一 条文原文

消防法第11条の3

市町村長等は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる事項を危険物保安技術協会(第十四条の三第三項において「協会」という。)に委託することができる。

一 第十一条第二項の場合において、同条第一項の規定による許可の申請に係る貯蔵所が政令で定める屋外タンク貯蔵所(屋外にあるタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所をいう。以下同じ。)であるとき。 当該屋外タンク貯蔵所に係る構造及び設備に関する事項で政令で定めるものが第十条第四項の技術上の基準に適合するかどうかの審査

二 前条第一項の場合において、同項の貯蔵所が政令で定める屋外タンク貯蔵所であるとき。 当該屋外タンク貯蔵所に係る特定事項のうち政令で定めるものが第十条第四項の技術上の基準に適合するかどうかの審査

消防法第11条の4

製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しないで、当該製造所、貯蔵所又は取扱所において貯蔵し、又は取り扱う危険物の品名、数量又は指定数量の倍数(当該製造所、貯蔵所又は取扱所において貯蔵し、又は取り扱う危険物の数量を当該危険物の指定数量で除して得た値(品名又は指定数量を異にする二以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合には、当該貯蔵又は取扱いに係るそれぞれの危険物の数量を当該危険物の指定数量で除して得た値の和)をいう。)を変更しようとする者は、変更しようとする日の十日前までに、その旨を市町村長等に届け出なければならない。

② 前項の場合において、別表第一の品名欄に掲げる物品のうち同表第一類の項第十一号、第二類の項第八号、第三類の項第十二号、第五類の項第十一号又は第六類の項第五号の危険物は、当該物品に含有されている当該品名欄の物品が異なるときは、それぞれ異なる品名の危険物とみなす。

③ 第十一条第七項の規定は、同項に規定する製造所、貯蔵所又は取扱所につき第一項の届出があつた場合について準用する。

消防法第11条の5

市町村長等は、製造所、貯蔵所(移動タンク貯蔵所を除く。)又は取扱所においてする危険物の貯蔵又は取扱いが第十条第三項の規定に違反していると認めるときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者に対し、同項の技術上の基準に従つて危険物を貯蔵し、又は取り扱うべきことを命ずることができる。

② 市町村長(消防本部及び消防署を置く市町村以外の市町村の区域においては、当該区域を管轄する都道府県知事とする。次項及び第四項において同じ。)は、その管轄する区域にある移動タンク貯蔵所について、前項の規定の例により、第十条第三項の技術上の基準に従つて危険物を貯蔵し、又は取り扱うべきことを命ずることができる。

③ 市町村長は、前項の規定による命令をしたときは、当該命令に係る移動タンク貯蔵所につき第十一条第一項の規定による許可をした市町村長等に対し、総務省令で定めるところにより、速やかに、その旨を通知しなければならない。

④ 市町村長等又は市町村長は、それぞれ第一項又は第二項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。

⑤ 前項の標識は、第一項又は第二項の規定による命令に係る製造所、貯蔵所又は取扱所に設置することができる。この場合においては、第一項又は第二項の規定による命令に係る製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。

主要な下位法令

危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)

第八条の二の三 法第十一条の三第一号の政令で定める屋外タンク貯蔵所は、屋外タンク貯蔵所で、その貯蔵し、又は取り扱う液体の危険物の最大数量が五百キロリットル以上のものとする。 2 法第十一条の三第一号の屋外タンク貯蔵所に係る構造及び設備に関する事項で政令で定めるものは、液体危険物タンクのタンク本体に関する事項並びに液体危険物タンクの基礎及び地盤に関する事項とする。 3 法第十一条の三第二号の政令で定める屋外タンク貯蔵所は、屋外タンク貯蔵所で、その貯蔵し、又は取り扱う液体の危険物の最大数量が千キロリットル以上のもの(以下「特定屋外タンク貯蔵所」という。)とする。 4 法第十一条の三第二号の屋外タンク貯蔵所に係る特定事項のうち政令で定めるものは、液体危険物タンクの基礎及び地盤に関する事項、液体危険物タンクの溶接部に関する事項並びに岩盤タンクのタンク構造に関する事項とする。

