1.騒いでいる訪問者を建物外の押し出しても暴行等に該当しない重要判決(昭和51年2月24日東京高裁)
「‥‥一般に、官公署の長は、その管理する庁舎について、庁舎管理権を有するのを常とするが、庁舎管理権は、単なる公物管理権にとどまるものではなく、公物管理の側面から、庁舎内における官公署の執務につき、本来の姿を維持する権能を含むものであり、一般公衆が自由に出入しうる庁舎部分において、外来者が喧噪にわたり、官公署の執務に支障が生じた場合には、官公署の庁舎の外に退去するように求める権能、およびこれに応じないときには、官公署の職員に命じて、これを庁舎外に押し出す程度の排除行為をし、官公署の執務の本来の姿を維持する権能をも、当然に包含しているのであつて、このことは、官公署が警察署である場合にもひとしくあてはまるものであるところ、前記認定のとおり、前記D大関係者集団において、警察署の執務に支障を生じさせる程度の行状をしたものであるから、警備官の右集団に対してした退去命令は、庁舎管理権にもとづく命令として適法であり、さらに、この命令があつたのに、右集団が即刻退去しそうになかつたことも前記認定のとおりであるから、庁舎管理権を根拠としての、右集団に対する排除を命じた措置も適法である。
加えて、右集団に対してなされた排除行為の態様は、前記認定のとおりの程度のものであつたのであるから、庁舎管理権の行使として許容される適法なものであつたと認められる‥‥」
2.大声を録音しても違法性はないと断言した最高裁判決(最判平成12年7月12日)
「‥‥本件で証拠として取り調べられた録音テープは、被告人から詐欺の被害を受けたと考えた者が、被告人の説明内容に不審を抱き、後日の証拠とするため、被告人との会話を録音したものであるところ、このような場合に、一方の当事者が相手方との会話を録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても、違法ではなく、右録音テープの証拠能力を争う所論は、理由がない。‥‥」
3.平穏に公務を行う権利の侵害は違法であると明言した判例(大阪地裁平成28年6月15日)
「‥‥法人に対して行われた当該法人の業務を妨害する行為が、当該行為を行う者による権利行使として相当と認められる限度を超えており、当該法人の資産の本来予定された利用を著しく害し、かつ、その業務に従事する者に受忍限度を超える困惑・不快を与えるなど、業務に及ぼす支障の程度が著しく、事後的な損害賠償を認めるのみでは当該法人に回復困難な重大な損害が発生すると認められるような場合には、当該法人は、上記妨害行為が、法人において平穏に業務を遂行する権利に対する違法な侵害に当たるものとして、上記妨害行為を行う者に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求できるのみならず、平穏に業務を遂行する権利に基づいて、上記妨害行為の差止めを請求することができるものと解するのが相当である。‥‥」
4.地方公共団体のクレーム対応対応研修
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