1.公益通報者保護法が成立しコンプライアンス経営に不可欠な法令等遵守の内部制度になる

(1)公益通報者保護法…コンプライアンス経営に必須

公益通報者保護法が平成16年(20004年)6月14日に成立し、平成18年4月1日より施行された。

公益通報者保護法の基本は、内部告発を行った労働者を保護する法律である。

今後は、商法・会社法や金融商品取引法はもちろんのこと、

企業活動の適法性=コンプライアンス(compliance)経営がその企業にとって、企業の文化活動や環境保護活動と並んで重要性を増してくる。

併せて、電子メールの保存、電子帳簿の保存、e-文書法の活用等コンプライアンス経営を記録することが重要になってきて「記録」の観点が経営に不可欠だ。

(2)公益通報者保護法の成立のきっかけ

この法律が成立する直接のきっかけになったといわれる砺波に本社のある「トナミ運輸事件」は、当時の人気写真報道雑誌「FOCUS」に初めてこの事件が載ったときの衝撃を忘れることができない。余りに酷かった。私のその地方の砺波高校出身者でもあって地域の風景と相まって記憶が鮮明である。

1974年にトラック業界のカルテルを告発したトナミ運輸元社員(2006年9月20日退職)K氏が、トナミ運輸のカルテルを実名で告発した為にトナミ運輸より恨まれ「研修所管理」などの閑職を32年間も続けた事件である。

訴訟になり最終的には和解になったようだが、おじに当たる方や身内にに励まされて辛抱して働き続けたというまさに雪国の我慢強い男の生き様に驚嘆するとともに、それを強いてきた経営陣の事なかれ主義と会社全体の体質に絶望感を抱いた。

しかし、もはやこの法律のできた現在ではこのような不利益な取り扱いは禁止されることは勿論だ。

2.公益通報者保護法のポイント

(1)基本的知識

公益通報者保護法は内部告発者に対する解雇や減給その他不利益な取り扱いを無効とし、保護されることとなる通報対象として約400の法律を規定し保護される要件が決められた。

労働法の一つとして位置づけられ、保護の対象となるのは、労働者のみである(2条2項)。

会社役員等は保護対象外である。

通報対象は、同法の別表の7本の法律のほか、政令に掲げられている約400本の法律違反行為である。刑事罰に限る。

最初は監督官庁から勧告、命令などを受け、それを無視していると刑罰が科される。

(2)通報の仕方など

通報先は3段階で、事業者内部⇒監督官庁や警察・検察等の取締り当局⇒その他外部(マスコミ・消費者団体等)である。要件を満たせば、この順序での告発をする必要ない。

事業者内部への通報は企業イメージが下がるなどのおそれがなく虚偽の通報に伴う弊害が生じないので要件が、事業者外部への通報より緩和されている。

もっとも、、同法で通報者が保護されない場合でも、判例で確立されてきた一般法理によって保護される可能性が十分にあろう。

公益通報者保護法は、すべての「事業者」(大小問わず、営利・非営利問わず、法人・個人事業者問わず)に適用される。

つまり、学校法人、病院など閉鎖性故に不祥事が隠蔽されがちな組織にも当然に適用される。

なお、同法の適用を受ける事業者のために、内閣府は通報窓口設置のためのガイドラインも出している。

ハリウッド映画などでご存知のようにアメリカには「内部告発者保護法」がある。だがこの法はイギリス法を真似していることのご注意を。

対象となる新法ができるたびに政令改正の検討が行われる必要があり、毎年2回程度政令改正が行われる。

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