一 条文原文

消防法第13条

政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、甲種危険物取扱者(甲種危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)又は乙種危険物取扱者(乙種危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)で、六月以上危険物取扱いの実務経験を有するもののうちから危険物保安監督者を定め、総務省令で定めるところにより、その者が取り扱うことができる危険物の取扱作業に関して保安の監督をさせなければならない。

② 製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、前項の規定により危険物保安監督者を定めたときは、遅滞なくその旨を市町村長等に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。

③ 製造所、貯蔵所及び取扱所においては、危険物取扱者(危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)以外の者は、甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければ、危険物を取り扱つてはならない。

消防法第13条の2

危険物取扱者免状の種類は、甲種危険物取扱者免状、乙種危険物取扱者免状及び丙種危険物取扱者免状とする。

② 危険物取扱者が取り扱うことができる危険物及び甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者がその取扱作業に関して立ち会うことができる危険物の種類は、前項に規定する危険物取扱者免状の種類に応じて総務省令で定める。

③ 危険物取扱者免状は、危険物取扱者試験に合格した者に対し、都道府県知事が交付する。

④ 都道府県知事は、左の各号の一に該当する者に対しては、危険物取扱者免状の交付を行わないことができる。

一 次項の規定により危険物取扱者免状の返納を命ぜられ、その日から起算して一年を経過しない者

二 この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反して罰金以上の刑に処せられた者で、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しないもの

⑤ 危険物取扱者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反しているときは、危険物取扱者免状を交付した都道府県知事は、当該危険物取扱者免状の返納を命ずることができる。

⑥ 都道府県知事は、その管轄する区域において、他の都道府県知事から危険物取扱者免状の交付を受けている危険物取扱者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していると認めるときは、その旨を当該他の都道府県知事に通知しなければならない。

⑦ 前各項に規定するもののほか、危険物取扱者免状の書換、再交付その他危険物取扱者免状に関し必要な事項は、政令で定める。

消防法第13条の3

危険物取扱者試験は、危険物の取扱作業の保安に関して必要な知識及び技能について行う。

② 危険物取扱者試験の種類は、甲種危険物取扱者試験、乙種危険物取扱者試験及び丙種危険物取扱者試験とする。

③ 危険物取扱者試験は、前項に規定する危険物取扱者試験の種類ごとに、毎年一回以上、都道府県知事が行なう。

④ 次の各号のいずれかに該当する者でなければ、甲種危険物取扱者試験を受けることができない。

一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による大学又は高等専門学校において化学に関する学科又は課程を修めて卒業した者(当該学科又は課程を修めて同法による専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)その他その者に準ずるものとして総務省令で定める者

二 乙種危険物取扱者免状の交付を受けた後二年以上危険物取扱いの実務経験を有する者

⑤ 前各項に規定するもののほか、危険物取扱者試験の試験科目、受験手続その他試験の実施細目は、総務省令で定める。

消防法第13条の4

都道府県は、危険物取扱者試験の問題の作成、採点その他の事務を行わせるため、条例で、危険物取扱者試験委員を置くことができる。

② 前項の危険物取扱者試験委員の組織、任期その他危険物取扱者試験委員に関し必要な事項は、当該都道府県の条例で定める。

消防法第13条の5

都道府県知事は、総務大臣の指定する者に、危険物取扱者試験の実施に関する事務(以下この章において「危険物取扱者試験事務」という。)を行わせることができる。

② 前項の規定による指定は、危険物取扱者試験事務を行おうとする者の申請により行う。

③ 都道府県知事は、第一項の規定により総務大臣の指定する者に危険物取扱者試験事務を行わせるときは、危険物取扱者試験事務を行わないものとする。

消防法第13条の6

総務大臣は、前条第二項の規定による申請が次の要件を満たしていると認めるときでなければ、同条第一項の規定による指定をしてはならない。

一 職員、設備、危険物取扱者試験事務の実施の方法その他の事項についての危険物取扱者試験事務の実施に関する計画が危険物取扱者試験事務の適正かつ確実な実施のために適切なものであること。

