1.ダイバーシティ経営の求められる理由

(1)ダイバーシティは時代の要請

現代社会での組織マネジメントでは、多様性(diversity)が時代を表象するキーワードになっているといっていいであろう。

我が国はこれまで労働市場が閉鎖的で、企業や自治体は同質的な人材が集合することによって一定方向に進みやすく意思疎通がしやすく終身雇用と年功賃金制に支えられて強い家族意識で運営されてきていたといっていいであろう。もちろんそれに加えて、企業別労働組合である。

(2)日本がモデルの破綻

しかしその日本型モデルは完全に破たんしたといってよい。

高度成長期のような企業等が高品質商品をいかに大量生産できるかには、従来のモデルはフィットしても我が国の経済は長期の低成長またはデフレ時代に入っており、同じような人間が同じような商品をたくさん作れば企業も国も発展すると考えるのは幻想である。

(3)現代社会における成長企業の条件

社会の需要をより的確に正確に把握するマーケティングを行うには、組織と企業が隔絶したものでなく、社会の求めるものが何かを見つけなければならない。

その突破口は様々であるが、そのうちの一つがダイバーシティ、すなわち多様性のある組織に変えていくことであろう。

多様性を受容している組織であれば、商品やサービス開発において、より多様な視点から、より社会に有益なものが生み出されるであろう。

2.ダイバーシティを不可欠にした「女性活躍推進法」

女性活躍推進法が平成27年8月28日に成立し、ダイバーシティ(diversity:多様性)経営はすべての企業や組織にとって不可欠のマネジメントになっている。

そもそも、ダイバーシティ経営との考え方の基礎には、人種や性別、年齢、身体障害の有無などの外見的な違い、宗教や価値観、社会的背景、生き方、考え方、性格、態度、性的な面を含めた嗜好等の内面的な違いが人にはあるが、各自の違いを認めたうえで能力を発揮できる風土を醸成していくことが、個人や組織にとって幸せにつながると考える価値判断があろう。

まずは、人の属性における基本中の基本である性別の違いを組織に反映させる必要がある。

女性の活用・活躍、高齢者雇用の安定等のために管理職がどのようなリーダーシップを発揮したらいいのか、女性の年上部下をどうすればうまく使えるのかにつては、理論と事例の両方からの考察が必要である。

3.ダイバーシティの必要性と効果

マクロ経済的には、これは長いスパンでは成長戦略である。

実は社会的なハンディがある人に優秀な方がいる。宇宙物理学のホーキング博士を見よ。車いす生活、次第に筋力が低下する筋萎縮性側索硬化症(ALS)であった。

もちろん、企業発展の効果のみならず投資家の目にプラスになり資金調達でもポイントになる。

4.経済産業省でのダイバーシティ推進制度

低成長時代を乗り切り、アジア市場も含めて人材を多様化することにより着実な成長をするために国は強くダイバーシティを推進しており、ダイバーシティ奨励のために表彰制度なども取り入れている。

5.ダイバーシティ経営の推進例

もうすでに、明らかに注目に値するトヨタ自動車、NTTドコモ、JR東日本など多数の例がある。

例えば、トヨタのパッソは低燃費で、丸みのある可愛らしいデザインが特徴で、完全に女性目線で開発された。女性の好みの多様なこともあって、ボディカラーは15種類もある。

トヨタ自動車では、ダイバーシティを人事施策に取り入れ、1992年に女性事技職の本格採用を開始して以降、長期雇用・人材育成の観点から、育児や出産との両立支援策の充実・強化を重点に取り組んでいる。

外資系では、ジョンソンエンドジョンソン社が女性の活躍する会社として有名である。

6.リーダーシップPM理論やサーバントリーダーシップ論

昭和の高度成長期のリーダーシップは物語としては面白いかもしれないが、実証データに基づくPM型リーダーシップやサーバントリーダーシップ論は、これまでの指示命令型尊重のリーダーシップ論と全く異なる有益な視点を取り込んだもので、是非ともリーダーが身に着けるべき理論である。

以上を踏まえて、女性のタイプをキャリア志向・スペシャリスト志向・リレーション志向・コモディティ志向その他に分析して、女性が働きやすく、能力を発揮しやす労働現場の構築をしていくことが大切であろう。

7.ダイバーシティ:年上部下と高齢者の活用・障害者・外国人・介護・LGBTQ+等

これらも大切な多様性である。組織が、これらの項目に何の対応もできていないのであれば、どんどん時代に取り残されていくであろう。その結末は言わずもがなである。

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