相続は人生の最終章を締めくくる重要な手続きであり、その準備は故人の意思を尊重し、残されたご家族の平穏な未来を築く上で不可欠です。中川総合法務オフィスは、長年にわたり京都や大阪の地で1000件を超える相続無料相談を実施し、多くのご家庭の複雑な問題を解決へと導いてまいりました。法律や経営といった社会科学はもちろんのこと、哲学や自然科学にも通じた代表の深い洞察力は、単なる法的手続きを超え、人生を豊かに生きるための「啓蒙」という側面からも、多くのご相談者様からご評価いただいております。

ここでは、誤解されやすい「遺言代用信託」と「遺言信託」の違いを明確にし、特に不動産相続におけるその限界、そして改正相続法の下で推奨される「遺言書+遺言執行者」の有効性について、最新の法改正情報も踏まえ、深く掘り下げて解説します。


1.遺言代用信託と遺言信託の違い:その本質を理解する

信託という制度は、財産の管理や承継において柔軟な選択肢を提供しますが、その種類によって機能や目的が大きく異なります。特に「遺言代用信託」と「遺言信託」は名称が似ているため混同されがちですが、その実態は全く別物です。

(1) 遺言代用信託とは

遺言代用信託(信託法第90条等)は、遺言書を作成せずに、指定した人に遺産を確実に引き継ぐことを可能にする信託の形態です。これは、信託契約の中で「委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定め」を設けることで実現されます。

具体的には、被相続人が「委託者兼第一受益者」となり、自身の死亡時に信託した財産を受け取る人を「第二受益者」として指定します。多くの場合、金融機関に金銭を信託し、相続発生時に信託銀行から相続人へ財産が払い出される仕組みです。

この制度の最大の特徴は、信託された金銭が遺産分割協議の対象外となる点です。これにより、被相続人の意思に基づき、特定の財産を特定の人に確実に承継させることができます。遺産分割による争いを未然に防ぎたいと考える方にとっては、有効な選択肢となり得ます。

(2) 遺言信託とは

これに対し、遺言信託(信託法第3条等)は、遺言書の作成、保管、そして遺言の執行(内容の実現)までを金融機関に委託するサービスを指します。信託法第3条では、信託が契約や遺言によって設定されることが定められており、遺言信託はこの遺言による信託設定方法の一つとして位置づけられます。

 これは金融機関の強い影響力によって提供される、いわば政治的背景を持つ弁護士業務代替サービスとも言える側面を持ちます。遺言書の内容自体に特別な効力を付与するものではなく、あくまで遺言の「実行支援サービス」である点が、遺言代用信託との決定的な違いです。

例えば、りそな銀行の遺言信託サービス(りそな銀行 遺言信託)などがその典型例です。


2.遺言代用信託の特徴と限界:不動産相続には不向きな理由

遺言代用信託は、その利便性から注目されることもありますが、その特徴を深く理解すると、特に不動産相続においては限界があることが明らかになります。

(1) 金銭に限定、不動産は不可:その本質的制約

遺言代用信託は、遺言信託と比較して低コストで手軽に利用できるというメリットがある一方で、信託できる財産は原則として金銭に限定されます。株式や債券などの有価証券、そして何よりも土地や建物といった不動産を直接信託することはできません。この本質的な制約が、不動産を多く所有する方にとって、遺言代用信託が不向きである最大の理由です。不動産の承継を考える場合、別途、遺言書作成や家族信託など、他の法的手段を検討する必要があります。

また、遺言代用信託を利用しても、承継された財産には通常の相続と同様に相続税が課税され、節税効果はありません。遺留分(民法で保障された最低限の相続分)を侵害する内容であった場合、トラブルの原因となる可能性も秘めています。

(2) 死亡後すぐに引き出せる利便性と改正相続法による変化

遺言代用信託の大きなメリットとして、被相続人死亡後すぐに資金が引き出せる点が挙げられます。これにより、銀行口座の凍結を心配することなく、葬儀費用や残された配偶者の当面の生活費に充てることが可能です。また、一度に多額の金銭を渡すのではなく、定期的に一定額を払い出す設定も可能であり、受取人の浪費や詐欺被害のリスクを軽減できる点は、被相続人にとって大きな安心材料となります。

しかし、2019年7月1日に施行された改正相続法により、「遺産分割前の預貯金の仮払い制度」が新設されました。これにより、相続人は金融機関に対し、戸籍謄本等の必要書類を提出することで、遺産分割協議が成立する前でも、一定額(各金融機関ごとに上限150万円)まで預貯金を引き出すことが可能となりました(民法第909条の2)。この改正により、遺言代用信託の「死亡後すぐに引き出せる」というメリットの相対的な価値は、以前よりも低下したと言えるでしょう。緊急の資金需要に対応できる手段が他に用意されたため、遺言代用信託の必要性は限定的になった側面があります。