二 前号の危険物取扱者試験事務の実施に関する計画の適正かつ確実な実施に必要な経理的及び技術的な基礎を有するものであること。

三 申請者が、危険物取扱者試験事務以外の業務を行つている場合には、その業務を行うことによつて危険物取扱者試験事務が不公正になるおそれがないこと。

② 総務大臣は、前条第二項の規定による申請をした者が、次のいずれかに該当するときは、同条第一項の規定による指定をしてはならない。

一 一般社団法人又は一般財団法人以外の者であること。

二 この法律に違反して、刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者であること。

三 第十三条の十八第一項又は第二項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者であること。

四 その役員のうちに、次のいずれかに該当する者があること。

イ 第二号に該当する者

ロ 第十三条の九第二項の規定による命令により解任され、その解任の日から起算して二年を経過しない者

消防法第13条の7

総務大臣は、第十三条の五第一項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者の名称及び主たる事務所の所在地並びに当該指定をした日を公示しなければならない。

② 第十三条の五第一項の規定による指定を受けた者(以下この章において「指定試験機関」という。)は、その名称又は主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を総務大臣に届け出なければならない。

③ 総務大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。

主要な下位法令

危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)

(危険物保安監督者及び危険物取扱者の責務) 第三十一条 法第十三条第一項の危険物保安監督者は、危険物の取扱作業に関して保安の監督をする場合は、誠実にその職務を行わなければならない。 2 危険物取扱者は、危険物の取扱作業に従事するときは、法第十条第三項の貯蔵又は取扱いの技術上の基準を遵守するとともに、当該危険物の保安の確保について細心の注意を払わなければならない。 3 甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者は、危険物の取扱作業の立会をする場合は、取扱作業に従事する者が法第十条第三項の貯蔵又は取扱の技術上の基準を遵守するように監督するとともに、必要に応じてこれらの者に指示を与えなければならない。

(危険物保安監督者を定めなければならない製造所等) 第三十一条の二 法第十三条第一項の政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所は、製造所等のうち次に掲げるもの以外のものとする。 一 屋内貯蔵所又は地下タンク貯蔵所で、指定数量の倍数が三十以下のもの(引火点が四十度以上の第四類の危険物のみを貯蔵し、又は取り扱うものに限る。) 二 引火点が四十度以上の第四類の危険物のみを貯蔵し、又は取り扱う屋内タンク貯蔵所又は簡易タンク貯蔵所 三 移動タンク貯蔵所 四 指定数量の倍数が三十以下の屋外貯蔵所 五 引火点が四十度以上の第四類の危険物のみを取り扱う第一種販売取扱所又は第二種販売取扱所 六 指定数量の倍数が三十以下の一般取扱所(引火点が四十度以上の第四類の危険物のみを取り扱うものに限る。)で次に掲げるもの イ ボイラー、バーナーその他これらに類する装置で危険物を消費するもの ロ 危険物を容器に詰め替えるもの

関係する罰則

第四十二条 次のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。 六 第十三条第一項の規定に違反して危険物保安監督者を定めないで事業を行つた者 七 第十三条第三項の規定に違反した者

第四十四条 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。 八 ……第十三条第二項……の規定による届出を怠つた者 九 第十三条の二第五項(第十七条の七第二項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者

第四十一条の二 第十三条の十一第一項(第十七条の九第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

出典:e-Gov法令検索「消防法」(昭和23年法律第186号)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186 、同「危険物の規制に関する政令」(昭和34年政令第306号)https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000306

二 趣旨・立法背景

第三章のここまでの規定は、施設の位置・構造・設備と、その使用の許否を扱ってきた。第13条からは対象が人に移る。危険物を扱うのは結局のところ人であり、どれほど基準に適合した施設でも、扱う者が性状を知らなければ事故は起きる。設備による規制を知識と技能による規制が補う構えが、ここで組み立てられている。

