「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)」追加事項

 この文書が、総務省自治行政局から令和2年 1 月17日に出されたが、当時はあまりに遅かった。

 すでに話題になっていたことが多く、国会での答弁においても予想質問の範囲内と思われる。わかっていたなら、もっと早く出してほしかった。下記にいくつか重要項目を挙げておく。

※なお、令和4年の修正はこのサイトの別稿参照

1.問1-13 会計年度任用職員が育児休業を取得した場合や病気休職した場合など、欠員補充の取扱い如何。

会計年度任用職員が育児休業を取得する場合の欠員補充については、新たに会計年度任用職員を任用することや、地方公務員育児休業法第6条第1項第2号の規定に基づく臨時的任用職員を任用することが考えられる。

なお、地方公務員育児休業法に基づく臨時的任用については、「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合」に該当することを新たに要件として加えていないため、これまでと同様、常勤職員の代替に限られるものではないが、地方公務員育児休業法に基づく臨時的任用は、職員の配置換えその他の方法(職員の業務分担の見直し、配置転換、業務遂行方法の工夫、会計年度任用職員の任用などのさまざまな措置をいう。)により育児休業を請求した職員の業務を処理することが困難である場合に行うことができるという点に留意が必要である。

また、会計年度任用職員が病気休職する場合などの欠員補充については、新たに会計年度任用職員を任用することが考えられる。

2.問1-16 教育機関において任用する会計年度任用職員の任用期間について、夏休み期間中従事させる業務が全くない場合、その夏休み期間を除き、任期を分けて設定することは、不適切な空白期間にあたるか。

夏休み期間中従事させる業務が全くない場合、不適切な空白期間には当たらないと解される。しかし、任期の設定については、勤務の実態に照らして個別具体的に判断する必要があるが、例えば、退職手当や社会保険料等を負担しないようにするため、任用が1日ないし数日の間を空けて再度行われる場合、不適切な「空白期間」とみなされるおそれがある。

なお、夏休み期間前に任期が終了になった者を休業明けに再度任用する場合、他の再度任用の場合と同様、新たな職への任用にあたると解される。したがって、改めて職務内容を含めた勤務条件の提示を行い、平等取扱いの原則や成績主義を踏まえた能力の実証等を経たうえで、本人の意思を確認し、辞令交付や勤務条件の明示を行うべきである。

3.問2-6 臨床心理士、看護師、薬剤師についても新地方公務員法第3条第3項第3号に掲げる「診断」や「助言」と解して特別職としてよいか。

臨床心理士の職務は、診察等の医学的な診断というより、個人に対する心理的な助言であると考えられ、看護師の職務は、最終的には医師の判断が必要な場合も想定され、補助的に医療等に従事する性格が強いことから、「診断」には該当しないと解される。
また、薬剤師の職務は、医師等の処方せんによる調剤や薬剤の適正な使用のための情報の提供及び指導であることから、「診断」には該当しないと解される。
○ なお、新地方公務員法第3条第3項第3号に掲げる「助言」については、地方公共団体の機関等に対する「助言」に限り該当するものである。

4. 問2-10 社会福祉法人に対する指導監査等に従事する公認会計士や税理士等を特別職非常勤として任用することは可能か。

社会福祉法人への立入検査など、社会福祉法人に対する指導監査等の事務は権力的業務に当たるものと考えられることから、当該業務を担う職員については、一般職として任用し地方公務員法上の服務規律等を課すことが適当であると考えられる。また、指導監査等の事務は新地方公務員法第3条第3項第3号に掲げる「助言」「調査」「診断」のいずれにも該当しないと解される。

5.問7-3 職員の服務の宣誓に関する条例(案)第2条第2項の規定による「別段の定め」について、具体的にどのような定めが考えられるか。

○ 会計年度任用職員については、制度導入前の任用形態や任用手続きが様々であることに鑑みれば、地方公務員法第31条の規定に基づく服務の宣誓をそれぞれの職員にふさわしい方法で行うことが望ましい。
○ そのため、例えば、
・ 特別職非常勤職員から会計年度任用職員へ移行した場合には、任命権者等の面前での宣誓書への署名を要さず、署名をした宣誓書を提出することで足りるものとすること
・ 同一の職員につき再度の任用を行った場合には、先の任用に際して行った服務の宣誓をもって、これを行ったものとみなすこと
・ 採用時に服務の誓約等を行っている場合には、当該誓約等をもって、服務の宣誓を行ったものとみなすこと
などの方法により会計年度任用職員による服務の宣誓を実施することが考えられる。
○ なお、今般の職員の服務の宣誓に関する条例(案)の改正はこうしたことを踏まえて行ったものである。

