一 条文原文
消防法第7条(建築許可等についての消防長又は消防署長の同意)
第七条 建築物の新築、増築、改築、移転、修繕、模様替、用途の変更若しくは使用について許可、認可若しくは確認をする権限を有する行政庁若しくはその委任を受けた者又は建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六条の二第一項(同法第八十七条第一項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による確認を行う指定確認検査機関(同法第七十七条の二十一第一項に規定する指定確認検査機関をいう。以下この条において同じ。)は、当該許可、認可若しくは確認又は同法第六条の二第一項の規定による確認に係る建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長又は消防署長の同意を得なければ、当該許可、認可若しくは確認又は同項の規定による確認をすることができない。ただし、確認(同項の規定による確認を含む。)に係る建築物が都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第五号に掲げる防火地域及び準防火地域以外の区域内における住宅(長屋、共同住宅その他政令で定める住宅を除く。)である場合又は建築主事若しくは建築副主事が建築基準法第八十七条の四において準用する同法第六条第一項の規定による確認をする場合においては、この限りでない。
② 消防長又は消防署長は、前項の規定によつて同意を求められた場合において、当該建築物の計画が法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定(建築基準法第六条第四項又は第六条の二第一項(同法第八十七条第一項の規定によりこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定により建築主事若しくは建築副主事又は指定確認検査機関が同法第六条の四第一項第一号若しくは第二号に掲げる建築物の建築、大規模の修繕(同法第二条第十四号の大規模の修繕をいう。)、大規模の模様替(同法第二条第十五号の大規模の模様替をいう。)若しくは用途の変更又は同項第三号に掲げる建築物の建築について確認する場合において同意を求められたときは、同項の規定により読み替えて適用される同法第六条第一項の政令で定める建築基準法令の規定を除く。)で建築物の防火に関するものに違反しないものであるときは、同法第六条第一項第三号に係る場合にあつては、同意を求められた日から三日以内に、その他の場合にあつては、同意を求められた日から七日以内に同意を与えて、その旨を当該行政庁若しくはその委任を受けた者又は指定確認検査機関に通知しなければならない。この場合において、消防長又は消防署長は、同意することができない事由があると認めるときは、これらの期限内に、その事由を当該行政庁若しくはその委任を受けた者又は指定確認検査機関に通知しなければならない。
③ 建築基準法第六十八条の二十第一項(同法第六十八条の二十二第二項において準用する場合を含む。)の規定は、消防長又は消防署長が第一項の規定によつて同意を求められた場合に行う審査について準用する。
消防法施行令第1条(消防長等の同意を要する住宅)
第一条 消防法(以下「法」という。)第七条第一項ただし書の政令で定める住宅は、一戸建ての住宅で住宅の用途以外の用途に供する部分の床面積の合計が延べ面積の二分の一以上であるもの又は五十平方メートルを超えるものとする。
二 趣旨・立法背景
1 予防行政の入口としての位置づけ
第3条から第6条までが既存の建築物に生じた危険を事後的に是正する仕組みであるのに対し、第7条は建築物が出現する前の設計段階に消防機関を関与させる規定である。建築確認等の許認可を与える権限は建築行政に属するが、その権限行使に消防長又は消防署長の同意を必須の条件とすることで、火災予防の観点を建築計画の段階に組み込んでいる。
是正命令は既に建てられた建築物を対象とするため、構造の変更を求めれば多額の費用が生じ、実効性にも限界がある。設計段階での関与は、この制約を回避する手段として設けられた。令和6年版消防白書は、消防同意を、消防機関が防火の専門家の立場から建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的とする制度と説明している。
2 制定時の第7条
昭和23年法律第186号の制定時、第7条は次の一項のみであった。
第七條 建築物の新築、増築、改築、移築、用途変更又は使用について許可又は認可をする権限を有する行政廳は、当該建築物の工事施行地を管轄する消防長又は消防署長の火災の予防上当該許可又は認可が支障ない旨の同意を得なければ、当該許可又は認可をすることができない。
制定時は建築基準法がまだ存在せず、市街地建築物法の時代であったため、対象は「許可又は認可」に限られ、「確認」の語はない。同意の期限も定められていなかった。
