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中川総合法務オフィスが運営する相続おもいやり相談室は、これまで京都・大阪を中心に1000件を超える相続無料相談を実施し、多くのご家庭の相続問題を解決に導いてきました。遺言作成や遺産分割協議書作成など、豊富な実績を持つ相続の専門家として、皆様の「おもいやり」を大切にした相続をサポートいたします。

本記事では、遺産分割協議を円滑に進めるための具体的な方法から、万が一揉めてしまった場合の調停・審判・訴訟といった法的手続きまで、実際の判例を交えながら詳しく解説します。


1.遺産分割協議の揉めない進め方

遺産分割協議は、相続人全員の合意に基づいて遺産を分割する重要な手続きです。円満に、そして故人の意思を尊重して進めるためには、いくつかのポイントがあります。

(1) 遺産分割協議の当事者

遺産分割協議に参加できるのは、原則として共同相続人、包括受遺者、相続分の譲受人、そして遺言執行者です。しかし、状況によっては特別な対応が必要となるケースもあります。

  • 行方不明者がいる場合:家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、その許可を得て協議に参加します(民法第25条、第28条参照)。
  • 胎児がいる場合:胎児は相続においては既に生まれたものとみなされますが、遺産分割協議は出産を待ってから行うのが一般的です。
  • 相続開始後に認知された相続人がいる場合:相続開始後に遺言による認知や死後認知の訴えによって相続人となった者がいる場合、民法第910条により、他の共同相続人が既に遺産の分割や処分を済ませていたとしても、その価額に相当する金銭の支払いを請求する権利を有します。ただし、母の死亡による相続において、子の存在が遺産分割後に明らかになった場合、第910条の類推適用は認められないとされています(最高裁昭和54年3月23日判決)。

(2) 遺産分割自由の原則

遺産分割協議は、当事者全員の合意があれば、法定相続分や遺言の内容に反する分割も可能です。これは判例実務でも認められています。

しかし、この「自由」がゆえに、全員が強く自己主張をすると協議がまとまらなくなることがあります。かといって、黙っていると、声の大きい人やエゴの強い人の意見が通ってしまい、故人の遺志から外れることも少なくありません。相続人としては、最低限の公正な主張をすることが重要です。

相続おもいやり相談室では、このような状況で「9割納得すれば署名押印されたらどうか」と常々お勧めしています。なぜなら、完璧な合意を目指すと、往々にして協議は長期化し、精神的な負担も大きくなるからです。故人の財産であるにもかかわらず、不労所得のように当てにする方がいるという残念な実情も存在します。苦渋の中で実務は毎日進行しているのです。

(3) 遺産分割協議の瑕疵と詐害行為

遺産分割協議に基づく合意も、他の法律行為と同様に意思表示の合致が必要です。そのため、錯誤などの民法の意思表示に関する規定が適用される可能性があります。

  • 遺言の存在を知らなかった場合遺言の存在を知らずに、その趣旨と異なる遺産分割協議の意思表示がなされた場合、もし遺言を知っていれば同様の意思表示をしなかった蓋然性が極めて高いときには、要素の錯誤がなかったとはいえないと判断されることがあります(最高裁平成5年12月16日判決)。
  • 詐害行為取消権の対象:共同相続人間で成立した遺産分割協議は、相続開始によって共同相続人の共有となった相続財産の帰属を確定させるものです。その性質上、財産権を目的とする法律行為といえるため、詐害行為取消権の対象となり得るとされています(最高裁平成11年6月11日判決、民集53-5-898)。

(4) 遺産分割協議の解除

一度成立した遺産分割協議を解除することはできるのでしょうか。

  • 債務不履行による解除の否定:共同相続人間で遺産分割協議が成立し、相続人の一人がその協議において負担した債務を履行しない場合であっても、その債権を有する相続人は、民法第541条(債務不履行による解除)によって当該協議を解除することはできないとされています(最高裁平成元年2月9日判決、民集43-2-1)。これは、遺産分割協議の性質上、債務不履行による解除は馴染まないという考え方に基づいています。
  • 全員の合意による解除と再度の協議:一方で、共同相続人は、既に成立している遺産分割協議について、その全部または一部を全員の合意により解除した上で、改めて分割協議を成立させることができるとされています(最高裁平成2年9月27日判決、民集44-6-995)。この判例からわかるように、解除条件や約定解除権を遺産分割協議に盛り込むことも可能です。遺産分割に最終期限がないという考え方は、この点からも裏付けられます。

2.遺産分割の具体的方法

遺産分割は、共同相続における遺産の共有関係を解消し、個々の財産を各相続人に分配する手続きです。その方法は多岐にわたります。

(1) 遺産分割の開始

遺産分割には、主に以下の方法があります。

  • 現物分割:遺産をそのままの形で各相続人に配分する方法です。例えば、土地はAに、家屋はBに、現金はCにといった形で分割します。
  • 換価分割:遺産を売却し、その代金を各相続人で分配する方法です。当職の経験では、遺言執行の現場でこの換価分割が最も多く用いられています。
  • 代償分割:特定の相続人が遺産を取得し、その代わりに他の相続人に対して、その具体的な相続分に応じて金銭などを支払う方法です。

これらの分割方法が困難な場合、遺産が共有関係になることもありますが、一般的に共有関係は一時的な措置であり、将来的には解消すべきものです。そのため、できる限り共有を避けるのが賢明でしょう。

