行政へのクレーム・不当要求・反社会的勢力への対応の標準化・マニュアル化の必要性について

1.令和におけるクレーム対応のコンプライアンス的対応について

 クレーマーとか、苦情を言ってくる方、不当要求も含めて、それに対する対応の仕方について、コンプライアンス尊重の立場から再論したい。

クレーム対応は、コンダクト・リスクそのものであり、コンプライアンス・リスク管理の一環であろう。

先ごろ、消費者庁の方で、「対応困難者への相談対応標準マニュアル」公表が下記のようにあった。

シンプルで使いやすい。これを基本に、行政分野なども対応マニュアルを作成できるであろう。

 また、民間企業でも日常的に苦しんでいる不当要求とかクレーマーとか、対応の困難な反社会的勢力等も基本ラインはこれでいいであろうが、よりそれぞれの特有のクレーム発生の仕方があるので応用化は絶対に必要であろう。

 暴力や権力も含めて力のある者が、ごり押ししようとする場合への対応。毎日のように苦しんでいるところもあろうクレーマーに対する対応の仕方、みんな苦しんでるわけで、暴力を振るうとか怪我をさせるとかいうことであればそこにすぐに刑事事件として警察が間に入ってその人たちを排除してくれる、逮捕したり、拘束したりしてくれるけども、そういうところになかなかいかない場合が多々ある。それが所謂クレームである。

 このような場合にその現場でクレーマーとのやり取りをしながら、自分たちの組織とかその商売、やってるの商売を守るとかいうことが必要になってくる。行政機関であれば行政運営に差しさわりが出ないように、そういう人たちに対する対応が非常に重要になってきてる。

 これは統計があるかもしれないが、私のようなある程度年配の者の実感として、私はやっぱり若い頃は少しぐらいちょっとクレームを言ってもいいなというような場合にもやっぱり普通は言わなかった。しかし令和時代の今は違う。現代社会の特徴はやっぱりあるであろうか。ハードクレーマーがあっちこっちで増えてる、色々経済活動するにあたってこのような対応で結構時間がとられる、公的な組織が業務の運営をするにあたって対応で結構時間が取られている。

 そのような中で、先ほど申し上げた消費者庁はいろんな意見を聞きながらマニュアルをまとめた。地方公共団体からのアンケート返答も参考にしている。また、東京都の地方公共団体でクレーム対応研修の講師もしている横山雅文弁護士も下記のマニュアル化に参加している。

2.クレーム対応マニュアル

ポイント三つで、一番目が初期対応の重要性ということ。

2番目は初期対応がもう終わって相談終了後の流れ、典型的には不当要求者であれば相談を早く終了させるということが必要になってくる、まあ30分ぐらいが目安じゃないかと、同じことを繰り返して言ってきたり罵詈雑言が始まる、そういうことを言うというような場合においてはまあざっくり30分ぐらいだと。私も経験上時間的にそんなものかと思う 。

※「対応困難者への相談対応標準マニュアル」について公表しました。‥消費者庁HPより引用

 エスカレーションとか言うが、上司を出せと言うな時には上司に引き継いだりあるいは同僚に引き継いだりするということが必要になってくる。

 現代は、厳しい「ストレス社会」である。明らかに経済的な成長も遅いし、おまけに令和になったとたんコロナが流行ってきてそしてあっちこっちですごいストレスが出てきて、若い人の自殺が異常に増えてる、若い人だけじゃないが、全体的には私らの世代も含めて危ない状況になってきてる。

 そこで、組織的に対応するということ、組織であれば、だれか一人に負担かけてその人が更にストレス抱えてる中でそういう仕事を担当して、さらにストレスをかけてしまえば、余裕の気持ちがなくなるということ、この辺の所をちょっと考えなあかん時代に来てるので、複数のもので対応するということは大切である。

 私が研修講師になりたての頃に見聞した事例が鮮烈であって、誰が見ても、精神面でも能力面でも知性の面でさえも優れた人間が、反社会的なものとの対応をして、やっぱり半年ぐらいでもちょっとこれ駄目になってしまい、うつ病になって仕事辞めちゃった。

 かなり優秀でスポーツマンで、ストレスにも強いものでも、クレーマーというある意味専門的な連中から攻撃されると、非常に傍若無人な悪事に長けた人間、悪い人間、その輩にはなかなか耐えれるものではない。