制定時の昭和23年法律第186号は、この役割を「取扱主任者」に負わせていた。旧第13条は「貯藏所を設置した者(その地位を承継した者を含む。)はその貯藏所の取扱主任者を定め、これを所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない」と定め、その資格は市町村条例に委ねられていた。届出先が消防長又は消防署長であった点も、資格が市町村ごとに定められていた点も、現在とは異なる。昭和25年法律第186号が第13条第1項及び第3項中の「貯蔵所」を「製造所、貯蔵所及び取扱所」に改めている。

昭和34年法律第86号が、資格を全国共通の免状に置き換えた。同法による第13条は「製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、危険物取扱主任者免状の交付を受けている者のうちから、危険物取扱主任者を定め、危険物の取扱作業に関して保安の監督をさせなければならない」とするものであった。市町村条例によって定められていた資格が、都道府県知事の交付する免状に移ったことで、同一の資格が全国で通用することになった。昭和40年法律第65号は第13条第1項中の「危険物取扱主任者を定め」の下に「、命令で定めるところにより」を加え、監督の方法を命令に委ねている。

制度の骨格が現在の形になったのは昭和46年法律第97号である。この改正は三つのことを同時に行った。第一に、「危険物取扱主任者」という呼称を「危険物の保安の監督をする者」に改め、免状の名称を「危険物取扱者免状」に改めた。資格そのものの名称と、その資格者に担わせる職務の名称が分離したことになる。第二に、免状を甲種・乙種・丙種の三種類に区分し(第13条の2第1項)、試験も同じ三種類に区分した(第13条の3第2項)。あわせて「危険物取扱者試験は、前項に規定する危険物取扱者試験の種類ごとに、毎年一回以上、都道府県知事が行なう」という項が新設された。第三に、第13条第3項の立会いについて、「危険物取扱主任者以外の者」を「危険物取扱者……以外の者」に、「危険物取扱主任者が」を「甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者が」に改めた。丙種が新設された一方で、丙種には立会いの権限が与えられなかったのである。

試験の実施体制が変わるのは昭和50年代の末である。都道府県知事が総務大臣(当時の自治大臣)の指定する者に試験事務を行わせることができる仕組みが置かれ、昭和59年12月20日に財団法人消防試験研究センターが指定された。同月28日の自治省告示第232号によって、その名称、主たる事務所の所在地(東京都千代田区霞が関一丁目四番二号)及び指定の日が公示されている。同センターは昭和60年4月から危険物取扱者試験と消防設備士試験の業務を行っており、平成25年4月1日に一般財団法人へ移行した。センター自身の沿革は、指定試験機関の制度が昭和59年12月の消防法改正によって創設されたとしている。制度が昭和63年法律第55号の前から存在していたことは、同改正の附則第7条が旧法の指定試験機関に関する経過措置を置いていることからも確認できる。

その昭和63年法律第55号が、第13条に二つの変更を加えた。第一に、第13条第1項の選任要件に「六月以上危険物取扱いの実務経験を有する」ことを加えた。同改正は同時に第13条の3第4項第1号にあった六月以上の実務経験に関する要件を削り、第5項を削っている。実務経験という要件が、免状を取得する側の要件から、選任する側の要件へ移されたことになる。第二に、第13条第2項の「危険物の保安の監督をする者」を「危険物保安監督者」に改めた。昭和50年法律第84号の附則が第12条の7に「危険物保安統括管理者」を導入してから十三年を経て、二つの職の呼称が揃ったことになる。同じ改正が第13条の24を新設し、市町村長等が危険物保安統括管理者又は危険物保安監督者の解任を命ずることができるものとした。呼称の統一と、両者を並べて扱う解任命令の創設は、同じ整理の表裏である。

三 文理解釈

選任の三つの要件

第13条第1項が選任の対象として掲げるのは、甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者で、六月以上危険物取扱いの実務経験を有する者である。丙種危険物取扱者は含まれない。丙種の免状を持つ者は、どれほど長く実務に従事していても危険物保安監督者になることができない。

