連続不祥事にもう打つ手はない?その2/3 属人的職務環境の改善等(大阪府K市横領事件)

1.不祥事に打つ手はないのか…「大阪府K市」生活保護不祥事の例

(1)不祥事防止のノウハウはないのか

次から次へと、不祥事が発覚するとマスコミの報道では「打つ手がない」と言っているが、本当にそうであろうか。

不祥事防止のノウハウにつき前回も重要なポイントを指摘したが、今回は大阪のK市生活保護関連の不祥事の例を取り上げよう。

すでに、市自身のホームページで何度も公表しているので、その資料を基に話したい。数億円の横領の他にも不祥事が順次第三者委員会で調査されている。

私は、前回取り上げたN県O市役所の止まらない連続不祥事と全く構造が同じであることを見て取るのである。

(2)大阪府K市生活保護関連の不祥事原因 

①強い犯行動機

これは不祥事にポイントを置くと以下に問題点があった。

・大阪府K市のずさんな管理下にあった巨額の税金のある口座から生活保護費約3億2000万円を不正に引き出し、うち418万円は着服が明らかで刑事告訴されたのであるが、この職員は、カネに強い執着心を持っていたのである。

⇒カネへの執着心自体は、個人のプライベートな事ではあろうが、コンプライアンスの観点からは看過できないのである。

では、どうすればいいのか。それが、非常に重要なことなのである。

②提供されていた犯行の機会

・2001年から約10年間、生活保護を主管する部署で働いていたが、他の守口市などでは過去の不祥事の反省から議会からの追及もあってこのような10年全く同じ部署はあり得ないことで、なぜK市では許されていたのか。

⇒自治体「内部統制」=ガバナンスの視点が非常に弱いであろう。或いは、意識すらなかったか。

③リスクマネジメントも職業倫理もなかった

・自分のミスの隠蔽がばれず、着服を計画したようである。 偽造された領収書の似た筆跡もおかしいと思われなかった。

⇒他の市町村でも着服事件はこの「ばれない」が発端になっていることが多い。中身を見ずに、形式で承認する仕事の仕方だからである。

内部統制、特にリスクマネジメントの仕組みがないに等しいのである。前回の指摘のように法改正が不可欠か。

また、ばれない不正は構わないといった基本的倫理感が麻痺している精神構造になっているのでないか。

④一人三役で何でもできる

・「ケースワーカー」・「情報入力電算システム担当」・「経理担当」の三役を一人でやっていた。

⇒これも、あり得ない業務の分担体制で、内部チェックをどうやってするのか。上司のみならず、トップが放置していた責任もあると思う。(信頼されていなかった課長という言葉が委員会報告に出てくる

もっとも、定期監査で兼務が不適切と指摘されて兼務を一時は解消したようであるが、元の状態に戻し、府には兼務を解消したと嘘の報告をしていたようである。

このような属人的な職務環境は、コンプライアンス違反の不祥事を非常に生みやすい。仕事は部署全体、組織全体でするものである。

2.内部統制の基本から入るべきである

(1)地方自治法の改正は遅きに失した

内部統制・ガバナンス強化の地方自治法の改正が不可欠である。

コンプライアンスのPDCAサイクルが全くできていない。

内部手続きを無視して仕事をしている。

(2)不祥事防止のノウハウ

このような、不祥事防止のノウハウはある。100%という気はないが、京都市幹部の訪問を受けたときに昨年のお礼とともにかなり研修が効果があったと言って頂いた。

コンプライアンス研修を数年間連続して担当してやっているところも多い。

効果があればこそであろう。

ずばり、それは組織改革の重要な肝心要の話である。

不祥事を防止するのための、コンプライアンス研修・リスクマネジメント研修・危機管理研修等をもっと真面目にできないものか。

企業は株主から経営を託されており、役所は住民から組織運営を託されており、そのステークホルダーの信頼を得ることを真剣に考えないものなのか。

不祥事防止のノウハウ、少なくとも減少のノウハウはあるのだ、理論的にも実践的にも。

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