第七条の四 法第十一条第七項(法第十一条の四第三項において準用する場合を含む。)の規定により、市町村長等は、次の各号に掲げる許可又は届出の受理をしたときは、当該各号に定める者に通報しなければならない。 一 市町村長又は都道府県知事による法第十一条第一項の規定による許可又は法第十一条の四第一項の規定による届出の受理 当該市町村又は都道府県の区域を管轄する都道府県公安委員会(当該許可又は届出に係る製造所等が海域に係るものである場合には、都道府県公安委員会及び海上保安庁長官)

関係する協会の規律(消防法第三章の二)

第十六条の三十六 協会は、市町村長等から第十一条の三又は第十四条の三第三項の規定による屋外タンク貯蔵所に係る審査の委託に係る契約の申込みがあつたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。 2 協会は、前項の契約が成立したときは、遅滞なく、当該契約に係る同項の審査を行わなければならない。

第十六条の三十八 協会は、審査事務を行うときは、政令で定める資格を有する者に実施させなければならない。 2 審査事務を実施する者(以下「検査員」という。)は、誠実にその職務を行わなければならない。 3 総務大臣は、検査員がこの法律若しくはこの法律に基づく命令若しくは審査事務規程に違反したとき、又はその者にその職務を行わせることが審査事務の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、協会に対し、検査員の解任を命ずることができる。

出典:e-Gov法令検索「消防法」(昭和23年法律第186号)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186 、同「危険物の規制に関する政令」(昭和34年政令第306号)https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000306

二 趣旨・立法背景

この三条は、条文の並びが連続しているだけで、規律の性質はそれぞれ異なる。第11条の3は行政庁の技術的判断力を外部から補う仕組み、第11条の4は事業者に継続的な情報提供を求める仕組み、第11条の5は違反状態に介入する仕組みである。許可と完成検査という入口の手続を定めた第11条・第11条の2に続いて、施設が稼働していく過程を支える三つの装置がここに置かれている。

成立の順序は条文の並びと逆である。先に生まれたのは第11条の4と第11条の5であった。昭和40年法律第65号が「第十一条の次に次の二条を加える」として、旧第11条の2に「製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しないで、当該製造所、貯蔵所又は取扱所において貯蔵し、又は取り扱う危険物の種類又は数量を変更しようとする者は、変更しようとする日の十日前までに、その旨を市町村長等に届け出なければならない」と定め、旧第11条の3に「市町村長等は、製造所、貯蔵所又は取扱所においてする危険物の貯蔵又は取扱いが第十条第三項の規定に違反していると認めるときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者に対し、同項の技術上の基準に従つて危険物を貯蔵し、又は取り扱うべきことを命ずることができる」と定めた。昭和34年法律第86号が許可と完成検査という入口を作り、その六年後に、稼働中の施設を把握する届出と、稼働中の違反を正す命令が加わったことになる。入口の審査だけでは危険物施設を規律できないという認識が、この六年の間に現れている。

協会への委託は、これらより十一年遅れて昭和51年法律第37号によって新第11条の3として挿入された。同じ改正が完成検査前検査(新第11条の2)と危険物保安技術協会(第三章の二)および保安検査(第14条の3)を創設し、旧第11条の2を第11条の4、旧第11条の3を第11条の5に繰り下げている。昭和49年12月の三菱石油水島製油所の重油流出事故を受けた改正である。大容量の屋外タンクの基礎・地盤の沈下や支持力、タンク本体の板厚や溶接施工方法を審査するには、土質力学と溶接工学にわたる技術的能力が必要となる。市町村消防の体制でこれを全国的に確保することは難しい。もっとも、国が直接規制する方式に切り替えれば、市町村が消防責任を負うという消防組織法の基本構造を崩すことになる。そこで法は、許可と検査の権限を市町村長等に残したまま、技術審査の部分だけを全国に一つの法人に集約し、市町村長等が必要に応じて委託できる形を選んだ。昭和52年3月30日消防危第56号は、この改正に伴う政令の内容として、協会に委託できる事項が許可審査におけるタンク本体および基礎・地盤、完成検査前検査におけるタンクの基礎・地盤および溶接部、保安検査におけるタンク底部の溶接部であることを示している。委託できるのは「審査」であって、許可や検査そのものではない。