被相続人は、遺言で遺産の分割方法を指定することも可能です。しかし、共同相続人全員の合意があれば、遺言と異なる遺産分割を行うことも認められています。

民法第906条では、遺産の分割は、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮して行われるべきと定めています。これは、単に法定相続分通りに分けるだけでなく、個々の事情に応じた柔軟な分割を促すものです。

(2) 遺産分割の時期

遺産分割は、遺産分割の禁止が設定されていない限り、いつでも可能です。

民法第907条では、共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部または一部の分割をすることができると規定しています。協議が調わない場合や協議ができない場合は、各共同相続人は家庭裁判所にその全部または一部の分割を請求できます。

ただし、遺産の一部を分割することによって他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合は、一部の分割は認められません。また、特別な事由がある場合、家庭裁判所は期間を定めて遺産の全部または一部の分割を禁じることができます。

民法第908条では、被相続人は遺言で遺産の分割方法を定めたり、第三者に委託したり、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁じたりすることができます。この他、共同相続人全員の合意によって遺産分割を禁止することも可能です。

民法第256条(共有物の分割請求)も同様に、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できるとしていますが、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げないとしています。

(3) 遺産分割手続き

遺産分割手続きは、以下の基本的な流れに沿って進められます。

  1. 相続人の範囲および相続分の確定:誰が相続人であるか、そしてそれぞれの相続分はどのくらいかを明確にします。
  2. 遺産の範囲の確定:被相続人が残した財産(プラスの財産とマイナスの財産)をすべて洗い出します。
  3. 遺産の評価:不動産や有価証券など、個々の遺産を評価します。
  4. 特別受益者とその額の確定:特定の相続人が生前に被相続人から受けた特別受益(贈与など)の有無と金額を確認します。
  5. 寄与相続人と寄与分の確定:被相続人の財産形成や維持に特別に貢献した相続人(寄与相続人)がいる場合、その寄与分を評価します。
  6. 特別受益および寄与分を踏まえた相続開始時における具体的相続分の確定:法定相続分を特別受益や寄与分で修正し、各相続人の具体的な相続分を算出します。
  7. 具体的相続分の割合に基づく遺産分割時における遺産分割取得分額の産出:算出された相続分に基づいて、各相続人が取得する遺産額を決定します。
  8. 具体的な遺産分割の決定:上記の情報を踏まえ、具体的な遺産分割の方法(現物分割、換価分割、代償分割など)を決定します。

(4) 一人でできる預金口座の調査

被相続人の家屋や現金・通帳を事実上管理している相続人がいる場合、他の相続人がその正確な額を知ることが難しいケースがあります。特に現金はその傾向が強いです。

しかし、預金については、以下の二つの最高裁判決によって、他の相続人も預金口座の取引経過を知ることができるようになりました。

  • 共同相続人による預金口座取引経過開示請求権預金者の共同相続人の一人は、他の共同相続人全員の同意がない場合であっても、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使できるとされています(最高裁平成21年1月22日判決、民集63-1-228)。これにより、相続人であれば単独で金融機関に預金口座の取引履歴の開示を求めることが可能です。
  • 金融機関の守秘義務と取引明細書提出義務顧客の取引明細書について、金融機関の守秘義務の対象とならない場合には、提出義務が認められるとされています(最高裁平成19年12月11日決定、民集61-9-3364)。共同相続人が預金の不正な引き出しなどを疑う場合、不法行為による損害賠償訴訟を提起することで、その疑わしい相続人の預金口座の取引履歴を知ることも可能になります。

3.調停・審判による分割、訴訟で分割

遺産分割協議がまとまらない場合でも、解決への道は閉ざされていません。家庭裁判所での手続きや訴訟によって、最終的な解決を目指すことができます。

(1) 調停・審判による分割

遺産分割協議が困難な場合、通常は調停を先行させます(家事事件手続法第274条、第244条参照)。調停は、裁判官と調停委員が間に入り、相続人同士の話し合いを促進することで、円満な解決を目指す手続きです。近年、遺産分割に関する調停の申立件数は増加傾向にあり、2011年には11,724件に上っています。

調停が不成立に終わった場合や、そもそも調停になじまないケース(例えば、相続人の範囲や具体的な相続分について争いがある場合など)では、審判に移行します。審判では、家庭裁判所が事実関係を調査し、一切の事情を考慮して遺産分割の方法を決定します。審判の件数も2011年には2,305件と増加傾向にあります。ただし、審判の前提問題(相続資格の有無など)に関する判断には、確定判決と同様の効力(既判力)はありません。

遺産分割調停・審判の申立権者は遺産分割の当事者ですが、高裁判例の中には、遺産分割請求権が債権者代位権の対象になるとしたものもあります。

(2) 訴訟で分割

調停も審判も、基本的には当事者の合意形成を促す手続きです。しかし、当事者がこれを拒絶し、どうしても合意に至らない場合は、訴訟によって国家権力による強制的な解決を図ることになります。

訴訟は、調停や審判に比べて費用と時間、そして労力がかなり負担になります。さらに、訴訟では、原則として法定相続分での決着になることが多いです。この点をすべての当事者が理解すれば、相続おもいやり相談室で常に申し上げているように、協議の段階で9割納得できれば判を押すべきだという結論に至るでしょう。


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