1.テレワークと新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの下で、テレワーク(在宅勤務)を余儀なくされている中、組織のコンプライアンスはどのようなことが問題になるでしょうか。
特に、covid-19へのリスクマネジメント、要配慮個人情報の取得と利用の問題、文書への印鑑の押印問題などを詳しく解説しております。
2.在宅勤務にホテルを利用たときのホテル泊から通勤途中のケガ
新型コロナウイルスのパンデミック時代におけるコンプライアンスの一環の問題として、労務コンプライアンスを取り上げました。
3.新型コロナウイルスに感染したときの個人情報の開示請求について
この場合に、コンプライアンス・リスク管理として、令和4年施行の改正個人情報保護法、情報公開法(同条例)を如何に解すれば、個人情報の開示請求に対応して、ステークホルダーである住民の信頼にこたえるコンプライアンスマネジメントが地方公共団体にできるであろうか。この動画で述べたことは、企業の個人情報開示請求においても多くは当てはまるので参考にされたい。
はじめに
近年、個人情報の開示請求が増加しており、令和4年の個人情報保護法の全面改正以降、従来の「条例中心」から「法中心」の運用へと変化しています。本稿では、代表的な請求事例をもとに、現場対応における法的整理とコンプライアンス上の留意点を解説します。
1. 個人情報開示請求の現状と背景
- 開示請求の増加
個人情報の開示請求件数は年々増加傾向にあり、特に医療・福祉・災害関連情報に対するニーズが高まっています。 - 行政対応の格差と実務的課題
全国的に制度理解が進む一方で、対応にばらつきが見られ、特に初動の案内対応で混乱が生じやすい分野でもあります。迅速かつ適切な窓口対応が信頼構築に直結します。
2. 改正個人情報保護法による一本化とその意義
- 法制度の一本化(令和4年4月施行)
従来、地方公共団体は独自条例で個人情報を保護・運用していましたが、現在は国と地方を通じて「個人情報保護法」に一本化され、地方公共団体もこの法律に基づいて処理することが原則となりました。 - 共通ルールと柔軟運用
条例ではなく「個人情報保護委員会のガイドライン」「政令」などにより、運用の指針が共通化されています。ただし、個別事案では自治体判断による裁量が残る場面もあり、慎重な法解釈が求められます。
3. 実務上の判断が分かれる場面と注意点
- 自己情報請求と第三者情報の分岐
自己の検査履歴や通院情報は「自己情報開示請求」として、迅速かつ正確に対応される必要があります。一方、配偶者や家族等に関する請求は、第三者の権利保護とのバランス判断が必要です。 - “存在・不存在を明かさない”という判断
第三者(例:配偶者)の医療記録など、請求された情報が「あるかどうか」を示すだけでプライバシーを侵害する恐れがある場合、情報の「存否応答拒否」が用いられます。これは、旧条例時代からも議論のあった重要論点です。
・グローマー条項の法理論的基盤
グローマー拒否とは、情報公開制度における概念で、開示請求に対し文書の存否自体を明らかにすることなく当該開示請求を拒否することである。この概念は、1999年に成立した情報公開法8条等で認められており、存否応答拒否とも呼ばれる。配偶者の受診情報に関する開示請求を例に取れば、以下のような場合にグローマー条項の適用が問題となる:産婦人科への受診歴(妊娠の有無の推測可能性)、がん専門病院への受診歴(重篤な疾患の推測可能性)、精神科・心療内科への受診歴(メンタルヘルスの推測可能性)
4. 憲法的人権との関係と高度な判断
- プライバシー権との関係
個人情報は憲法13条に基づく「個人の尊厳」や「自己情報コントロール権」に関わる権利です。開示請求の処理にあたっては、単に形式的な法解釈にとどまらず、人格権との調和が不可欠です。 - 行政判断の質が問われる時代
コンプライアンスは「違反しない」ことではなく、「信頼を創る」ための仕組みです。各自治体における判断が、住民の権利救済・人権尊重に資するものであるか、常に問い直す姿勢が重要です。
5. 事例紹介と実務の対応方針
事例 | 内容 | 該当法令・通達 | 実務上の判断 |
---|---|---|---|
自身のPCR検査歴 | 医療機関での受診情報 | 個人情報保護法(自己情報開示) | 迅速に開示されるべき情報 |
配偶者の入院記録 | 妊娠・精神科治療歴など | 法第28条、ガイドライン等 | グローマー条項(存否応答拒否)検討要 |
死者の情報 | 災害による死亡者名簿など | ガイドライン(死者情報の取り扱い) | 遺族の権利・公共性とのバランス判断 |
6. まとめ:制度理解と人権尊重の両立へ
- 改正法による一本化は「簡略化」ではなく「高度化」
- ガイドライン等による運用指針の共有と実務者研修が重要
- 憲法的視点から「何を守るのか」を明確に
- 開示・非開示の判断が信頼構築と直結する時代
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