 学校現場とかでもそういう悪が居るといじめられて子供たちが死んだりしている。そういう人間がいるからそういう連中に対して誠実に時間をかけて対応する必要はないわけである。これは一種の悪い権力者みたいなもので、そういう方たちに対しては組織的に対応する。これが、三つ目である。

3.クレーム対応研修でいつも話すこと等

最後に、4番目としてちょっとこれは別なんであるが、日常的にやるべきこととして相談員のメンタルケアとかロールプレイとか研修とかやっといた方がいいよということである。

クレーム対応の生まれつきうまい方は居ないであろうが、素質的にうまくやれる人もいるのは事実であろう。

しかし、やはりなかなかその辺はうまくいかない。ちょっと隙があればさっき言ったクレイマー、クレームにより慣れてる人間で相手をやっつけてしまえるような喋り方とか、反社会的勢力をバックに、暴力的な友達にとか、匂わせてやることに対してはやっぱりなかなかその日常的な対応っていうのは難しいんで、かなり練習しといて研修とかロールプレイやって練習しないと、そうしないとなかなか対応は困難だという風に思う。

 私も大阪で民間企業に勤務していた時に、クレーマーに何回も遭遇したし、いわば準反社会的勢力との対応で苦しんだこともあり、そういうような経験がある人間の話を聞かないと、理屈だけで喋ってもらって気分はいいかもしれないけど、話し上手で雰囲気のいい講師の言い方や面白おかしく話す、そういうようなクレームの先生の話聞くのは気分がいいかもしれないけども、やはり肝心なとこで本当に役に立つかというと難しいと思う。

 つまり実際に経験してる人間の話、やっぱりちょっと違うと思う。もっとも経験だけの話では駄目だけど。理論と経験を踏まえた話を聞く必要があると思う。

 よく経験たっぷりで、企業のクレーム対応の部署にいた方など、「マニュアルなんて必要ない」という講師もいるが、コンプライアンスの不祥事対応でも、結構いる。それらの方は、じゃ何のための本を書いたり話したりしているのかさっぱりわからない。話が面白ければいいというものではないであろう。映画やドラマじゃないのだから。

 寧ろ、クレーム対応の理論的なところはかなり煮詰めとく必要があろう。熟慮が必要である。こういう風な時は交代をするとか、基本的な対応の仕方はこうであるとか、クレーマーにはこういうタイプの人がいるとか、基礎的な知識を持ったうえで、しっかり踏まえた上でこれを臨機応変に対応する、基礎の上の応用がある、それに基づいてマニュアル作ってそしてそれで対応する必要があろう。

 マニュアルどおりにならなくても、マニュアルの過程で机上でも実践しているわけでマニュアルを作っておくということは悪い事ではない。先ごろの、東日本大震災(2011/3/11)でのディズニーランド等の事例は皆さんもご存じあろう。

 例えば、初期対応のところはこれは何と言っても個別具体的は予期しない話が出てきても、メモ取りながらしっかりと話しを聞くと、そこでの相槌の打ち方などは有った方がいい。

 また、いきなり最初から、ちょっと相手が怒ってるんであれば、何かしらのこちらに落ち度があるかもしれないんで、限定した謝罪で、「何か迷惑をおかけしてるみたいですいません」って言う、これはアメリカ社会の弁護士社会でも今ではそういうものがあるようで、「すいません」と言ったから責任を認めたことにはならない、SORRY法というのが今日はほぼ常識になってきてる。だから別に謝っても構わんと思う。ただ揚げ足をとってくる可能性はあるから、限定的な謝罪にしといた方がいいと思う。

 また、外見上は態度の悪い人とかそれから過去にもクレーム言ってきたとか、まあいろいろとその相手は見てくれから先入観持ってしまい、しばしばそう思い込んでしまうことが人は非常に強いところあり、先入観を持たないのでやる。

 相手が興奮してるとこっちも興奮するまたは感情的になり、言葉にナーバスになってくるが、ちょっと難しいかもしれんけど平常心で対応していくということ、丁寧に相手の話を聞くことが初期の対応の全てであるから、何を言いたいのかということ、謝罪しろって言ってんのか単にその相手に意見を言いたいだけなのか、それとも何か強要しようとしてんのか、何を相手が言っているかってことしっかり聞く。これは大事で、これがちゃんと出来ればそれで9割方終わり、ざっくり言うと。

