その全部を開示しない旨の決定を受けたことから,取消し等を求めた。

なお、行政機関個人情報保護法12条1項は,自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる旨を規定するが同法45条1項は,刑事事件…刑若しくは保護処分の執行…に係る保有個人情報…については,上記各規定を含む同法第4章の規定を適用しない旨を規定する。

2、原審の判断

本件情報は,行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たり,同法12条1項の規定による開示請求の対象から除外されるから,本件決定は適法である。被収容者に対する処遇は,刑事事件に係る裁判の内容を実現するために必然的に付随する作用であり,これに係る保有個人情報が開示請求の対象となると,第三者による前科等の審査に用いられ,当該情報の本人の社会復帰を妨げるなどの弊害が生ずるおそれがある。そうすると,上記保有個人情報については,行政機関個人情報保護法45条1項所定の刑事事件に係る裁判に係る保有個人情報に当たると解すべきところ,被収容者に対する診療は,被収容者の処遇の一環として行われるものであるから,これに関する情報についても,別段の定めがない以上,上記の刑事事件に係る裁判に係る保有個人情報に該当する。

3、最高裁の判断

…そうすると,被収容者が収容中に受ける診療の性質は,社会一般において提供される診療と異なるものではないというべきである。…個人情報保護法45条1項は,その文理等に照らすと,旧法13条1項ただし書の刑事裁判等関係事項に係る規定と同様の趣旨から,刑事裁判等関係事項のほか,旧法においては事務の適正な遂行の阻害防止の観点から一定の場合に限り処理情報の開示請求をすることができないものとされていた旧法7条3項3号所定の事務に係る事項であって上記趣旨にかなうものを含む保有個人情報について,第4章の規定を適用しないこととして,開示請求等の対象から除外する規定であると解される。他方,行政機関個人情報保護法には,診療関係事項に係る保有個人情報を開示請求の対象から除外する旨の規定は設けられなかった。その趣旨は,行政機関が保有する個人情報の開示を受ける国民の利益の重要性に鑑み,開示の範囲を可能な限り広げる観点から,医療行為に関するインフォームド・コンセントの理念等の浸透を背景とする国民の意見,要望等を踏まえ,診療関係事項に係る保有個人情報一般を開示請求の対象とすることにあると解される。そして,同法45条1項を新たに設けるに当たっては,社会一般において提供される診療と性質の異なるものではない被収容者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報について,同法第4章の規定を適用しないものとすることが具体的に検討されたことはうかがわれず,その他,これが同項所定の保有個人情報に含まれると解すべき根拠は見当たらない。

以上によれば,被収容者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は,行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないと解するのが相当である。そうすると,本件情報は,行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないから,同法12条1項の規定による開示請求の対象となる。…

⇒刑務所等以外の病院で受けた診療と変わらないからというのが最大の理由で、法解釈上は上記の通りであろう。基本的人権だから、個人情報は。

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