地方公務員には、利害関係者等との規律を定めた国家公務員倫理法や国家公務員倫理規程の適用はあるか

1.地方公務員には、国家公務員倫理法や国家公務員倫理規程の適用はあるか

地方公務員倫理法」という法律はないが、それでは地方公務員には、「国家公務員倫理法」や「国家公務員倫理規程」の適用はあるのであろうか。―

(1)公務員倫理の必要性

地方公務員には、国家公務員と同じように「公務員倫理」が必要であることは、地方公共団体のガバナンスやコンプライアンスの観点から必要であることは異論はないであろう。

それでは、地方公務員には、国家公務員倫理法や国家公務員倫理規程の適用はあるのであろうか。

すでに、平成12年に同法と同規程ができてから20年以上が経過している。

まずはこの法の内容を俯瞰する。

(2)国家公務員倫理法の内容

1 職員が遵守すべき職務に係る倫理原則

○ 国民全体の奉仕者であることを自覚し、公正な職務執行に当たらなければならない。

○ 職務や地位を私的利益のために用いてはならない。

○ 国民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。

(3)国家公務員倫理規程の内容

○ 内閣は、国家公務員倫理審査会の意見に基づき、国家公務員倫理規程(政令)を制定。

○ 倫理規程には、職員の職務に利害関係を有する者からの贈与等の禁止及び制限等、職員の職務に利害関係を有する者との接触その他国民の疑惑や不信を招くような行為の防止に関し、職員の遵守すべき事項が含まれていなければならない。

3 贈与等の報告及び閲覧

○ 本省課長補佐級以上の職員は、事業者等から1件5千円を超える贈与等又は報酬の支払を受けたときは、贈与等報告書を各省各庁の長等に提出。何人も、1件2万円を超える部分の閲覧を請求可能。

○ 本省審議官級以上の職員は、株取引等報告書及び所得等報告書を各省各庁の長等に提出。

4 国家公務員倫理審査会

以下略

2.地方公務員にも倫理法が必要でないか

(1)地方公務員倫理法という法律はない

国家公務員倫理法等はこのようになっているのであるが、問題は「利害関係」の難しさがあろう。

地方であれば、一律に適用すれば地域社会が成り立たなくこともあろう。

しかしながら、国家公務員は同法のできてから違反事例などの公表などもなされて、公務員倫理の維持に効果を上げているのであるが、地方公務員における不祥事の多発を見ると、同法のような「地方公務員倫理法・同規程」が必要な段階に来ているのでなかろうか。

(2)国家公務員倫理法の地方へのメッセージ

もっとも、法43条は、地方公共団体等の講ずる施策として

「地方公共団体…は、この法律の規定に基づく国…の施策に準じて、地方公務員の職務に係る倫理の保持のために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」

とあるが。

(3)公務員倫理研修は大切

公務員倫理の徹底を図る方法として「公務員倫理研修」も有効である。

中川総合法務オフィスでは、公務員倫理研修だけで200回を超える講師担当を全国の自治体でしているが、その「公務員倫理研修」の内容、や「地方公共団体のコンプライアンス研修」内容はこのサイトにも一部公開している。

近時は、地方公共団体におけるにおける個人情報の内部統制(リスク管理)・コンプライアンスと公務員倫理といったマイナンバーも含めた公務員倫理が大切になってきている。

ただ、業者のテキスト読み講師による研修が多く、税金の無駄使いである。やらない方がましでなくてそんなお任せ研修はやってはいけない。

(5)地方公務員の契約職員を会計年度任用職員へ変更する地方公務員法改正と公務員倫理研修

さらに気になることがあるが、この重要改正である。

なぜ、公務員倫理研修やコンプライアンス研修には、非常勤の職員が参加しないのであろうか。

地方の小さな町村では参加することもあるが、他ではほとんど参加はない。

当たり前であるが、非常勤職員もれっきとした「地方公務員」なのである。

3号職員もそうである。

もっとも、特別職に地方公務員法が原則不適用であるが大きな問題で、服務規程は契約になっているのであろう。

或いは全く配慮していない地方公共団体もあるのでないか。

この問題は一部の地方公共団体で慌てているように、後ろめたさがかなり大きいのでなかろうか。

身近な差別は人権侵害であろう。

よくよく考えてほしい。

※会計年度任用職員制度等は、このサイトの別稿参照。

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