内部統制の理論、実務及び人生経験の3拍子揃ったレクチャー
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■はじめに
令和2年4月1日に内部統制が地方公共団体に導入されてすでに3巡目、4巡目に入っている。評価報告書も、2件目、3件目が完成し公表され、また議会提出の上で住民にも公表される。
47都道府県と20指定都市は、地方自治法150条で義務的だが、堺市の監査委員の評価報告書への意見にもあるように、対象は財務のみのところから網羅的な地方公共団体事務迄様々であるが、財務のみでは物足りなさを感じることが多い。
「財務」が対象、「財務と情報管理」が対象等と言っても、殆どの住民は全体としてかなりのコストをかけてやっていて、
何のミスが減っているのか、
何の不祥事が減っているのか、
何の法令違反がなくなっているのか
という効果を感じているのかどうか。
コンプライアンスの本質は、究極的には住民目線にある。現場でのリスク管理ができていることをハッキリ示すメリハリの利いたコストベネフィットが明瞭な報告書が最も今期待される。そのためには、3つのデフェンスライン等の最新のリスクマネジメントセオリーと心理的安全性のある職場の構築などが不可欠で、分かり易い内部統制・コンプライアンス態勢を地方公共団体は構築する必要があろう。この仕組みの最大の狙いは、現場のリスクオーナーのリーダーシップ力量向上であることは、大阪の現場改善例を見れば明らかで、中核市等の先進例も含めそこに集中する必要がある。なお、ガバナンスにも触れるが、主として立法論になる。
(1)内部統制の理論
内部統制の理論、コンプライアンスの理論、リスクマネジメントの理論、そしてガバナンスの理論もこの20年、特にこの10年ほどで本当に進化した。平成10年頃に会社法の改正案が出たころと今では随分と様相が違ってきている。1992年COSOレポートが日本社会に浸透し始めて、大蔵省(2001年1月7日からは財務省と金融庁)が銀行への行政指導にコンプライアンスを使い始めた当時と隔世の感がある。
また、内部統制に関するCOSOそのものも進化した。ERMに至っては、もうCUBEでなくてDNA類似モデルになっている(2017年バージョン)。リスクマネジメントに関するISO31000も2018年バージョンの時代だ。
このような進化した理論を、組織に実装しない企業はもうはや国際競争では後塵を拝することになっている。金融庁は2023年度からはコーポレートガバナンスも実質化の時代に入ったと言っている。
上場企業のソフトロー、日本取引所のコーポレートガバナンス・コードも欧米に追い付け追い越せとばかりに、社外取締役は当たり前のこと、多種のステークホルダーとの会話を求め、特に所謂「物言う株主」と向かい合って対話せよと言っている。かっての総会屋時代と全く逆のことを言い始めているのだ。
その社会情勢の変化にインスパイアされて焦り始めていた総務省が、何度も会社法等の改正後に地方公共団体に内部統制・コンプライアンス・リスクマネジメントを導入しようとして平成合併後の課題として、地方制度調査会、審議会等で東大のトップ行政法の学者(碓井 光明、小早川光郎等)にリードさせて、地方公共団体内部統制レポートが出た。碓井教授のものがもっとも総合的で優れている。『内部統制による地方公共団体の組織マネジメント改革~信頼される地方公共団体を目指して~平成21 年3月 地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会』である。そこから、一部の先進的地方公共団体(例えば兵庫県播磨地区、名古屋を除く東海地区一部)の内部統制導入が始まった。
COSO理論を踏まえて、大蔵省の審議会で「日本版COSO」も公表され、そこへCOSOの中核であるリスクマネジメントに関するISO31000理論が加わって、一気に地方公共団体における内部統制、その目的であるコンプライアンス、その実質化であるリスクマネジメント、その根底である公務員倫理と理論が出来上がり、そこへさらに現代コンプライアンス理論が登場して、所謂リスク系理論が深まったのであり、代表はそれらを母校大学院で深くこもって研究して、かみ砕いて研修や講演で話すようになったのである。最近は、NTTドコモ本社役員研修でも都道府県管理職研修でも、他の地方公共団体等研修でも感想は「新鮮である」が多数である。探求した最前線の理論だから。
(2)内部統制の実務
なるほど、上場企業では組織のガバナンスについてはコーポレートガバナンス・コード対象企業が3,868社(2023年2月1日現在)で、会社全体のわずか0.1%弱である。金融商品取引法の対象は上場企業であるから、それらはその規定の内部統制の適用がある。しかし、株式会社であれば、会社法の適用があるわけで、会社法にはガバナンスの仕組み、内部統制の仕組み、コンプライアンスの遵守、リスクマネジメント等の規定がある。
そうすると、如何なる会社の規模であっても、上記の理論をどのように組織に当てはめていくかの議論は必要になろう。実際、最近の企業からの依頼は小さくも前向きな企業からコンプライアンス研修の依頼が増えてきている。
これは、上記の地方公共団体の法改正の動きと連動している。ついに、自治体実務でも地方自治法150条で、二段階制内部統制が導入されたのだ。小早川案である。47都道府県と20指定都市は義務的、その他の約1700地方公共団体は努力義務として、内部統制を第9章財務優先でやることになった。
