1.不祥事とは、どのようなコンプライアンス違反を指すか
不祥事とは、大辞林等によれば、「好ましくない事件。いまわしい事柄。」のことである。
平たく言うと、「そんなことしたら絶対にアカンやろ」と言うことであろう。
「法令や倫理に反する行為のうちで、コンプライアンス違反として重大なものを指す」というのが今日的な定義であろう。
「マスコミなど世間に対して公表すべきもの」と言ってもいいであろう。
2.「不祥事とは何か」は組織ごとに違う
(1)まず、そもそも何が不祥事なのかは組織毎に違う。
組織ごとのコンプライアンスが違う以上これはあたり前のことであろう。
例えば、ある農業団体では、「100万円」の現金の紛失は不祥事としての報告事項になっているが、別の農業団体では、「10万円」が不祥事としての報告事項になっている。
現金の取り扱いでもこんなに差がある。
不祥事としての扱いは本当にバラバラである。
公務員と民間でも違う。
また、銀行法53条1項8号、銀行法施行規則35条7項では、金融機関特有のマネジメントの観点から不祥事件として報告すべきものを定めている。
(別稿の銀行不祥事参照)
(2)しかし、業界毎の定義から共通性があるのは
「不祥事件とは役職員による不正行為又は業務上の事故等」のことと言っていいであろう。
最大公約数的には
①法令又はガンドライン等の規制に抵触する
②重大な内規違反となるような行為
③故意又は過失により、所属組織か第三者に大きな損害を及ぼすか、その恐れがあるような行為
④所属組織と第三者との間に将来重大な紛争に発展することが明白な行為
⑤所属組織の信用を著しく傷つけるか、その恐れがあるような行為
⑥組織の運営業務に重大な影響を与えるか、その恐れがあるような行為
⑦多額の現金または有価証券等の紛失、その他の財産の喪失行為
大体、以上が最大公約数的には不祥事になるでろうか。
※事例は、本サイトの「コンプライアンスの事例」参照
いずれにしろ、横領や窃盗、猥褻罪等破廉恥犯罪等の刑事処分を受ける行為又は飲酒運転による傷害事件、損害の大きい交通事故等が今日は不祥事件としてよく取り上げられるのである。
3.何が不祥事に当たるのかは、社会が決めることを忘れるな
コンプライアンスが、ステークホルダーの信頼にこたえることだから、何をもって信頼違反の不祥事と考えるかの社会通念は、地方公務員法33条などにあるように、今の時代の消費者・住民が決めることである。
ここを判断に入れるかどうかが、コンプライアンス経営の分水嶺なのだ。