 最初の段階で、これはもう全く対応できないことはできないと、言いにくいんだけど、率直に伝えた方がいいこともかなり大切だろう。変な期待を持たせない。ストレートに言いにくかったらそれに近い言葉でも構わんと思うけどね。そういうことはちょっと普通はやりませんとか、できません、それは出来ないってこと、ある程度納得するっていうか、まあ感じるという風にして。それから相談者が知識が多い場合と少ない場合はあり、この前研修先の相談で、その組織を退職した人間が組織に対してクレームに来ると、こうなってくるとまあその元組織の人間だったのでやたらと詳しいわけだ。

 そういう元職員が元業界人間のような方への説明の仕方と全然知識のない一般の方であればかなり詳しく説明せなあかんし、説得も困難を極める。ここはポイントでろう。

 いずれにしろ全然受け入られなことを言ってくるのであればもうこれで終了させるしかないと決断するしかない。相手が納得してくれないってわかったとき、例えば同じことの繰り返し堂々巡りになるそれから罵詈雑言で相手のことをボロクソに言うとこうなれば、終わらせる方向に舵をきってとなろう。30分ぐらいも同じことを聞いて繰り返しになった、受付であろうと電話であろうともう終わりますということで終了させる。繰り返し怒られる、名誉毀損的な感じで、あるいは殺すぞとかの言葉がでれば、不規則な言葉があったんでこれで終了させて頂きます、これ以上続けば警察を呼びますということを言うしかない。警察を呼ぶ呼ばないってことは初期の段階では状況を見て判断し、相手がそれを言うことによっては逆ギレするっていう場合もあり、その相手を見て警察に言わない、言うを決める。また少し弱いが弁護士に言うとかでもそれも含めて、組織的な対応というマニュアルとかに決めといて、エスカレーションするという場合もあると思う。

 これはもう現場だけで対応できないケースだから上司が出て話してもらうっていう風にしたほうがいい場合もある。別の部署や組織のことであればもうこれ以上こちらでは対応できませんのでそちらにお願いしますとか、気に食わんとか言われれば躊躇わず上司の方に代わっていい。

 さっき言ったように一人で対応せずに複数で皆と連携して、関係者つまり警備員とか含めて組織的な対応が必要になってくることもある。庁舎の管理規則もきちんとマニュアルで触れておこう。「これ以上は建物の中におらんといてくれ」って言ったのに帰らない、不退去罪ってのが刑法にあるがそういうものが成立する場合もあるし、威力業務妨害罪とか仕事ができないと業務妨害な形も出てくると思う。そういうことでも全然言うこと聞かんと終わらない場合は警察に来てもらうと。

 警察に来てもらう時にサイレン鳴らしてくるのか、それとも私服警官でこっそり別の入り口から入ってきてそして対応してもらうのか、つまり横から警察が状況を見て逮捕してくれる場合もあり、早い段階で警察と連携しとくことも大事である。近くの交番辺りでもいいが、こういうな時には警察を呼びますんでよろしくお願いしますって。

 なお、まっとうなクレームに対する対応で、もしもその相手の要求が全くその通りの場合もあろう。できる範囲で対応して、商品の交換であるとか、要求に応じた対応のやり直しとか、場合によっては弁償であるとか、するんだったらいい。全く正当なものであればためらう必要ないと思う。これはどちらかというと民間での話になるが、経営的な判断とよく言うが、どうも怪しいが何らかの形でお土産的なものを持って帰ってもらうっていう場合もないわけじゃない。利用回数券とか割引券を出して終わらせるって言う場合もないわけじゃない。

 西日本の指定都市で、税務署長の研修講師を担当したときに、税を取り過ぎていたらしく「菓子箱をもって謝罪に行くつもりだが問題ないか」と会場で質問があった。公務員でもいろいろと民間での例は参考になろう。「要らないでしょう」という趣旨で答えたが。

しかしその場合でも肝心なのはそのフィニッシュの仕方を組織で決めとくこと。アドリブでやらずに。

最後に、対応した者はかなり疲れるので、メンタル面での日常的な取り組みということでは、その場合は精神科医等の専門家の活用もいいであろうが、あんまりそれが普及してない。カウンセリングだけだったら高すぎる、保険がきかないから。

やはり、丁寧な研修を受けよう。何回受けても悪くはないと思う。クレーム対応で接遇のうまい研修講師、法律的な話もできる研修講師、実際に場数を踏んで経験のある研修講師、等色々いる。手前みそであるが私はいずれも可能である。経験と理論、法律的な知識で対応しているので。研修の講師としてよろしかったらまたご依頼に来てください。

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