出典:名古屋大学法令データベース「消防法(昭和23年法律第186号)」https://jahis.law.nagoya-u.ac.jp/lawdb/l/323a0186
3 建築基準法の制定による全面改正
現行第7条の骨格は、建築基準法(昭和25年法律第201号)の附則第11項による消防法第7条の改正によって形成された。建築確認が同意の対象に加えられ、同意又は不同意を通知すべき期限として3日又は7日が定められた。施行日は建築基準法と同じ昭和25年11月23日である。
施行にあたり、国家消防本部管理課長と建設省住宅局長の連名で「建築基準法及び同法関係法令の施行と消防法第7条の運用について」(昭和25年12月15日付け国消管発第292号、住発第755号)が発出された。この通達は、期限内の同意又は不同意の通知、不同意の場合の根拠法令の条文明示と理由付記、国又は地方公共団体の建築物に係る通知への対応、同意後の予防査察の励行などを指示している。令和6年10月25日付け消防予第522号が同通達を別添として引用していることからも、現在も運用の基礎として機能していることが分かる。
出典:総務省消防庁 消防予第522号(令和6年10月25日)「計画通知制度における消防長及び消防署長への通知について」https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/yobou01.pdf
4 建築基準法第93条との関係
消防同意は、消防法第7条と建築基準法第93条第1項という二つの法律に規定されている。建築基準法第93条第1項は、特定行政庁、建築主事、建築副主事又は指定確認検査機関が同法の規定による許可又は確認をする場合に消防長又は消防署長の同意を要するとし、消防法第7条とほぼ同内容のただし書を置く。
両者は対象範囲が一致しない。消防法第7条は、建築物の新築等について許可・認可・確認をする権限を有する行政庁一般を名宛人とし、建築基準法以外の法令に基づく許認可も射程に入れる。これに対し建築基準法第93条は同法の規定による許可又は確認に限られる。建築確認に係る消防同意については両条が重畳的に適用される関係にある。
この二重規定は、消防法第7条が建築基準法制定前から存在し、建築基準法制定時に同法附則で改正を受けつつ、建築基準法側にも対応規定が置かれた経緯によるものである。実務上は同一の手続として運用されるが、条文の文言には差異がある。消防法第7条第1項ただし書が都市計画法第8条第1項第5号を引用して防火地域及び準防火地域を特定しているのに対し、建築基準法第93条第1項ただし書は単に「防火地域及び準防火地域」と規定する。政令で定める住宅の内容も、消防法施行令第1条と建築基準法施行令第147条の3にそれぞれ規定されている。
三 文理解釈
1 第1項
同意を求める側
「許可、認可若しくは確認をする権限を有する行政庁若しくはその委任を受けた者」及び「指定確認検査機関」である。建築主ではない。消防同意は建築行政と消防行政という行政機関相互の手続であり、建築主と消防機関との間に直接の法律関係を生じさせるものではない。
指定確認検査機関が同意を求める側に加えられたのは、建築基準法第6条の2による民間確認制度の創設に伴うものである。括弧書により、同法第87条第1項において準用される場合、すなわち用途変更に係る確認も含まれる。
同意をする側
「当該許可、認可若しくは確認又は同法第六条の二第一項の規定による確認に係る建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長又は消防署長」である。建築主の住所地ではなく建築物の所在地を管轄する消防機関が同意権者となる。第3条第1項括弧書により、消防本部を置かない市町村においては市町村長が消防長に代わる。
効果
同意を得なければ許可・認可・確認をすることができない。同意は許認可等の有効要件であり、同意を欠く確認は違法となる。
ただし書による除外
二つの場合に同意を要しない。
第一は、確認に係る建築物が防火地域及び準防火地域以外の区域内における住宅(長屋、共同住宅その他政令で定める住宅を除く)である場合である。除外の範囲は施行令第1条によって画される。一戸建ての住宅であっても、住宅以外の用途に供する部分の床面積の合計が延べ面積の2分の1以上であるもの、又は50平方メートルを超えるものは同意を要する。したがって同意を要しないのは、防火地域及び準防火地域以外の区域内における一戸建ての専用住宅と、住宅以外の部分が延べ面積の2分の1未満かつ50平方メートル以下の兼用住宅に限られる。長屋及び共同住宅は条文上明示的に除外の対象外とされており、規模や地域にかかわらず同意を要する。
第二は、建築主事又は建築副主事が建築基準法第87条の4において準用する同法第6条第1項の規定による確認をする場合、すなわち建築設備に係る確認である。
対象行為