6.問10-5 国の非常勤職員の休暇制度に改正があった場合、会計年度任用職員の休暇制度についての取扱如何。

○ 国の非常勤職員の休暇制度に改正があった場合には、会計年度任用職員の休暇制度についても、国の非常勤職員との権衡の観点を踏まえ、必要な制度を確実に整備する必要がある。
○ なお、国の非常勤職員の休暇制度では、平成31年1月1日付けで「結婚休暇」の新設、「忌引休暇」の対象者の拡大、令和2年1月1日付けで「夏季休暇」の新設がされているので適切に対応されたい

7.問10-6 庁舎外での勤務が中心となる職について、実際の勤務時間をどのように把握すればよいか。

○ 単に庁舎外での勤務となる場合には、例えば、庁舎外における勤務の開始及び終了時に始業・終業時刻を電話等で報告させる、勤務終了後に勤務時間や勤務内容についての報告書を提出させるといった方法により、勤務時間を把握することが考えられる。

○ 一方、労働基準法においては、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な場合には、労働基準法第38条の2で規定する事業場外みなし労働時間制を適用し、所定労働時間労働したものとみなすことができるとされている。
○ 庁舎外での勤務について、事業場外みなし労働時間制が適用可能な場合には、同制度を活用することも可能であると考えられる。

8.問1-17 パートタイム会計年度任用職員として任用することを目的に、例えば、週5日勤務の職について一日あたりの勤務時間を 7 時間 30 分とするなど、勤務時間をフルタイム会計年度任用職員よりもわずかに短く設定しても、差し支えないか。

会計年度任用職員の任用に当たっては、職務の内容や標準的な職務の量に応じた適切な勤務時間を設定することが必要である。

また、単に勤務条件の確保等に伴う財政上の制約を理由として、合理的な理由なく短い勤務時間を設定し、フルタイムでの任用について抑制を図ることは、適正な任用・勤務条件の確保という改正法の趣旨に沿わないものである。

こうしたことから、パートタイム会計年度任用職員として位置づけること自体を目的として、例えば、勤務時間をフルタイム会計年度任用職員よりも一日当たり 15 分間短くするなど、わずかに短く設定することは適切ではない。

9. 問6-5 公募を行う際、前年度に同一の職務内容の職に任用されていた者については、前の任期における勤務実績を考慮して選考を行い、その結果、再度の任用をすることは可能か。

職員の公募・選考は、当該会計年度任用の職にふさわしい人物を採用することを目的に行うものであり、均等な機会の付与の考え方を踏まえつつ、客観的な能力の実証を行うことが必要である。

また、再度の任用については、会計年度任用職員制度の導入後においても、従前の取扱いと同様、当該会計年度任用の職と同一の職務内容の職が翌年度設置される場合、平等取扱いの原則や成績主義の下、客観的な能力の実証を経て再度任用されることはあり得るものである。

これらの点を踏まえれば、客観的な能力の実証の一要素として、前の任期における勤務実績を考慮して選考を行い、その結果、再度の任用をすることは可能である。

10.問13-11  4月の法施行に当たって、会計年度任用職員の給与はどのような水準とすべきか。

【給与決定の考え方】追加
○ 会計年度任用職員の給与については、一般職の常勤職員と同様、地方公務員法に定める職務給の原則や均衡の原則等の考え方に基づき、決定すべきである。

○ 具体的に、給料・報酬の水準については、各会計年度任用職員と類似する職務に従事する常勤職員の属する職務の級の初号給の給料月額※を基礎として、職務の内容や責任の程度、職務遂行上必要となる知識、技術及び職務経験等の要素を考慮して定めるべきである。

○ 期末手当の支給額(①期末手当基礎額 × ②期別支給割合 × ③在職期間別割合により計算。)についても、常勤職員の取扱いとの権衡等を踏まえて定める必要がある。

○ また、単に財政上の制約のみを理由として、

・期末手当の支給について抑制を図ること

・新たに期末手当を支給する一方で給料や報酬について抑制を図る

等の対応は、改正法の趣旨に沿わないものであり、適切ではない。

■均衡の原則: 地方公務員法第24条第2項は、地方公務員の給与について、「生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない。」とする。

以上である。

Follow me!