しかし、肝要なのは、名古屋市や静岡市での内部統制導入効果を見ればわかる通り、ミスや不祥事がどれだか減ってきたかの実証的立場であろう。減っているのか。監査委員の指摘はどうなのか。議会の質疑応答ではどうなのかであろう。何よりも、住民が助かっているかである、内部統制導入で。
(3)内部統制に関連した人生経験
大阪で、5億円の売り上げの会社を苦心惨憺15億円になるまで死に物狂いで働いた。平社員から入って、事業本部長 取締役になるまでに、元旦以外ほぼ休まずに。ところが、上場企業に買収された。株を持っていなかった当職は買収時に一円も入いらい事が分り、一気に100年の恋も冷め、同志とともに会社を去った。その上場会社がまずわが社に強制してきたのが内部統制、コンプライアンス等の構築と徹底的な社員教育である。五月蝿いほどであった。なるほど、時代の要請であった。ちょうど、COSOレポート1992年版が広まってきて、会社法の内部統制やコンプライアンス規定が普及してきた頃であったが、いまや内部統制、コンプライアンス、リスクマネジメント等は当たり前の時代である。そこに、サスティナブル経営も加わり、地方公共団体でも、地方自治法の法改正で内部統制の明文規定が入ったのである。
しかしながら、組織はいくら新しいマネジメント理論が入っても、AI等のツールが進歩しても、人が動かすことには変わりない。人と人との関係は倫理である。如何なる秩序で組織を作っていくかは如何なる人間関係で作っていくかと同義である。ピラミッド式であろうとフラットな組織であろうと関係がない。上に立つ、下で使われる、支配する、支配される、協働する、連携する、対立する等。それらの人生経験がコンプライアンス等のような人間に深くかかわる場面ではとても大切である。それが指導するものにあるかどうかが決定的である。公式ページ等で経歴を参照されたい。
事例を豊富に取り入れた考える実践的研修
理論を出来るだけわかりやすくしかも短い言葉で伝え地方公共団体不祥事の事例を研修対象組織にフィットした内容で取り上げて研修する。そもそも、国が内部統制を入れたのは、もはや放置できないほどの地方公共団体の不祥事、特に金が絡む財務関係の不祥事が減少しないからである。一体どんな不祥事があるのか。研修で当職は、12類型で示している。その不祥事再発防止策を丁寧に説明する。これまでの、数多くの研修ではこれが最も効果的である。ただ研修を高満足度にするためにゲーム理論や演出に拘ることはない。低俗な満足ではなく、高い実践的に役だった満足をこれまでもこれからも当職は目指している。
蛇足ながら、現在は1回200万円をもらっていない研修であっても、当職は受講者の心に永久に輝く研修の場を設定している。厳しい態度で研修に臨む当職を関西のある県庁や指定都市は大層煙たく感じるようである。真剣にやればそうなるのではないか。ミュンヘンオリンピック時の全日本高校選抜選手であった当職は合宿などではぶっ倒れるまで練習した。その成果があって、トップはオリンピックで金メダルを取ったのではないか。住民や国民の貴重な税金等を使って当職を呼んでいるのではないか。
下記は、拙著である『公務員の教科書「道徳編」』(ぎょうせい)は出版戦略から名前はシリーズものになっているが、地方公共団体のコンプライアンス・リスクマネジメントの基本的著書である。実際に大きな不祥事が発生した団体等でコンプライアンス委員会の指定図書や推薦図書になっているので参照されたい。
中川総合法務オフィスの地方公共団体の内部統制研修内容
内部統制が執行機関の基本的な枠組みでプロセスであり、コンプライアンスは現代社会において、組織体の基本であることはどんなに新しい理論が出てきても変わらないであろう。地方公共団体の運営において、いかなる場合もルールを守る。公務員倫理に基づいて行動する。さらに法令遵守、公務員倫理を守るだけではなく、地方公共団体の活動がいかなる影響を社会に与えるかを考えて行動する。今日では、これをコンダクト・リスク管理と言う。公務員は職業倫理の基礎にあるintegrityの涵養に努める。他の地方公共団体不祥事を他山の石として学ぶ事等が最重要である。主な項目を挙げると
(1)【内部統制に関する改正地自法150条 その1/8】地方公共団体の内部統制2017…第31次地方制度調査会答申を踏まえて
(2)【内部統制に関する改正地自法150条 その2/8】地方公共団体の内部統制の進め方(大規模自治体と中小自治体のそれぞれの方法)
(3)【内部統制に関する改正地自法150条 その3/8】地方公共団体の内部統制…内部統制法案の内容…不祥事件は首長の責任明確化等
(4)【内部統制に関する改正地自法150条 その4/8】地方公共団体の内部統制…日経スクープの地方公共団体の内部統制法案が第193回国会でついに成立 施行はH32/4/1
(5)【内部統制に関する改正地自法150条 その5/8】地方公共団体の内部統制…改正法内容の4つの重要事項を国から地方自治体へ通知
(6)【内部統制に関する改正地自法150条 その6/8】地方公共団体の内部統制…実例として姫路市の「リスク管理手順書」と「リスク点検シート」ツールの有効性
(7)【内部統制に関する改正地自法150条 その7/8】地方公共団体の内部統制…地方公共団体の内部統制は企業と同じでいい訳がない
(8)【内部統制に関する改正地自法150条 その8/8】地方公共団体の内部統制…地方公共団体は、内部統制を具体的にどのように進めていけばいいのか。
(9)内部統制導入によって直接的影響を受ける部署…監査部門(監査委員の監査事務局・内部監査部署等)
(10)こんなに変わる職員の業務の仕方と損害賠償責任の軽減化
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