新築、増築、改築、移転、修繕、模様替、用途の変更、使用の八つである。「使用」が挙げられているのは、建築基準法第7条の6の仮使用認定などを想定したものである。仮設建築物の許可(建築基準法第85条)についても同意を要し、昭和25年12月15日付け通達は、仮設興行場及び博覧会建築物について用途の性質上慎重な取扱いを求めている。
2 第2項
審査の対象
「法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定…で建築物の防火に関するもの」に違反しないかどうかである。消防法令に限られず、建築基準法令や火災予防条例のうち建築物の防火に関する規定が広く対象となる。反面、防火に関しない規定、たとえば構造耐力、採光、日影、接道といった事項は同意の審査対象ではない。
括弧書は審査省略制度との調整規定である。建築基準法第6条の4第1項第1号から第3号までに掲げる建築物について建築主事等又は指定確認検査機関が確認する場合、同項により読み替えて適用される同法第6条第1項の政令で定める規定は審査から除かれる。建築確認において審査が省略される規定については、消防同意においても審査を要しないという趣旨である。
期限
建築基準法第6条第1項第3号に係る場合は同意を求められた日から3日以内、その他の場合は7日以内である。期限内に同意を与えて通知しなければならず、同意することができない事由があると認めるときも同じ期限内にその事由を通知しなければならない。
令和7年4月1日の建築基準法改正施行により、同法第6条第1項の号の構成が変わった。従前の第4号(いわゆる4号建築物)が廃止され、木造・平屋・延べ面積200平方メートル以下のものが新3号となり、それ以外の小規模建築物は新2号に移った。この結果、従前3日以内の期限で処理されていた案件の相当部分が7日以内の対象へ移行した。都市計画区域等の区域外にあり従来は確認を要しなかった建築物のうち新2号に該当するものは、新たに確認と消防同意の対象となる。
通知の相手方
同意又は不同意の事由は、同意を求めた行政庁若しくはその委任を受けた者又は指定確認検査機関に通知する。建築主への通知ではない。
3 第3項
建築基準法第68条の20第1項を準用する。同項は、型式適合認定を受けた型式に適合する型式部材等について、建築基準法令の規定に適合するものとみなす規定である。同法第68条の22第2項において準用される場合、すなわち外国型式部材等製造者の認証に係る場合も含む。
消防長又は消防署長が同意に際して行う審査についても同様の取扱いとすることで、型式適合認定を受けた部材について建築主事等と消防機関が重複して審査することを避けている。
四 用語解説
消防同意:消防法第7条第1項及び建築基準法第93条第1項に基づき、建築物に係る許可・認可・確認の前提として消防長又は消防署長が与える同意。行政機関相互間の行為であり、建築主に対する行政処分ではない。
建築主事:建築基準法第4条に基づき特定行政庁が置く職員で、確認に関する事務をつかさどる者。
建築副主事:令和4年法律第69号により創設された職で、二級建築士試験に合格した者から任命され、建築主事の業務範囲のうち一定規模以下の建築物に係る確認等を担当する。令和7年4月1日施行。
指定確認検査機関:建築基準法第77条の21第1項に規定する機関で、国土交通大臣又は都道府県知事の指定を受けて確認検査の業務を行う民間法人。平成10年法律第100号により創設された。
特定行政庁:建築基準法第2条第35号。建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長、その他の区域については都道府県知事をいう。
計画通知:建築基準法第18条に基づき、国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物について、確認に代えて建築主事等に計画を通知する手続。同法第93条第4項により消防長又は消防署長への通知が行われる。同意ではないため、消防機関は「支障がない」又は「支障がある」旨を回答する。
防火地域・準防火地域:都市計画法第8条第1項第5号に掲げる地域地区。市街地における火災の危険を防除するため定められる。
型式適合認定:建築基準法第68条の10に基づき、建築材料や建築物の部分の型式が建築基準法令の規定に適合することについて国土交通大臣が行う認定。
審査不能:申請書類の不備等により同意又は不同意の判定ができない場合の実務上の取扱い。法律上の概念ではなく、各消防本部の事務処理規程に定めが置かれている。
五 改正の経緯と内容
| 改正法 | 主な内容 |
|---|---|
| 昭和23年法律第186号(制定) | 建築物の新築等について許可又は認可をする権限を有する行政庁に、消防長又は消防署長の同意取得を義務づけ。確認は対象外、期限の定めなし |
| 昭和25年法律第201号(建築基準法)附則第11項 | 建築確認を同意の対象に追加。同意又は不同意の通知期限として3日又は7日を規定。昭和25年11月23日施行 |
