住民票の記載における嫡出等の記載変更の訴えはできるのか(地方自治法の重要判例)最高裁平成11年1月21日

1.【住民票の記載 嫡出の記載 最高裁平成11年1月21日の結論に至るまで】

◆事実

婚姻意思を有し同居するが,婚姻届を提出していない夫婦であるX1とX2は,子X3出生に伴い出生届を提出した。
しかし、非嫡出子であることを理由に,世帯主X1との続柄を「子」と記載された。
当時の住民基本台帳事務処理要領では、嫡出子は「長男」,「二女」等と記載されるのが例であったが,これと異なる続柄欄の記載の違法を主張するX1・X2は,続柄記載処分の取消しと,摘出子と非嫡出子との区別なく記載した住民票の発行を求める抗告訴訟を提起した。(他に国家賠償訴訟も提起)

◆第1審(東京地判平成3・5・23)

続柄記載行為が抗告訴訟の対象となるとしても,住民票の記載は個人ごとになされるのであるから,その記載が住民に及ぼす法的効果等も個人単位で理解されるべきであり,本件記載の適否につき法的利害関係を有するのはⅩ3のみであるとして,Ⅹ1・Ⅹ2の原告適格を否定した。

◆原審(東京高判平成7・3・22)

その後の要領の一部改正(平成6年12月15日自泊省通達)により,平成7年3月1日から住民票続柄欄には摘出子と非嫡出子を問わず「子」と記載されることに改められ,これに伴い,Ⅹ3の住民票も改製されて摘出子のそれと全く区別のないものとなったため,訴えの利益は消滅したとして訴えを却下した。

◆最高裁

「市町村長が住民基本台帳法7条に基づき住民票に同条各号に掲げる事項を記載する行為は,元来,公の権威をもって住民の居住関係に関するこれらの事項を証明し,それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であり,それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定する法的効果を有するものではない。
もっとも,‥公職選挙法21条1項‥によれば,住民票に特定の住民の氏名等を記載する行為は,その者が当該市町村の選挙人名簿に登録されるか否かを決定付けるものであって,その者は選挙人名簿に登録されない限り原則として投票をすることができない‥から,これに法的効果が与え られている‥。しかし,住民票に特定の住民と世帯主との続柄がどのように記載されるかは,その者が選挙人名簿に登録されるか否かには何らの影響も及ぼさないことが明らかであり,住民票に右続柄を記載する行為が何らかの法的効果を有すると解すべき根拠はない。したがって,住民票に世帯主との続柄を記載する行為は,抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない」。

2.【論評】

◆第1審⇒・住民票の記載が不正確な時は世帯主にも利害関係ある
◆第2審⇒・住民票は5年保存され写しの交付も可能で訴えの利益は消滅していない
◆最高裁⇒・公証行為が個人的利益を侵害する場合あるが、選挙権以外にも法的効果は生じうる。例としてプライバシー権(人格権)侵害効果、本人のみならず家族への影響もある。

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