公益通報でリベンジ受ける者が続出、絶望的な日本の内部告発はこのままでいいのか

1.公益通報者保護法の制定と内部通報する者の保護

(1)公益通報者保護法の制定

組織のコンプライアンス態勢の確立のためには、組織内部における内規も含めた法令順守行為が求められるが、しばしばそれは破られる。

そこで、平成18年に公益通報者保護法ができて、法の要件を満たす組織内の法違反の通報行為者に対する一切の不利益を禁ずることとなった。

ところが、この運用は芳しくない。

(2)オリンパス事件の不穏な余韻

例えば、オリンパス事件では、組織内の不正競争防止法違反を通報した男性に対する処遇が不法行為となって最高裁で確定した(平成24年6月28日)。

会社のコンプライアンスヘルプライン運用規定には、通報者本人の承諾を得た場合を除き、通報者の氏名等、個人を特定され得る情報を他に開示してはならないこと(14条2項)、通報者に対してヘルプラインを利用したという事実により不利益な処遇を行ってはならないこと(16条)が規定されていた。

しかし、相談窓口から上司への開示が通報者の承諾なしでなされたと高裁では認定されている。

また、パワーハラスメントも認定されている。

配転命令で社外との接触禁止命令、著しく達成困難な業務目標を設定し、結果として著しい低評価を行ったこと、2人がかりの面談、「おまえ」と呼ぶなど侮蔑的表現を使い、質問はメールでしか受け付けない、50歳になった男性に「X君教育計画」、「Xさん教育計画」などを作成したこと等を認定し、侮辱的な嫌がらせであると判断している。

(3)トナミ運輸事件の取り返しのつかない人間の尊厳ダメージ

古くは、トナミ運輸事件(富山地判平成17年2月23日)がある。

被告の大手貨物運輸会社の従業員である原告が、被告が他の運送業者との間で認可運賃枠内での最高運賃収受や荷主移動(顧客争奪)禁止を内容とするヤミカルテルを締結しているなどと内部告発を行ったところ、被告がこれを理由として長期間にわたり原告を昇格させず、また、原告に不利益な異動を命じて個室に隔離した上雑務に従事させるなどしており、被告の行為は人事権の裁量の範囲を逸脱するものであるとして、被告に損害賠償が命じられたというものである。

(4)秋田書店事件の問題のすり替え

つい近時では、平成25年8月、秋田書店読者プレゼント水増し問題が発覚し、消費者庁は、秋田書店に対し、景品表示法6条に基づいて、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者へ周知徹底するなどを命じる措置命令を行なった。

ところが、内部通報した元女性社員が、窃盗の疑いで解雇されたのが妥当かどうかが訴訟になっている。

2.消費者庁の公益通報実態調査

消費者庁の調査によれば、民間事業者全体で46・3パーセントが内部通報制度を導入している。

そのうち従業員が3000入超の会社では96.8パーセントが内部通報制度を導入している。

この公益通報者保護制度の定着は組織風土の改善も含めたコンプライアンス態勢のわが国での定着と密接に関連していると私は見ている。

3.内部通報へのリベンジと負の連鎖

内部通報があった場合に、企業は、内部通報者に配置転換や場合によっては左遷してリベンジを加えてしまうことがある。

オリンパス事件ではパワーハラスメントも認定されている。

そうすると、当該内部告発者は怒って損害賠償請求等をしてしまい組織内の新たな紛争を招く事になるケースが多い。

これでは、組織内の従業員は通報制度が嫌になり、せっかくの組織のための内部通報制度が機能しなくなってしまうではないか。何のための公益通報か。

事態がどんどん悪くなっていき、組織内の違法がそのまま放置されるか、逆にマスコミなどへの通報が発生することがある。

そこまでいけば大阪地検特捜部M検事事件のように大きく組織の信用が損なわれてしまう負の連鎖となってしまうのである。

◆配転命令の有効性

東亜ペイント事件(最判昭和61年7月14日)の判断枠組みが広く知られている。業務上の必要性がないか又は違法・不当な動機・目的、著しい不利益がある場合に配転命令は権利濫用で無効となる。

4.保護すべき外部への通報(内部告発)の要件

(1)外部への公益通報の保護要件

大阪いずみ市民生協(内部告発)事件(大阪地堺支判平成15年6月18日)判決参考

内部通報があった場合の内部告発者を保護するための一般的な基準、

・内部告発の内容の根幹的部分が真実ないしは内部告発者において真実であると信じるについて相当な理由があるか、

  ・内部告発の目的が公益性を有するか、

  ・告発内容自体の当該組織体等にとっての重要性、

  ・内部告発の手段・方法の相当性等を総合考慮して、内部告発が正当かどうかを判断する。

(2)通報基準の射程距離

この裁判所の先例的価値のある判断基準は、

公益通報者保護法3条及び5条1項の解釈及び公益通報者保護法の対象外の内部告発の事案

においても考慮されるべきであろう。

5.内部通報制度の実務上での運用ミスと職場での軋みを防止して、ヘルプライン・ホットラインを利活用する方法が必要

 

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