1.【相続による権利義務の承継】司法試験 令和4年〔第33問〕

相続による権利義務の承継に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。

ア.個人根保証契約における保証人の相続人は、主債務者と債権者が相続開始後に締結した契約に基づく主債務について履行する責任を負わない。

イ.土地の使用貸借の借主が死亡した場合、借主の相続人は、使用借権を相続して、その土地を使用し続けることができない。

ウ.土地を権原なく占有していた被相続人が死亡して相続が開始した場合、被相続人のその土地に対する占有は、相続人によって承継されない。

エ.無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、相続人全員に不可分的に帰属する。

オ.遺産である賃貸不動産から相続開始後に生じた賃料債権は、遺産分割によって当該不動産を取得した者が、相続開始時に遡って取得する。

1.ア イ  2.ア エ  3.イ オ  4.ウ エ  5.ウ オ

 

 

 

 

 

 

ア ○ その通りです。 平成29年の法改正で、個人根保証契約の元本の確定事由が、第四六五条の四、第1項第3号で「主たる債務者又は保証人が死亡したとき。」が入りましたので、確定後の債務は保証しません。

イ. ○ その通りです。 使用貸借は個人間の信義によるものです。

ウ. × 間違いです。当然占有されますが、権限の変更もあり得るのです。

エ ○ その通りです。 追認は可分ではないだろう。無権代理人の利益衡量では拒絶できなくても他にも権利者がおればやむを得ない。

オ × 間違いです。賃料債権は可分であるから、各相続人に相続分に応じて帰属するが、遺産分割後は所有権を持ったものが取得する。

●正解 5

 

2.【共有、認知、遺贈、特別寄与者の相続財産の取得】司法試験 令和4年〔第34問〕

Aの相続財産の取得に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。


ア.甲土地の共有持分がAの相続財産に属する場合において、Aに相続人がおらず、かつAの債権者も受遺者もいないときは、その持分は他の共有者に帰属し、特別縁故者への分与の対象とならない。

イ.相続開始後にAの子と認知されたBが遺産分割を請求した場合において、他の共同相続人が既に遺産分割をしていたときは、その遺産分割は、効力を失う。

ウ.AからAの相続財産に属する乙土地の遺贈を受けたCは、Aが死亡した後いつでも遺贈の放棄をすることができる。

エ.Aの相続財産に属する丙土地を無償で管理していた特別寄与者であるDは、その寄与に応じ、丙土地の持分を取得することができる。

オ.Aの親族でないEは、無償でAの療養看護をしたことによりAの財産の維持に特別の寄与をしても、特別寄与者には当たらない。

1.アイ  2.アオ  3.イエ  4.ウエ  5.ウオ

 

 

 

 

 

 

 

 

ア. × 間違いです。「共有者の一人の相続が開始し相続人がいないとき、その共有持分は特別縁故者に対する分与の対象となり、特別縁故者もいないことが確定したときにはじめて民法二五五条により他の共有者に帰属する。(最判平元・11・24)」

イ. × 間違いです。第九一〇条「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。」

ウ. ○ その通りです。 第九八六条「① 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。」。権利関係の安定は、遺贈義務者の催告による。第九八七条参照。

エ. × 間違いです。1050条にある通り、金銭請求のみである。

オ. ○ その通りです。 同じく、親族のみが請求できる。

●正解 5

 

3.「相続の承認及び放棄に関する事例」司法試験 令和4年〔第35問〕

相続の承認及び放棄に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。


ア.相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産に属する土地を売却したときは、その相続人は、単純承認をしたものとみなされる。

イ.相続の放棄をしたAの子であるBが被相続人の直系卑属であるときは、Bは、Aを代襲して相続人となる。

ウ.相続人が数人あるときは、各相続人は、単独で限定承認をすることができる。

エ.限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。

オ.相続人が未成年者であるときは、相続の承認又は放棄をすべき期間は、その法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

1.アウ   2.アエ   3.イウ   4.イオ   5.エオ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ア ○ その通りです。 第九二一条1項1号「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。」

イ × 間違いです。第九三九条「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」よって、代襲もない。廃除とは違う。

ウ × 間違いです。第九二三条「相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。」

エ ○ その通りです。 第九二六条第1項「限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。」

オ ○ その通りです。 第九一七条「相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。」

●正解 3

 

4.「相続人の欠格と廃除に関する」司法書士試験 令和4年〔第22問〕

Aを被相続人、Aの夫であるB及びAの弟であるCを推定相続人とする相続に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  BがAに対する傷害致死罪により有罪判決を受け、この判決が確定した場合には、Bは、相続人となることができない。

イ  Bが相続に関するAの遺言書を破棄した場合であっても、それが相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、Bは、相続人となることができる。

ウ  CがAに重大な侮辱を加えたときは、Aは、Cの廃除を家庭裁判所に請求することができる。

エ  Aの生前において、Bの廃除の審判が確定した場合であっても、Aは、いつでも、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。

オ  Aの遺言によるBの廃除の審判が確定したときは、Bの廃除は、Aの死亡の時にさかのぼって効力を生ずる。

1 アウ    2 アオ    3 イエ    4 イオ    5 ウエ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ア × 間違いです。 第八九一条第1号は欠格者として「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」とあるので、故意の殺意が必要であるが、傷害致死では傷害に対する故意しかない。

イ ○ その通りです。同条第5号は、「 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」も欠格者としているが、判例は、「相続人が被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は本条五号所定の相続欠格者に当たらない。(最判平9・1・28)」とする。

ウ × 間違いです。第八九二条は、「遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。」とあるので、兄弟姉妹には遺留分はなく廃除請求できない。遺言で相続分を与えなければ足りる。

エ ○ その通りです。 第八九四条第1項は、「被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。」とする。

オ ○ その通りです。 第八九三条は、「被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。」とする。

●正解 1

 

5.「配偶者居住権に関する」司法書士試験 令和4年〔第23問〕

被相続人の配偶者の居住の権利に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、被相続人の共有持分についてのみ、配偶者居住権を成立させることができる。

イ  配偶者居住権は、居住建物の所有者の承諾を得た場合であっても、譲渡することができない。

ウ  配偶者短期居住権は、これを登記することにより、居住建物について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

エ  配偶者居住権の設定された建物の全部が滅失して使用及び収益をすることができなくなった場合には、配偶者居住権は消滅する。

オ  遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合であっても、他の共同相続人全員が反対の意思を表示したときは、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができない。

1 アイ     2 アウ     3 イエ     4 ウオ     5 エオ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ア × 間違いです。第一〇二八条第1項によれば、「被相続人の配偶者…は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物…の全部について無償で使用及び収益をする権利…を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。」とある。

イ ○ その通りです。 第一〇三二条第2項によれば、「配偶者居住権は、譲渡することができない。」とある。

ウ × 間違いです。短期は出来ない。

エ ○ その通りです。 第一〇三六条によれば「第五百九十七条第一項及び第三項〈期間満了等による使用貸借の終了〉、第六百条〈損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限〉、第六百十三条〈転貸の効果〉並びに第六百十六条の二〈賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了〉の規定は、配偶者居住権について準用する。」とある。

オ × 間違いです。第一〇二九条によれば「遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。…配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。」とある。

●正解 3

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