選任義務が生じる施設は政令で定められる。危険物の規制に関する政令第31条の2は「次に掲げるもの以外のものとする」という除外方式を採る。原則としてすべての製造所等に選任義務があり、六つの号に当たるものだけが外れる。外れる類型を見ると、引火点が四十度以上の第四類のみを扱う小規模な施設と、移動タンク貯蔵所である。移動タンク貯蔵所は規模や取り扱う危険物を問わず常に除外される。車両に固定されたタンクで移送する施設であるから、特定の場所に監督者を置くという発想がなじまず、第16条の2が危険物取扱者の乗車を義務づけることでこれに代えている。

監督の範囲が免状に連動すること

第13条第1項は「その者が取り扱うことができる危険物の取扱作業に関して保安の監督をさせなければならない」と定める。監督の範囲は、選任された者の免状が及ぶ範囲に限られる。乙種は免状に指定された類についてのみ取り扱い及び立会いができるため(第13条の2第2項)、第四類の指定を受けた乙種危険物取扱者を選任しても、第五類を扱う作業について監督させることはできない。複数の類を扱う施設では、甲種を選任するか、必要な類の指定を受けた乙種を選任するかの判断が生じる。

立会いの構造

第13条第3項は、危険物取扱者以外の者が危険物を取り扱う場合に、甲種又は乙種の立会いを求める。禁止の対象は取扱者以外の者の取扱いであり、立会いがあれば適法となる。危険物の規制に関する政令第31条第3項は、立会いをする者について、取扱作業に従事する者が貯蔵又は取扱いの技術上の基準を遵守するように監督し、必要に応じて指示を与えなければならないと定める。単に同じ場所にいることでは足りない。

丙種は立会いをすることができない。丙種危険物取扱者は自ら定められた危険物を取り扱うことはできるが、無資格者の作業に立ち会う権限を持たない。給油取扱所のように丙種が多く配置される現場では、無資格の従業者に給油作業をさせる場合、丙種の立会いでは第13条第3項を満たさない。

罰則の配分

第13条第1項に違反して危険物保安監督者を定めないで事業を行った者は第42条第1項第6号により、第13条第3項に違反した者は同項第7号により、いずれも六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処される。前回までに見たとおり、第12条の7第1項の危険物保安統括管理者の選任義務には罰則がない。事業所の統括管理者には罰則を置かず、施設の保安監督者には罰則を置くという差は、後者が資格を要する地位であり、確保に実質的な手当てを要することに対応するものと考えられる。

両罰規定については差が生じる。第45条第3号は第42条第1項から第7号及び第10号を除いて掲げているため、第6号(選任義務違反)は法人処罰の対象となるが、第7号(立会い義務違反)は対象外である。選任は事業者の組織としての判断であり、立会いを欠く取扱いは現場での個別の行為であるという区別が、ここに現れている。

第13条第2項の選任・解任の届出を怠った場合は第44条第8号、第13条の2第5項の返納命令に違反した場合は第44条第9号により、いずれも三十万円以下の罰金又は拘留の対象となる。これらは両罰規定の対象ではない。

免状の交付と返納

免状は危険物取扱者試験に合格した者に対し都道府県知事が交付する(第13条の2第3項)。交付する行政庁は都道府県知事であるが、免状の効力は全国に及ぶ。

第4項の不交付事由は「交付を行わないことができる」であって、交付してはならないとは定められていない。返納を命ぜられてから一年を経過しない者、この法律又はこれに基づく命令に違反して罰金以上の刑に処せられ執行を終わってから二年を経過しない者について、都道府県知事に判断の幅が残されている。

第5項の返納命令は、危険物取扱者が「この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反しているとき」に、免状を交付した都道府県知事が行う。命令権者が交付した都道府県知事に限られることから、他の都道府県で違反が現認された場合には命令ができない。これを埋めるのが第6項の通知義務である。違反を認めた都道府県知事が交付した都道府県知事に通知し、通知を受けた側が返納命令を検討する。移動タンク貯蔵所について命令権者と許可権者が分離し通知で結ぶ第11条の5第2項・第3項と同じ構造が、免状についても採られている。

返納命令は免状という資格を失わせる処分である。行政手続法第13条第1項第1号ロの「名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分」に当たるから、意見陳述の手続は聴聞である。