| 昭和40年法律第65号ほか | 引用条項の整理 |
| 平成10年法律第100号(建築基準法改正) | 指定確認検査機関の創設に伴い、同法第6条の2第1項の確認を行う指定確認検査機関を同意取得義務者に追加 |
| 令和4年法律第69号(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律) | 建築副主事の創設に伴う文言追加。建築基準法第6条第1項の号の再編(4号建築物の廃止、新2号・新3号への移行)に伴い、3日以内の期限の対象を同項第4号から第3号へ変更。ただし書の準用条項を第87条の2から第87条の4へ変更。令和7年4月1日施行 |
| 令和6年法律第53号(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律) | 計画通知制度の民間開放。指定確認検査機関が国等の建築物の計画通知に係る審査等を行えることとし、建築基準法第93条第4項の通知の主体に加えた。令和6年11月1日施行 |
昭和25年改正により定められた3日又は7日の期限は、その後70年以上にわたり数値としては変更されていない。他方、期限の適用区分は建築基準法第6条第1項の号の構成に連動しており、同法の改正のたびに実質的な適用範囲が変動する構造になっている。令和7年4月1日の改正はその典型例である。
六 法的性格と解釈上の論点
1 同意の処分性
消防長又は消防署長の同意及び不同意は、抗告訴訟の対象となる行政処分ではない。最高裁は、消防法第7条による消防長の同意は知事に対する行政機関相互間の行為であって訴訟の対象となる行政処分ということはできないと判示している。
この帰結として、不同意によって確認が得られない建築主は、消防機関を相手方として争うことはできず、建築主事等による確認の拒否又は不作為を対象として、審査請求(建築基準法第94条)又は取消訴訟・不作為の違法確認訴訟によることになる。消防機関の判断は、その訴訟における確認拒否の違法性判断の中で間接的に審理される。
2 同意の審査範囲
第2項は審査対象を「建築物の防火に関するもの」と定めるにとどまり、外延は条文からは明確でない。実務では、平成7年1月10日付け消防予第2号が、建築確認に係る消防同意の審査事項のうち建築基準法及び建築基準法施行令に関するものについて、建築物の用途区分に応じた審査事項と適用基準を別表で示している。規制緩和の一環として事務手続の簡素化・迅速化を図る趣旨であり、現場調査を要する審査事項については必要に応じて行うこととされた。必要に応じて審査する場合として、周囲が木造密集市街地等であり火災時に周辺への重大な被害が懸念される場合、大規模な建築物や複雑な用途・計画を有する建築物で火災時の安全性確保が特に重要である場合、その他特に必要と認められる場合が挙げられている。
出典:総務省消防庁 消防予第2号(平成7年1月10日)「消防法第7条の規定に基づく建築物の確認に対する同意事務の取扱いについて」https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/070110yo2.pdf
実務上は、消防同意の機会に消防用設備等の設置計画についての指導が併せて行われることが多い。もっとも、消防法第17条に基づく消防用設備等の設置義務は建築物の完成後に履行されるものであり、同意の審査対象と設備設置指導の範囲は本来別個である。多くの消防本部の事務処理要綱が、同意手続と消防用設備等設置計画書の提出を一体として規律しているのは、この区別を実務的に架橋する工夫である。
3 期限の法的性質
3日又は7日の期限は、消防長又は消防署長に課された行為義務の期限である。期限を徒過した場合に同意があったものとみなす規定は置かれていない。したがって期限経過後も同意がなければ建築主事等は確認をすることができず、確認手続は停滞する。建築基準法第6条第4項の確認審査期間との整合が問題となりうる場面である。
この点を緩和しているのが、各消防本部の事務処理規程に置かれる「審査不能」の取扱いである。申請書類の内容が不備で同意・不同意の判定ができない場合や、計画が現地と相違し防火上支障があり計画変更を要する場合に、理由を付して申請書を返却する運用である。返却により同意を求められた状態が解消され、再提出時から期限が再進行する扱いとなる。法律に根拠を持たない実務上の取扱いでありながら、法定期限の実質的な起算点を左右する機能を果たしている。この構造について正面から論じた文献は多くない。
4 不同意の件数と制度の実態
令和6年版消防白書によれば、令和5年度の全国における消防同意事務の処理件数は18万6,218件であり、そのうち不同意としたものは9件である。平成30年度は処理件数23万9,870件、不同意19件であった。
不同意の割合は極めて低い。これは消防同意が形骸化していることを意味するのではなく、設計段階での事前協議と、審査不能の返却による計画変更を通じて、不同意に至る前に是正が完了していることを示している。制度の実効性は、正式な同意手続よりも、その前段階の事前相談と協議に支えられている。
