アスリート、スポーツ団体のコンプライアンス(スポーツコンプライアンスとはなにか)

1.アスリート、スポーツ組織におけるコンプライアンス指導と態勢構築

(1)スポーツ不祥事の事例の検証の重要性

スポーツコンプライアンス態勢の骨格方向性がまず最重要である。

最近の事例では、

◆平成30年5月の日大と関学大との定期戦で、関学のQBがパス後の無防備な状況で背後から受けた「悪質タックル」で全治3週間のけがを負った。

日大の誠意ある対応がないとして、日大の大塚学長も5月25日に会見したが、すでに関西学院大学との定期戦で反則タックルをした日大の選手が22日に記者会見し、内田前監督と井上コーチから指示を受けたと訴えた。一方、内田前監督らは翌日の23日夜に急きょ会見を開き、指示を否定している。また、日大は24日に反則指示はしていないとの再回答書を関学側に提出しており、これを受けて関学と被害選手の父親が26日に会見を開く。

※この社会的な問題となった問題の本質については、当サイトのスポーツ倫理の別稿参照

(2) コンプライアンス態勢の強化を図るための、役職員の意識の高揚と現場への浸透の具体的方法

(3)監事・監査役による定時監査及び監督官庁による検査よりも自主的内部監査による問題点の発見態勢の確立

(4)内部通報制度の一層の充実と通報者(社員等)への一切のリベンジの禁止体制の確立

(5)民間企業等の不祥事(週刊新潮事件・大和銀行事件・フィリップモリスジャパン事件等不祥事)約20件検証と再発防止策のスポーツコンプライアンスへの応用

(6)なりすまし・置き忘れ等による個人情報の漏えいと損害賠償責任に関する実務と訴訟の最新動向

(7)人身事故・飲酒運転等競技以外非行による信用失墜行為とハラスメントによる環境破壊行為の防止策

平成末から令和にかけて、監督やコーチによる「セクシュアルハラスメント」と「体罰・暴力」が大きく問題になってきている。その対処は喫緊の課題であろう。

2.スポーツコンプライアンスのポイント

スポーツコンプライアンス態勢の基本…組織の内部統制やガバナンスを強く求める時代の変化

(1)コンプライアンスは世界的な大会であるオリンピックや世界選手権へのスポーツ団体への社会的要請に応えるため

(2)コンプライアンス理論と構造をCOSOキューブの歴史から理解する

(3)選手も含めて役職員必須のコンプライアンス上重要法令

スポーツ基本法(平成23年6月24日法律第78号、スポーツ振興法全部改正)等の基礎知識

(4)コンプライアンスと公益通報者保護法等を踏まえた企業内部統制の方法

ガイドライン等を参考にした現行法秩序下での内部統制として公益通報者保護法の解釈とヘルプラインの効果的設置方法

(5)不祥事発生時の対応

・最も重要なものはintegrity(誠実性・高貴性・廉潔性等)による初期対応と公表

・マスコミ対応5原則とイニシアティブある記者会見の運営実務及びその後の対応

・スポーツ庁等監督官庁との折衝の仕方

(6)不祥事再発を防止する重要項目

【不正のトライアングル】等リスク管理フレームワークの活用

・ 会計事務に従事する職員の基本リスク管理

・不正経理・ハラスメント等を発見した場合の内部通報システムの確立と専門通報窓口について

・選手へのコンプライアンス違反の処分基準の明示と懲戒処分の対応

・新部署の設置「監査部、コンプライアンス改善委員会」などの名称

・エシックスカード・行動規範策定のすすめ(JALフィロソフィ等参考)

・メンタルヘルス対策(ラインケアとセルフケア)

・研修を踏まえて職場と自己のチェックリスト作成

3.スポーツコンプライアンスに必要不可欠な選手の職業倫理と組織倫理(最重要)

(1)ステークホルダーであるサポーターやファン等の支援者や観客目線であるべき職業倫理を確立する
 

(2)スポーツ選手の倫理における卓越性と相対性
 

(3)スポーツのルールと社会倫理

4.アスリートとスポーツ組織についての個別重要テーマ

(1)知的財産権違反の厳罰化とブランドイメージの損傷

(2)個人情報の保護と個人情報保護法・マイナンバー法の遵守

(3)ハラスメント防止(パワハラ・セクハラ・モラハラ等)…指導のおける暴力は絶対禁止

(4)反社会的勢力との関係遮断

(5)クレーム対応…クレーム対応の仕方が悪いというクレームが来る時代

(6)賭博行為の禁止

(7)ドーピング(禁止薬物)

(8)飲酒行為・飲酒運転・人身事故

(9)ブラック組織かホワイト組織か

なお、コンプライアンス研修とするときは、選手と組織企画を分けることも可能、

また、スポーツ庁の組織の指導内容も取り上げる事が今日では大切であろう。

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