第11条の4はその後、昭和63年法律第55号によって改められた。第1項の届出事項が「種類又は数量」から「品名、数量又は指定数量の倍数」に改まり、倍数の定義が条文に書き込まれた。同じ改正が、第1項の次に新たな第2項として含有物品に関するみなし規定を加え、第11条第7項を準用する従前の第2項を第3項へ移している。改め文が「同条第二項中『前項』を『第一項』に改め、同条第一項の次に次の一項を加える」としていることから、この挿入と繰下げの経過を読み取ることができる。指定数量が別表から政令に移り、別表が品名欄と性質欄による性状区分の形式に改まったことに対応した整理である。

第11条の5の第2項および第3項は、第1項の繰下げの後に追加されたものである。移動タンク貯蔵所は常置場所の市町村長等から許可を受けて全国を走行するため、違反状態を現認する行政庁と許可をした行政庁が一致しない。この離れを埋めるために、所在地の市町村長が命令を行い、許可をした市町村長等に通知する経路が設けられた。追加の時期は、後述する平成14年法律第30号の改め文が第2項中の「次項」を「次項及び第四項」に改めていることから、少なくとも同改正の前には置かれていたことが確認できる。

第4項および第5項は平成14年法律第30号による。この改正は東京都新宿区歌舞伎町のビル火災を契機とするものであり、第二章の防火対象物に関する規定に公示の仕組みを導入したことで知られる。しかし同改正の及んだ範囲は第二章にとどまらない。第11条の5に公示と標識の二項を加えたうえで、第12条第3項、第12条の2第3項、第12条の3第2項、第13条の24第2項、第16条の3第6項、第16条の6第2項に、これを準用する規定を一括して張っている。危険物施設に対する命令についても、命令の存在を外部に知らせる仕組みがこのときに整った。公示制度は火災の教訓から生まれた第二章の制度という理解にとどまると、第三章における同時の整備を見落とすことになる。

三 文理解釈

委託の対象が「審査」に限られること

第11条の3の柱書は「当該各号に掲げる事項を……委託することができる」とし、各号が掲げる事項はいずれも「……技術上の基準に適合するかどうかの審査」である。許可(第11条第1項)、完成検査(第11条第5項)、完成検査前検査(第11条の2第1項)という行為そのものは委託の対象になっていない。協会は技術的判断の材料を提供する立場にとどまり、処分を行うのは市町村長等である。

この切り分けは、他の仕組みと比べると一層はっきりする。危険物の規制に関する政令第8条の2の2は、完成検査前検査のうち水張検査と水圧検査について「市町村長等以外の他の行政機関も行うことができる」と定める。検査そのものを委ねる相手は他の行政機関であり、民間法人である協会に委ねられるのは審査だけである。同じ第三章の中で、委ねる相手の性質に応じて委ねる行為の種類が分けられている。

二つの場面と容量の区分

第1号は「第十一条第二項の場合」、すなわち設置又は変更の許可の審査の場面である。対象は液体の危険物の最大数量が500キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所であり、委託できる審査事項はタンク本体に関する事項と基礎及び地盤に関する事項である(危険物の規制に関する政令第8条の2の3第1項・第2項)。第2号は「前条第一項の場合」、すなわち完成検査前検査の場面である。対象は1,000キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所、すなわち特定屋外タンク貯蔵所であり、委託できる審査事項は基礎及び地盤に関する事項、溶接部に関する事項、岩盤タンクのタンク構造に関する事項である(同条第3項・第4項)。許可審査の段階では500キロリットルから対象となり、完成検査前検査の段階では1,000キロリットルからとなる。設計の妥当性を問う場面では広く、施工の結果を確認する場面では絞られている。

