遺留分に配慮した遺言の作成と遺言執行 ― 特定の相続人に最低限しか渡さない遺言の作成方法
長年連絡を絶っている子がいる。介護をすべて引き受けてくれた子に多く残したい。事業を継ぐ者に財産を集中させたい。理由はさまざまですが、「特定の相続人には、法律上渡さざるを得ない分だけにとどめたい」というご希望は、決して珍しいものではありません。
こうしたご相談は、内容が内容だけに、どこに持ち込めばよいか迷われる方が多いようです。当相談室では、ご事情を詮索することなく、ご希望をどう形にできるかという観点からお受けしています。
1 遺留分とは何か
遺留分は、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。遺言によっても奪うことができません。
遺留分を持つのは、配偶者、子(およびその代襲相続人)、直系尊属(父母や祖父母)です。兄弟姉妹には遺留分がありません。ここは重要な点で、お子さんがなく、ご両親も亡くなっており、相続人がご兄弟姉妹だけという場合には、遺言によって財産の全部を特定の方へ渡すことができます。ご兄弟姉妹が遺留分を主張する余地はありません。
遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合は相続財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1です。これに各人の法定相続分を掛けたものが、その方の遺留分になります。たとえば、相続人が子2人であれば、各人の遺留分は4分の1ずつです。
2 平成30年改正で「お金の問題」になった
かつて遺留分の請求は、遺留分減殺請求と呼ばれ、不動産などの財産そのものが共有になる仕組みでした。自宅や事業用資産が共有になってしまい、かえって紛争が長引く原因になっていました。
平成30年の民法改正(令和元年7月1日施行)により、これは遺留分侵害額請求という金銭の支払を求める権利に改められました。現在は、遺留分を侵害された相続人が請求できるのは金銭だけであり、不動産の持分を取り戻すことはできません。
この改正は、ご相談の内容にとって決定的です。「この家は長男に継がせたい」というご希望は、遺言できちんと定めておけば、他の相続人が遺留分を請求しても覆りません。請求されるのは金銭にとどまるからです。
3 遺言を作る際に考えること
請求されたときに支払える現金を用意しておく
遺留分侵害額請求がなされれば、財産を受け取った側が自分のお金で支払わなければなりません。不動産ばかりを相続した方が、現金を工面できずに売却を迫られることがあります。これを避けるため、受取人を指定した生命保険を活用する方法があります。生命保険金は受取人固有の財産であり、原則として遺産には含まれないと解されています(ただし、保険金の額が遺産全体に比して著しく大きいなど特段の事情がある場合には、持戻しの対象とされた判例があります)。支払いの原資をあらかじめ用意しておく、という考え方です。
遺言執行者を必ず指定する
遺言があっても、実際に預金を解約し、不動産の名義を移す人がいなければ手続きは進みません。遺言執行者を指定しておけば、その者が単独で手続きを進められます。内容に不満を持つ相続人がいる場合、執行者がいないと何一つ動かないまま膠着します。関係がこじれることが予想される遺言ほど、執行者の指定が欠かせません。
ご希望があれば、当方が遺言執行者としてお引き受けします。ご親族が執行者になると、他の相続人からの風当たりを一身に受けることになります。第三者である専門家が務めることで、ご家族の間に直接の対立を生まない効果があります。
付言事項を添える
遺言の末尾に、なぜこのような分け方にしたのかを、ご自身の言葉で書き添えることができます。法的な効力はありませんが、実務上の効果は小さくありません。理由の分からない遺言は感情的な反発を招き、理由が書かれた遺言は受け入れられやすくなります。遺留分の請求を思いとどまらせた例は少なくありません。
公正証書遺言にする
関係がこじれる可能性のある遺言ほど、公正証書で作成すべきです。自筆の遺言は、形式の不備、筆跡の争い、作成時に判断能力があったかどうかの争いの的になります。公証人が関与し、証人2名が立ち会う公正証書であれば、これらの争点はほぼ封じられます。
4 遺留分の放棄という方法
相続が始まる前に、遺留分を持つ相続人自身が家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄する制度もあります(民法1049条)。ご本人の意思と、放棄に合理的な理由があることが必要で、許可のハードルは低くありません。ご本人の協力が得られる場合に限られますが、選択肢として検討の余地があります。
5 請求には期限があります
遺留分侵害額請求には期限があります。相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年、また相続開始の時から10年を経過すると、請求できなくなります。遺言を執行する側としても、この期間は意識しておく必要があります。
6 当相談室でお引き受けできること

ご希望を伺ったうえでの遺言内容の設計、推定相続人の調査と遺留分の試算、財産目録の作成、公正証書遺言の作成支援(公証役場との打合せ、証人の手配を含みます)、付言事項の文案作成、遺言執行者としての就任と執行をお引き受けします。
不動産の登記は提携の司法書士、相続税の試算と申告は提携の税理士が担当します。実際に遺留分侵害額の請求がなされ、金額や評価をめぐって交渉や調停に発展した場合は、弁護士へお引き継ぎします。行政書士は紛争の代理人にはなれませんので、その線引きは最初にご説明いたします。
ご相談は、ご依頼いただくまで何回でも無料です。ご家族に知られたくないご事情がある場合、ご自宅以外の場所でお会いすることもできます。業務上知り得たことには守秘義務があり、ご家族を含め外部に漏らすことはありません。
相続おもいやり相談室(中川総合法務オフィス) 行政書士 中川 恒信 京都府長岡京市長法寺川原谷13-6 TEL 075-955-0307(受付 9:00〜18:00 土日もお電話をお受けします)