出典:総務省消防庁「令和6年版 消防白書」第1章第1節「6.消防用設備等」https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r6/chapter1/section1/para2/68011.html
5 計画通知との区別
国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物については、建築確認ではなく建築基準法第18条の計画通知の手続による。この場合、消防機関に対しては同法第93条第4項に基づく通知が行われ、消防法第7条の同意は行われない。消防機関の回答は「支障がない」又は「支障がある」の形をとる。
昭和25年12月15日付け通達は、通知を受けたときは消防法第7条第2項に定める期限に準じて審査の結果を通知すべきものとしている。令和6年10月25日付け消防予第522号も、令和6年11月1日から指定確認検査機関が計画通知の審査を行いうることとなったことを受け、同様の取扱いを指示している。期限の適用が「準じて」にとどまる点で、同意手続とは法的な拘束の度合いが異なる。
6 同意後の責任
同意を与えた後に当該建築物で火災が発生した場合、同意の違法を理由に国家賠償が認められるかが問題となる。裁判例は、消防長の同意が建築主事に対する行政機関相互間の行為であり、建築主事の確認処分と独立に違法を論ずる意味はないとする立場をとっている。
もっとも、これは同意行為それ自体を独立の請求原因とすることを否定する趣旨であり、消防機関が火災予防上の職務を怠ったことについて別途責任を問われる余地まで否定するものではない。昭和25年12月15日付け通達が、同意を与えた後でも完成後の建築物に対する予防査察の励行に努めるべきものとしているのは、同意が事後の監督責任を免除するものではないことを前提としている。
七 裁判例
1 最判昭和34年1月29日(書類返還損害賠償並びに慰謝料請求事件)
工場の再築に伴う建築確認申請に際し、消防長がいったん行った同意を事情の変更を理由に取り消したことについて、申請者が同意取消処分の取消し及び無効確認並びに損害賠償を求めた事案である。
第一審の福岡地判昭和26年2月28日は、同意取消処分は抗告訴訟の対象となりうるとしつつ、取消しを求める訴えは出訴期間を経過した不適法なものとして却下し、無効確認請求については明白重大な瑕疵ある処分ではないとし、損害賠償請求については被告適格を欠くとして請求を棄却した。
控訴審の福岡高判昭和29年2月26日は、建築許可申請をした控訴人は知事の処分に対して不服の訴えを提起すべきであり、同意取消処分の取消しを求めることも無効確認を求めることも許されないとして、控訴を棄却するとともに無効確認の訴えを却下した。
上告審は、消防長の同意は知事に対する行政機関相互間の行為であって訴訟の対象となる行政処分ということはできないとして、取消し及び無効確認の訴えを不適法とし、上告を棄却した。消防同意の処分性を否定した先例として現在も参照される。
2 新潟地判昭和63年4月28日(建築確認及び消防同意に係る損害賠償請求事件)
建物の建築確認申請に際し、申請建物以外の既存建物の接道義務違反を理由に不適合とすべきであったのに確認をしたこと、消防同意を現地調査せずに行い既存建築物の接道義務違反を認識しなかったこと、特定行政庁が既存建築物について是正措置権限を行使しなかったことが違法であるとして、市に対し国家賠償が請求された。
判決は、建築確認の対象は申請に係る建物の計画が建築関係規定に適合するか否かにとどまるとし、消防長の同意は建築主事に対する行政相互間の行為であって建築主事の確認処分と独立に違法を論ずる意味はないとした。是正措置命令については特定行政庁の裁量に委ねられ、権限不行使に著しい裁量権の濫用があったとは認められないとして請求を棄却した。
消防同意の瑕疵を独立の国家賠償請求原因として構成することが困難であることを示した事案である。
出典:日本消防設備安全センター「違反データベース・判例事例索引」https://www.fesc.or.jp/ihanzesei/owner/pdf/hanrei120726.pdf
八 実務上の留意点
1 同意の要否の判定
確認申請を受けた段階で、防火地域又は準防火地域内にあるか、長屋・共同住宅に該当しないか、一戸建ての住宅であっても住宅以外の用途部分が延べ面積の2分の1以上又は50平方メートルを超えないかを順に確認する。兼用住宅の付属車庫や物置の面積算入をめぐる判断は自治体間で運用が分かれることがあり、静岡県のように建築行政連絡会議で取扱いを合意している例もある。事前に特定行政庁と消防本部の間で判定基準を共有しておくことが望ましい。
2 期限管理
