はじめに:「うちには関係ない」は通用しない時代
「先生が怒鳴るのは昔からのことだし…」「補助金の経費処理は担当者が適当にやってくれている…」
そう思っているスポーツ指導者・役員の方こそ、この記事を読んでいただきたいと思います。
近年、プロ・アマを問わず、スポーツ界における不祥事の報道が絶えません。選手への暴力・パワハラ、補助金の不正受給、選手選考の不透明さ、役職員による横領——これらはかつて「身内の問題」として処理されてきたかもしれません。しかし今日、スポーツ団体には企業と同等の社会的責任が求められる時代になりました。
私は行政書士として、建設業・医療・介護・学校法人・自治体など幅広い業種で850回を超えるコンプライアンス研修の講師を務めてまいりました。そして近年、スポーツ団体・競技クラブからの研修の問い合わせが急増しています。本稿では、なぜ今スポーツ団体にコンプライアンスが必要なのか、そして私どもが提供する研修カリキュラムの全体像をご紹介します。
1. なぜ今、スポーツにコンプライアンスが求められるのか
スポーツ庁「ガバナンスコード」が突きつけた現実
2019年6月、スポーツ庁は「スポーツ団体ガバナンスコード」を策定・公表しました。その背景には、直前の年に立て続けに発覚したスポーツ界の不祥事群——暴力行為、パワーハラスメント、反則行為の指示、不正会計——がありました。
このコードは中央競技団体(NF)に対して13の原則を定め、特に以下を義務付けています。
- 原則4:コンプライアンス委員会の設置
- 原則5:コンプライアンス強化のための教育の実施(役員・選手・指導者・審判員向け)
- 原則9:通報制度の構築
- 原則12:危機管理及び不祥事対応体制の構築
さらに2023年9月、同コードが初めて改定されました。
改定の重要ポイントの一つは、「統括団体が実施するコンプライアンス研修の活用を含め、競技横断的に取り組むことを記載」したことです。競技の枠を超えてコンプライアンス教育に取り組むことが、もはや「努力義務」ではなく規範として明記されたのです。
不祥事が団体にもたらす現実的ダメージ
日本バドミントン協会の事例は象徴的です。横領・補助金不正受給・隠蔽体質が明るみに出た結果、スポーツ庁から2023年度強化費の20%削減(削減額は約3,400万円規模)という制裁が科されました。社会的信用の失墜、選手の競技環境への悪影響、役員の法的責任——不祥事のコストは計り知れません。
「うちは地方の小さなクラブだから関係ない」とお思いの方も注意が必要です。
一般スポーツ団体向けのガバナンスコードも存在し、都道府県体育協会・競技団体・総合型地域スポーツクラブ等も自己点検と公表が促されています。SNS一本で不祥事が全国に広まる時代、規模の大小は関係ありません。
2. 研修カリキュラムの全体像
タイトル:「不祥事でチームを壊さないために〜指導者・役員のためのスポーツ・コンプライアンス実践講座〜」
想定時間:90〜120分 / 対象:指導者・役員・スタッフ
第1章:なぜ今、スポーツにコンプライアンスか
セクション内容とポイント
近年のパワハラ事案・補助金不正受給等の実例を挙げながら、団体・個人が被る社会的・金銭的ダメージを具体的に解説します。「スポーツ団体ガバナンスコード」の13原則と、違反した場合の助成金削減リスクも整理します。
日本スポーツ仲裁機構(JSAA)が公表している「スポーツ界におけるコンプライアンス強化ガイドライン 不祥事対応事例集」(JSAA公式サイト)では、不祥事を10の類型(組織内犯罪、会計問題、情報隠蔽等)に分類して事例を掲載しており、これらも研修教材として活用します。
中川だから語れる要素
バレーボールの全日本高校選抜選手として競技の現場を経験した私が見てきた「過去の常識」と「現代の法規制」のギャップ——「怒鳴ることで選手は強くなる」「予算は大雑把でも勝てばいい」という旧来の慣習が、いかに現代の法的リスクと正面衝突しているかを、リアルな体験をもとに提示します。
第2章:指導とハラスメントの境界線
セクション内容とポイント
体罰・暴言・過度な練習強要が労働施策総合推進法(パワハラ防止法)・民事不法行為・スポーツ基本法上でどう評価されるかを判例に基づいて解説します。
たとえば、ある競技協会の強化本部長による選手へのパワハラ事案では、「公益通報規程の適用対象が職員に限定され、登録選手やコーチには適用されなかった」という制度上の欠陥が指摘されました。「規程はある、でも機能しない」——これが多くのスポーツ団体の現実です。パワハラ6類型は、スポーツの世界でもそのまま適用があります。
中川だから語れる要素(パワハラ早見表の提示)
「厳しい練習を否定しない」というスタンスは、現場指導者の方から最も共感を得るポイントです。私自身が競技者として経験した「鬼コーチ」の指導と、法的にアウトな指導の違いを具体的に提示しながら、「いかに法的に安全な指導を設計するか」という実践的なアドバイスをお伝えします。
第3章:組織を守るガバナンスと通報制度
セクション内容とポイント