試験の実施と指定の二段構造

第13条の3第3項は、試験を種類ごとに毎年一回以上、都道府県知事が行うものとする。実施の義務は都道府県知事にある。第13条の4は、問題の作成、採点その他の事務を行わせるため、条例で危険物取扱者試験委員を置くことができるとする。都道府県が自ら試験を実施する場合の体制である。

第13条の5は別の経路を開く。都道府県知事は、総務大臣の指定する者に試験事務を行わせることができ(第1項)、指定は申請により行われ(第2項)、行わせるときは都道府県知事は自ら試験事務を行わない(第3項)。指定するのは総務大臣、行わせるかどうかを決めるのは都道府県知事という二段の構造である。

第13条の6第2項第1号は、指定を受けられる者を一般社団法人又は一般財団法人に限る。営利法人は排除される。第1項第3号は、他の業務を行っている場合に試験事務が不公正になるおそれがないことを求める。中立性を法人の形態と業務の兼営の両面から担保する構えである。

甲種の受験資格(第13条の3第4項)は、大学又は高等専門学校において化学に関する学科又は課程を修めて卒業した者等と、乙種免状の交付を受けた後二年以上の実務経験を有する者である。乙種と丙種には受験資格の制限がない。

四 用語解説

危険物取扱者 危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう(第13条第3項)。甲種、乙種、丙種の三種類がある。

甲種危険物取扱者 甲種危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう(第13条第1項)。すべての類の危険物の取扱いと立会いができる。

乙種危険物取扱者 乙種危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう(第13条第1項)。免状に指定された類について取扱いと立会いができる。

丙種危険物取扱者 丙種危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。総務省令で定める範囲の危険物を取り扱うことができるが、立会いをすることはできず、危険物保安監督者になることもできない。

危険物保安監督者 政令で定める製造所等について、その者が取り扱うことができる危険物の取扱作業に関して保安の監督をする者をいう(第13条第1項)。甲種又は乙種危険物取扱者で六月以上危険物取扱いの実務経験を有する者から選任する。誠実にその職務を行わなければならない(危険物の規制に関する政令第31条第1項)。第13条の24第1項により、市町村長等が解任を命ずることができる。

危険物取扱者試験事務 危険物取扱者試験の実施に関する事務をいう(第13条の5第1項)。都道府県知事が総務大臣の指定する者に行わせることができる。

指定試験機関 第13条の5第1項の規定による指定を受けた者をいう(第13条の7第2項)。昭和59年12月20日に財団法人消防試験研究センターが指定され、同月28日の自治省告示第232号により公示された。同法人は平成25年4月1日に一般財団法人消防試験研究センターへ移行している。

五 改正の経緯と内容

改正法令主な内容
昭和23年法律第186号(制定)旧第13条で、貯蔵所を設置した者に取扱主任者を定めて所轄消防長又は消防署長に届け出ることを義務づけ、資格は市町村条例に委任。取扱主任者が立ち会わなければ他の者は危険物を取り扱えないとする
昭和25年法律第186号第13条第1項及び第3項中の「貯蔵所」を「製造所、貯蔵所及び取扱所」に改正
昭和34年法律第86号第13条を全面改正し、危険物取扱主任者免状の交付を受けている者のうちから危険物取扱主任者を定める制度を創設。資格が市町村条例から都道府県知事の交付する免状に移り、全国で通用することとなる
昭和40年法律第65号第13条第1項中の「危険物取扱主任者を定め」の下に「、命令で定めるところにより」を追加。第14条を危険物施設保安員の規定に改正
昭和46年法律第97号「危険物取扱主任者」を「危険物の保安の監督をする者」に、「危険物取扱主任者免状」を「危険物取扱者免状」に改正。免状を甲種・乙種・丙種の三種類に区分し(第13条の2第1項)、試験も三種類に区分(第13条の3第2項)。試験を種類ごとに毎年一回以上都道府県知事が行う旨の項を新設。第13条第3項の立会いを甲種又は乙種に限定
昭和50年代末の改正都道府県知事が総務大臣(当時の自治大臣)の指定する者に危険物取扱者試験事務を行わせることができる制度(第13条の5以下)を創設。昭和59年12月20日に財団法人消防試験研究センターが指定され、同月28日自治省告示第232号により公示
昭和63年法律第55号第13条第1項の選任要件に「六月以上危険物取扱いの実務経験を有する」ことを追加し、第13条の3第4項第1号の同趣旨の要件を削除。第13条第2項の「危険物の保安の監督をする者」を「危険物保安監督者」に改正。第13条の24(危険物保安統括管理者又は危険物保安監督者の解任命令)を新設
令和4年法律第68号刑法等の一部を改正する法律の施行に伴い、第41条の2、第42条等の「懲役」を「拘禁刑」に改正

