大声をあげて不当な要求をしたり、電話で長々と文句を言うクレーマーへの対応方法

1.○○役所に来て大声をあげて不当な要求をしたり、電話で長々と文句を言う人に対して、行政はどのように対応すればいいか。

ここで問題になっているのは、暴行や脅迫のない限りは業務妨害罪の問題になる。刑法の233条と234条である。この点は企業でも同じことである。

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(信用毀損及び業務妨害)
第233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

(威力業務妨害)
第234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
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(1)役所の業務の円滑な執行を妨げられたかどうかが判断基準

判例によれば、ここで、「威力」とは、犯人の威勢、人数及び四囲の状勢から見て、被害者の自由意思を制圧するに足りる勢力をいい、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要しない(最判昭28・1・30)。

また、一定の行為の必然的結果として、人の意思を制圧するような勢力が用いられれば足り、必ずしもそれが直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要しない(最判昭32・2・21)としている。

大審院時代の有名な判例に、「営業中の満員の食堂で、蛇数十匹を配膳部に向かってまき散らし、大混乱に陥れたとき」(大判昭7・10・10刑集11-1519)この犯罪が成立するとしたものがある。ちょっと極端なケースであるが。

現代では行政に対するものでは、

・大声を上げて仕事がきわめてやりづらくなった場合や

・長時間にわたって電話をしてきて業務ができない

ということになればそこで犯罪が成立する可能性があり、警察に通報して構わない。

行政は法に基づいて業務を執行する機関だから、その法を執行できなくなるのであれば相手方に業務妨害罪が成立する可能性が高い。

(2)妨害に至らない場合は説得するしかない

しかし、そこまでの違反行為がなくて法に違反していないような相手に対しては、任意に説得して、それでも帰らないとか電話を切らないということにならないと業務妨害罪は成立しない。

一定の負担行為はこのクレーム社会の中では行政も避けられない。昔とは違う。

業務妨害罪が成立しないのであれば中止を説得をするしかない。

殊に、執拗な電話に対しては 、本当の事情を踏まえたうえで

『〇〇時から、会議がありますので・・・』
『〇〇時から、人に会う約束となっておりますから・・・』
『前回と同様の話でしたら、切らせていただきます。』
『以前からお話は伺っておりますが、 〇〇はできませんので、電話を切らせていただきます。』
『結論は変わりません。職務に影響がありますので切らせていただきます。』

等の言葉で電話を切るしかなかろう。

この時に相手がさらに電話をして来れば、業務妨害罪になる可能性が高くなる。

ハメるわけではないが、悪質クレームについては止むをえない。

(3)不退去罪の成立する場合

また、役所は公的な場として一般の人が自由に出入りできるから、住居侵入罪や不退去罪は成立が困難であろう。

しかし、ごく最近の事例であるが、悪質クレーマーが行政の方から再三退去を求められたのに退去しなかった場合に警察が現行犯逮捕した例があった。

これは、やり方が難しい面があるが、一応参考になる。

(4)威力妨害罪が成立した判例

●生産管理として、多数の威力をもって会社の事業の経営を排除したとき(最判昭27・2・22)

また、有罪になった例で2006年6月1日東京新聞

●卒業式での『君が代』斉唱に反対し不起立を呼び掛けた高校教諭

または、最近多いのが

● 悪戯目的で電子掲示板やウィキサイトなどに「○○駅に爆弾を仕掛けた」「○○の小学生を殺す」「学校に爆弾を仕掛けた」などと(虚偽の)犯罪予告を匿名で書き込み、あるいは電話をする

がある。

(5)集団での面会などの強要については「暴力行為等処罰ニ関スル法律」第2条2項がある。

第2条 財産上不正ノ利益ヲ得又ハ得シムル目的ヲ以テ第1条ノ方法ニ依リ面会ヲ強請シ又ハ強談威迫ノ行為ヲ為シタル者ハ1年以下ノ懲役又ハ10万円以下ノ罰金ニ処ス
2 常習トシテ故ナク面会ヲ強請シ又ハ強談威迫ノ行為ヲ為シタル者ノ罰亦前項ニ同ジ。

以上が、悪質クレーマーへの法的対応方法である。

2.クレーム対応は、マネジメントの視点が重要

忘れてならないのは、法的対応は最後の手段であることである。

別稿を参考にして、クレーマーへの初期対応を含めた対処方法を参考にしてほしい。

ステークホルダーの信頼を考えたコンプライアンスの観点が極めて重要なのである。

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