令和7年4月1日以後、3日以内の期限が適用されるのは建築基準法第6条第1項第3号に係る場合に限られる。新2号建築物に移行した案件は7日以内となる。従前の運用のまま3日を前提とした処理日程を組むと、期限計算を誤る。期限の起算は同意を求められた日であり、不同意の事由の通知も同じ期限内に行う必要がある。
3 不同意の理由付記
昭和25年12月15日付け通達は、同意又は不同意のいずれか一方の明確な表示をすること、不同意の場合は根拠法令の条文を明示して理由を付すことを求めている。処分性が否定される行為ではあるが、建築主事等が確認を拒否する際の理由として引き継がれるため、法令の条文と適合しない事実を具体的に記載する必要がある。
4 審査不能の取扱い
審査不能として返却する場合は、その理由を書面で明示する。返却が期限の潜脱と評価されないよう、返却事由は書類の不備や計画と現地の相違など客観的なものに限り、審査内容に踏み込んだ実質的な判断を審査不能として処理することは避ける。各消防本部の事務処理規程に審査不能の定義と手続を明記しておくことが、運用の透明性を確保する上で有効である。
5 計画通知への対応
建築基準法第93条第4項に基づく通知を受けた場合は、同意ではなく審査結果の通知として回答する。令和6年11月1日以後は指定確認検査機関からも通知が行われる。消防予第522号により、指定確認検査機関からの通知には建築主から提出された書類又はその内容を記載した書類が添付され、機関名、代表者氏名、審査結果、返却方法、担当者氏名及び連絡先が明示されることとなった。様式の定めはないため、各消防本部が回答様式を整備しておく。
6 事前協議
不同意が年間10件前後にとどまる実態は、正式な同意手続の前段階で問題が解決されていることを示している。消防用設備等の設置計画、避難施設の配置、防火区画の構成については、確認申請前に設計者と消防本部予防担当との協議を行う運用が定着している。事前協議の内容を記録に残し、同意審査時の判断と齟齬が生じないようにする。
7 電子申請への対応
東京消防庁が令和5年10月23日から消防同意の電子申請を開始するなど、電子化が進んでいる。段階的に計画通知のみ、あるいは特定の規模の建築物のみを対象とする消防本部もあり、紙による従来の手続も併存している。申請前に所轄消防本部の対応状況を確認する。
8 同意後の予防査察
昭和25年12月15日付け通達は、建築主事の行う事前の確認が重要事項に限定され現場における検査に重点が置かれていることを踏まえ、消防長又は消防署長は同意を与えた後でも完成後の建築物に対する予防査察の励行に努めるべきものとしている。同意は設計図書に基づく審査であり、施工段階での逸脱を捕捉するものではない。第4条の立入検査及び消防法第17条の3の2の設置届出・検査と組み合わせて運用する。
参考文献・資料
- e-Gov法令検索「消防法」(昭和23年法律第186号)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186
- 名古屋大学大学院法学研究科 法令データベース「消防法(昭和23年法律第186号)」https://jahis.law.nagoya-u.ac.jp/lawdb/l/323a0186
- 衆議院 制定法律「法律第百八十六号(昭二三・七・二四)」https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/00219480724186.htm
- 総務省消防庁 消防予第522号(令和6年10月25日)「計画通知制度における消防長及び消防署長への通知について」(別添として国住指第277号及び昭和25年12月15日付け国消管発第292号・住発第755号を収録)https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/yobou01.pdf
- 総務省消防庁 消防予第2号(平成7年1月10日)「消防法第7条の規定に基づく建築物の確認に対する同意事務の取扱いについて」https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/070110yo2.pdf
- 総務省消防庁「令和6年版 消防白書」第1章第1節「6.消防用設備等」https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r6/chapter1/section1/para2/68011.html
- 総務省消防庁「令和元年版 消防白書」第1章第1節「6.消防用設備等」https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r1/chapter1/section1/para2/47651.html
- 日本消防設備安全センター「違反データベース・判例事例索引」https://www.fesc.or.jp/ihanzesei/owner/pdf/hanrei120726.pdf
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