2022年6月施行の改正公益通報者保護法により、常時使用従業員数300人超の事業者には内部通報体制の整備が義務化されました。スポーツ団体も例外ではありません。とりわけ「外部の専門家を通報窓口とする」体制の整備は、公益通報者保護規程が存在していても適用対象が限定され、選手やコーチに適用されなかったという過去の失敗事例を繰り返さないために不可欠です。
研修では、通報制度の設計から運用・秘密保持義務まで、実務的な観点で解説します。
中川だから語れる要素
当事務所は、建設業・医療機関等で豊富なコンプライアンス体制構築の実績を持ちます。内部通報の外部窓口(ヘルプライン)の受任も行っており、スポーツ組織向けにもそのノウハウをそのまま応用できます。「隠す文化から自浄する文化へ」という転換を、制度設計の観点から具体的にサポートします。
第4章:SNS時代の危機管理
セクション内容とポイント
選手・スタッフによるSNS投稿が組織全体のリスクになる時代です。炎上事例(チームの不祥事を仄めかす投稿、対戦相手への侮辱、不用意な内輪話の公開等)を取り上げながら、SNS投稿ガイドラインの策定方法と周知のポイントを解説します。
スポーツ団体ガバナンスコードでは、不祥事発生時の適時適切な公表に関する記載が改定版で追加されました。組織として「発信する情報」と「控える情報」の判断基準を事前に整備しておくことが、危機管理の第一歩です。
中川だから語れる要素
若手選手の心理——「いいね」を求めて投稿したくなる気持ち——を否定せず、なぜガイドラインが必要なのかを自分ごととして理解してもらうための伝え方を工夫します。「禁止するだけの研修」ではなく、「なぜ守るのかが腑に落ちる研修」を目指します。
第5章:まとめ・質疑応答
セクション内容とポイント
「強いチームである前に、正しいチームであること」——この言葉を研修の締めくくりとして参加者と共有します。コンプライアンスは競技力の足を引っ張るものではなく、長期的に強い組織を作るための基盤です。
スポーツ庁ガバナンスコードの自己点検チェックリストを活用した、明日からの行動計画を各チームに持ち帰っていただきます。
中川だから語れる要素
選抜レベルで戦うことの意味——勝利の価値も、敗北の痛さも、身をもって知っている者として、「正しく戦い続けることへの誇り」を参加者に届けます。講義の最後は、説教でも説明でもなく、エールで締めます。
3. 中川総合法務オフィスにご依頼いただく理由
850回超の研修講師実績
建設業・医療・教育・行政機関など、幅広い業種で850回を超えるコンプライアンス研修の講師を務めてきました。「難しい法律をわかりやすく、現場に刺さる言葉で」伝える研修スタイルは、参加者から高い評価をいただいています。
公益通報の外部窓口も受任
研修で終わらない、継続的なサポートが可能です。当事務所は、内部通報制度の外部窓口(ヘルプライン)の受任も行っています。研修でコンプライアンス意識を高めた後、実際に通報が入った際の受付・記録・団体への連絡まで、外部の専門家として対応します。
行政書士事務所ならではの視点
弁護士でも社会保険労務士でもなく、「行政書士」としてコンプライアンスに取り組む理由があります。許認可・補助金申請・各種規程整備など、スポーツ団体の日常業務に深く関わる手続きを熟知した立場から、「法令を守ることが結果として組織を守る」という実感を持って研修をお届けします。
参考資料・根拠となる公的文書
本研修の内容は、以下の公的資料・ガイドラインに基づいています。
- スポーツ庁「スポーツ団体ガバナンスコード〈中央競技団体向け〉」(2019年6月策定、2023年9月改定)
https://sports.go.jp/special/policy/post-127.html - 日本スポーツ仲裁機構(JSAA)「スポーツ界におけるコンプライアンス強化ガイドライン」
https://www.jsaa.jp/ws/complianceindex.html - 笹川スポーツ財団「スポーツ団体の健全なガバナンス確保に向けた考察」(2023年4月)
https://www.ssf.or.jp/knowledge/sport_topics/20230418.html - スポーツ基本法(平成23年法律第78号)
- 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
- 公益通報者保護法(令和2年改正、令和4年6月完全施行)
ご依頼・お問い合わせ
「研修の内容について詳しく聞きたい」「団体の規模や状況に合わせたカスタマイズは可能か」「外部通報窓口の設置について相談したい」——どんなご相談も、まずはお気軽にお問い合わせください。
中川総合法務オフィス(行政書士事務所)
研修お問い合わせフォーム:https://compliance21.com/contact/
当事務所は、850回超の研修講師実績と内部通報外部窓口の受任実績を持つ行政書士事務所です。スポーツ団体・競技クラブ・学校運動部向けの研修を承っております。