六 法的性格と解釈上の論点

実務経験要件が選任の側に移ったこと

昭和63年法律第55号が六月以上の実務経験を第13条第1項に移したことには、実務上の帰結がある。実務経験は免状の交付要件ではないため、乙種又は甲種の試験に合格すれば、実務経験のない者にも免状が交付される。免状を持っていても、取得から六月の実務経験を積むまでは危険物保安監督者に選任できない。採用した従業者に資格を取らせたとしても、直ちに監督者を交代させることはできない。

条文は「六月以上危険物取扱いの実務経験」と定めるだけで、その経験を当該製造所等において積むことを要件としていない。他の事業所における経験でも文理上は足りる。もっとも、消防機関の解説では、当該製造所等における六か月以上の実務経験とする理解が示されている例があり、運用には幅がある。中途採用者を監督者に充てる計画では、所轄の消防機関の解釈を事前に確かめる必要がある。

試験の合否と司法審査の限界

危険物取扱者試験の合否は、受験者にとって免状の交付を受けられるかどうかを左右する。それでは不合格の判定を訴訟で争えるかという問題が生じる。この点については、後述する最高裁判決が、国家試験の合格・不合格の判定が司法審査の対象とならないことを明らかにしている。

もっとも、審査の対象とならないのは判定の当否である。試験事務の手続に瑕疵がある場合は別に考える余地が残る。第13条の22は、指定試験機関が行う危険物取扱者試験事務に係る処分又はその不作為について総務大臣に審査請求をすることができるものとし、総務大臣を指定試験機関の上級行政庁とみなす旨を定めている。試験事務に係る行為のうち処分に当たるものについては、不服申立ての経路が用意されていることになる。

試験事務を民間法人が担う構造と監督

指定試験機関の制度は、第11条の3の危険物保安技術協会への審査委託と比べると、委ねる範囲が広い。協会に委託できるのは屋外タンク貯蔵所に係る審査であり、許可の権限は市町村長等に残る。これに対し、指定試験機関には試験事務そのものが移り、第13条の5第3項により都道府県知事は試験事務を行わないものとされる。免状の交付だけが都道府県知事の手元に残る。

実効性を支えるのは総務大臣の監督である。第13条の9第2項は役員の解任命令、第13条の12第3項は試験事務規程の変更命令、第13条の15第1項は試験事務に関する監督上必要な命令、第13条の16第1項は報告徴収と立入検査、第13条の18は指定の取消しと試験事務の停止命令を定める。委任都道府県知事の側にも、第13条の15第2項により必要な措置をとるべきことを指示する権限がある。

この監督権限が実際に行使された例がある。平成24年10月13日に実施された乙種第四類の試験で、採点機が解答カードの一部を誤読し、マークのない欄をマークがあるものと判定したため、正解をマークしていた受験者が不合格とされた。同年10月の中央試験センター分で36名の追加合格者が判明し、調査の結果、平成23年10月23日に実施された兵庫県支部の試験でも33名の追加合格者が出た。消防庁は平成24年12月18日、消防法第13条の15第1項に基づき財団法人消防試験研究センターに対する業務改善命令を発出した旨を公表している。

この事案は、試験事務が民間法人に移っている制度の特性を示す。都道府県知事は試験事務を行わないものとされているため、誤判定を自ら把握する立場にない。監督は総務大臣の権限として設計され、指定が全国に一つの法人に対して行われているため、同種の誤りは全国同時に発生する。協会への審査委託が市町村長等の選択に委ねられているのに対し、試験事務は制度上、集中の度合いが高い。