(3) 孫まで指定可能、しかし金銭限定と遺留分には注意

遺言代用信託では、子が受け継いだ資産をさらにその子(孫)へ引き継ぐ、いわゆる「受益者連続型」の指定も可能です。これにより、子が改めて遺言書を作成する手間を省き、世代を超えた財産承継の意思を実現できます。しかし、ここでも信託できる財産が金銭に限定されること、そして遺留分を侵害できないという点は、常に念頭に置く必要があります。特に、遺留分を無視した指定は、後に相続人間の深刻な紛争を招く可能性があるため、慎重な検討が不可欠です。

(4) 金融機関の選択とコスト、元本保証の確認

遺言代用信託は、信託銀行だけでなく、一部の地方銀行でも取り扱われています。各金融機関が提供する商品の内容は多岐にわたるため、契約前に、信託できる金額の範囲(例:下限200万円~上限3,000万円程度が多い)、信託期間(例:5年以上30年以内)、そして最も重要な手数料体系を詳細に確認することが肝要です。

手数料については、契約時や信託期間中の管理手数料が必要となるケースが多く、中には運用報酬がかかる商品も存在します。また、信託された資産の運用に伴い、元本が保証されない場合がある点にも注意が必要です。契約内容によっては、定期的な資金の受け取りや、死亡時の一時金、あるいは定期定額の払い出しなど、複数の受け取り方を組み合わせることも可能です。

重要なのは、これらの契約内容が、多くの場合、金融機関の商品メニューによって定められ、利用者のイニシアティブが制限される点です。みずほ信託銀行のウェブサイト(みずほ信託銀行 相続・家族のための信託)などで提供される情報も参考に、ご自身のニーズに合致するかどうかを慎重に見極める必要があります。


3.改正相続法下の最適解:「遺言書+遺言執行者」がもたらす安心と確実性

上記のように、遺言代用信託は特定のニーズには応えられますが、不動産を含む多様な財産の承継や、より確実かつ円滑な相続手続きを望む場合には、その限界が露呈します。そこで、中川総合法務オフィスが強く推奨するのが、「遺言書+遺言執行者」という組み合わせです。

(1) 遺言書:故人の意思を法的に明確にする最強のツール

遺言書は、故人の最終意思を法的に明確にし、遺産分割における争いを未然に防ぐための最も強力な手段です。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言といった種類があり、中でも公正証書遺言は、公証役場で作成されるため、その法的効力と信頼性が極めて高く、トラブル回避に最も有効です。

中川総合法務オフィスでは、お客様一人ひとりの状況に合わせた、法的に有効かつ「争族」を未然に防ぐための遺言書作成をサポートしております。単なる財産の分配に留まらず、ご家族への想いや、人生をかけて培った知恵といった「精神的財産」も付言事項として盛り込むことで、故人の人柄と教養が伝わる、唯一無二の遺言書を作成します。

(2) 遺言執行者:遺言の確実な実現を担うプロフェッショナルの役割

遺言執行者は、遺言書に記された故人の意思を、その通りに、かつ円滑に実現するための重要な役割を担います。遺言者が亡くなった後、遺産の名義変更、預貯金の解約、不動産の登記など、複雑かつ多岐にわたる相続手続きを、遺言執行者が単独で行うことができます。これにより、相続人全員の合意形成を待つ必要がなく、手続きが滞るリスクを大幅に軽減します。

特に、不動産が絡む相続においては、名義変更登記が必須であり、専門的な知識と手続きが求められます。遺言執行者がいれば、これらの煩雑な手続きを相続人が自ら行う負担から解放され、安心して任せることができます。

中川総合法務オフィスが遺言執行者として関与することで、相続人間の不必要な摩擦を避け、法的な視点と豊富な実務経験に基づいた公正かつ迅速な遺産承継を実現します。貴社代表の言葉通り、複雑な法律問題のみならず、人間関係の機微や、歴史的・哲学的な背景をも踏まえた多角的な視点から、最適な解決策を導き出します。


結論:確実な財産承継と平穏な相続のために

遺言代用信託は一部の金銭承継には有効な側面もありますが、不動産を含む多様な財産を確実に、そして円滑に承継させるためには、「遺言書」の作成と「遺言執行者」の選任が、改正相続法下の今、最もベターな選択肢であると言えます。特に、複雑な家族関係や多様な財産構成を持つ場合、専門家である弁護士・司法書士に遺言書の作成と遺言執行を依頼することが、将来の「争族」を回避し、ご家族皆様の平穏な生活を守るための最善策となります。

中川総合法務オフィスは、地元京都・大阪で培った1000件を超える相続相談の実績と、法律、経営、哲学、自然科学にわたる代表の幅広い知見を活かし、お客様一人ひとりの「想い」を形にするお手伝いをいたします。

相続に関するご相談は、中川総合法務オフィスへ

中川総合法務オフィスでは、相続に関するお悩みを抱える皆様のために、初回の30分~50分は無料で相談を承っております。複雑な法律問題から、ご家族間の繊細な人間関係、そして人生の哲学に至るまで、多角的な視点から皆様のお力になります。 お気軽にお電話またはメールフォームにてご予約ください。

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