免状の返納命令と交付権者の分散

返納命令を行えるのは免状を交付した都道府県知事に限られる。免状の効力が全国に及ぶのに対し、制裁の権限は交付地に残る。第13条の2第6項の通知義務がこれを補うが、通知を受けた側が返納命令を発するかどうかは、その都道府県知事の判断である。違反を現認した都道府県と、処分をする都道府県が異なるため、事実の認定は通知された資料に依存する。

地方公共団体はこの判断について事務処理の要綱や処分基準を定めている例がある。違反行為に点数を付与し、累積した点数に応じて返納命令を検討する運用が広く見られる。前回までに見た移動タンク貯蔵所等に対する立入検査の通知(平成12年9月29日消防危第100号)が、基準不適合に対して「危険物取扱者免状の返納命令に関する運用基準に基づき、適切な違反点数を付与する」よう求めているのは、この運用を前提としたものである。

丙種という区分の位置

丙種危険物取扱者は、取り扱うことができる危険物が限られ、立会いができず、危険物保安監督者にもなれない。制度上の権限が最も狭い資格である。それにもかかわらず、令和6年度の危険物取扱者試験の受験者数では、乙種第四類に次いで丙種が多く、甲種がこれに続く。この三種類で全体の約八割を占める。

需要の所在は、丙種が担える範囲に対応している。自らガソリン、灯油、軽油等を取り扱う作業に従事する者にとって、丙種の免状は必要十分である。立会いや監督の権限を要する者は乙種以上を取得する。資格の階層が、現場で求められる役割の階層と対応している結果と見ることができる。

七 裁判例

最高裁判所第三小法廷昭和41年2月8日判決(昭和39年(行ツ)第61号)

国家試験の合格・不合格の判定が司法審査の対象となるかを正面から判断した判決である。事件名は国家試験合格変更又は損害賠償請求事件、民集第20巻2号196頁に収録されている。技術士国家試験の不合格の判定が争われた事案であり、判示事項は「技術士国家試験の合格不合格の判定に対する司法審査の許否」、裁判要旨は「技術士国家試験の合格、不合格の判定は、司法審査の対象とならない」である。

最高裁は、まず司法権の範囲を確認した。

司法権の固有の内容として裁判所が審判しうる対象は、裁判所法三条にいう「法律上の争訟」に限られ

そして「法律上の争訟」を「法令を適用することによつて解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争をいう」ものとし、「技術上または学術上に関する争は、裁判所の裁判を受けうべき事柄ではないのである」とした。そのうえで国家試験について次のように述べている。

国家試験における合格、不合格の判定も学問または技術上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、

その判断の当否を審査し具体的に法令を適用して、その争を解決調整できるものとはいえない

危険物取扱者試験も、危険物の取扱作業の保安に関して必要な知識及び技能について行うものである(第13条の3第1項)。合否の判定は知識及び技能の優劣の判断であるから、この判例の射程に入る。採点が誤りであると考える受験者が、裁判所に合格の判定を求めることはできない。

この帰結は、試験事務の適正さを行政内部の仕組みで確保するほかないことを意味する。第13条の6の指定の要件、第13条の10の試験委員の選任、第13条の12の試験事務規程、第13条の14の帳簿、第13条の15から第13条の18までの監督と制裁、第13条の22の審査請求が、司法審査の及ばない領域を埋めるために置かれている。平成24年の業務改善命令の事例で、誤判定が追加合格という形で是正されたのも、訴訟ではなく監督の経路によるものであった。

判例が現れにくい領域

第13条から第13条の7までの規定について、他に公表された裁判例は見当たらない。第13条第1項及び第3項の違反は刑事事件として処理されるが、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金という法定刑の事件が判例集に収録される頻度は高くない。第13条の2第5項の返納命令は取消訴訟の対象となる処分であるが、件数が限られる。指定試験機関の指定やその取消しは、申請者が一般財団法人消防試験研究センター一者であり、争いが生じる余地が実際上ない。

八 実務上の留意点

選任の要否の判定

危険物の規制に関する政令第31条の2は除外方式であるから、まず選任義務があるものとして出発し、六つの号に当たるかどうかを確かめる手順になる。除外の条件には「引火点が四十度以上の第四類の危険物のみ」という限定が繰り返し現れる。ガソリン(第一石油類)は引火点が四十度未満であるから、灯油や軽油のみを扱う施設が除外の対象となり得る一方、ガソリンを扱えば除外されない。給油取扱所は第31条の2の各号に挙げられていないため、規模を問わず選任義務がある。

乙種を選任する場合は、免状に指定された類が、当該施設で取り扱う危険物の類を全て含んでいるかを確かめる必要がある。類が不足していれば、その類の作業について監督が及ばない。

一人の監督者が複数の施設を兼ねる場合

原則として一人の危険物取扱者は一つの製造所等の危険物保安監督者となる。もっとも、施設の態様、規模、相互の位置関係などから十分な監督が可能であると認められる場合には、二以上の製造所等を兼ねることができるものとする運用が示されている。同一敷地内に複数の施設を持つ事業所では、兼任の可否を所轄の消防機関と事前に確認しておくことが、人員計画の前提になる。

選任・解任の届出

選任したとき及び解任したときは、遅滞なく市町村長等に届け出る(第13条第2項)。届出を怠れば第44条第8号の罰則の対象である。人事異動や退職によって監督者が不在となる期間が生じると、第13条第1項の違反となり、第42条第1項第6号の罰則と第12条の2第2項第3号の使用停止命令の対象になる。後任の選任を先に済ませ、空白を作らない段取りが必要である。異動の内示の段階で、後任者の免状の種類と類、実務経験の充足を確認しておくことが実務上の要点となる。

立会いの体制

無資格の従業者に危険物を取り扱わせる場合は、甲種又は乙種の立会いが必要である。丙種の立会いでは第13条第3項を満たさない。立会いは、作業に従事する者が技術上の基準を遵守するよう監督し、必要に応じて指示を与えることを内容とするから(危険物の規制に関する政令第31条第3項)、同じ敷地にいるだけでは足りない。無資格者が作業に当たる時間帯に、立会いができる資格者が現場にいる勤務編成になっているかを点検する必要がある。

免状の管理

免状の書換え及び再交付その他必要な事項は政令に定められている(第13条の2第7項)。記載事項に変更が生じたときは、遅滞なく、免状を交付した都道府県知事又は居住地若しくは勤務地を管轄する都道府県知事に書換えを申請する(危険物の規制に関する政令第34条)。亡失、滅失、汚損又は破損の場合は、交付又は書換えをした都道府県知事に再交付を申請する(同令第35条)。免状は業務に従事する際に携帯する義務が移動タンク貯蔵所の移送について定められており(第16条の2第3項)、これに違反すると第44条第6号の罰則の対象となる。

保安講習の受講

製造所等において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、総務省令で定めるところにより、都道府県知事等が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならない(第13条の23)。令和6年度の保安講習は全国で1,479回実施され、受講者は18万4,998人であった。講習を受けていないことは、第13条の2第5項の返納命令の要件である「この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反しているとき」に当たり得る。従事者の受講期限を一覧で管理し、期限の到来を見落とさない仕組みが求められる。

資格取得の計画

令和6年度の危険物取扱者試験は全国で4,185回実施され、受験者数は31万6,301人、合格者数は12万2,102人、平均合格率は約38.6パーセントであった。前年度と比べて実施回数は83回減り、受験者数は386人増え、合格者数は840人減っている。令和7年3月31日現在の合格者の累計は1,040万6,300人である。

試験は種類ごとに毎年一回以上行われるが、実施回数と日程は都道府県により異なる。甲種の受験には学歴又は乙種免状取得後二年以上の実務経験という資格要件があるため、将来的に甲種を要する施設の計画がある事業所では、乙種取得の時期から逆算した計画が必要になる。乙種取得後に六月の実務経験を経て監督者に選任できるという第13条第1項の要件とあわせると、必要な時期の一年以上前から準備することになる。

参考文献・資料


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