なお、第14条の3第3項は保安検査についても同様の委託を認めており、第16条の10と第16条の34第1項第1号は、第11条の3とこの規定の双方を協会の業務の根拠として掲げている。

「できる」規定であること

柱書は「委託することができる」である。委託は市町村長等の判断に委ねられており、自ら審査する体制があるのであれば委託しなくてもよい。受託者の側はこれと対照的で、第16条の36第1項が「正当な理由がなければ、これを拒んではならない」と定め、第2項が契約成立後の遅滞ない審査を義務づけている。委託する側に選択の自由があり、受託する側に拒む自由がない。全国に一つしか設立されない法人(第16条の12)に審査能力を集約した制度であるから、受託の自由を認めれば審査を受けられない地域が生じる。この非対称は制度の裏側にある必然である。

届出事項と許可事項の境界

第11条の4第1項は「位置、構造又は設備を変更しないで」と書き起こす。位置・構造・設備を変更するなら第11条第1項後段の許可であり、それらを変えずに扱う危険物の品名・数量・倍数だけを変えるなら届出である。境界はこの三語に置かれている。もっとも、扱う危険物を変えれば必要な保有空地の幅や消火設備が変わることがあり、その場合には位置又は設備の変更を伴うことになる。届出で済むか許可を要するかは、変更の対象として申告された事項の形式ではなく、技術上の基準の適用結果によって決まる。

届出の時期は「変更しようとする日の十日前まで」である。事前の届出であり、変更後の届出では義務を履行したことにならない。昭和40年法律第65号の附則が、施行後十日以内の変更について「十日前までに」を「あらかじめ」と読み替える経過措置を置いていたことからも、この十日が事前の猶予期間として意識されていたことがわかる。

第2項のみなし規定が及ばない範囲

第2項が挙げるのは、別表第一の第一類の項第十一号、第二類の項第八号、第三類の項第十二号、第五類の項第十一号、第六類の項第五号である。これらはいずれも「前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの」という号であり、個別の物品名ではなく含有関係によって範囲が定まる。そこで、含有されている物品が異なれば別の品名として扱い、届出を要することとした。

第四類の項はこの列挙に入っていない。第四類(引火性液体)は、特殊引火物、第一石油類からアルコール類、第二石油類以下へと、引火点や発火点の数値によって区分されており、「含有するもの」という号を持たない。したがって、同じ第二石油類に属する物品の間で化学物質を入れ替えても、第2項のみなしは働かない。危険物施設の大半が第四類を扱う施設であることを踏まえると、法律上の届出義務が及ぶ範囲はこの点で狭い。消防機関の審査基準が、品名変更に該当しない化学名や商品名の変更についても届出を求める運用を置いていることがあるのは、この隙間を実務で補うものである。

第3項が引き込む通報

第3項は第11条第7項を準用する。許可をしたときの公安委員会等への通報の仕組みが、届出を受理したときにも働く。危険物の規制に関する政令第7条の4第1号が、許可と並べて「法第十一条の四第一項の規定による届出の受理」を通報の対象として明記している。通報を要する施設は同令第7条の3が指定しており、指定数量の倍数が十以上の製造所、百五十以上の屋内貯蔵所、二百以上の屋外タンク貯蔵所、百以上の屋外貯蔵所、移送取扱所、倍数が十以上の一般取扱所である。倍数の変更によってこれらの区分に入った場合、届出の受理が通報の引き金となる。届出を一枚の様式の提出として扱っていると、この連動を見落とす。

命令の名宛人と移動タンク貯蔵所の除外

第11条の5第1項が対象とするのは「製造所、貯蔵所(移動タンク貯蔵所を除く。)又は取扱所」である。移動タンク貯蔵所は第1項の対象から除かれており、第2項がこれを受けて、「その管轄する区域にある移動タンク貯蔵所について、前項の規定の例により」命令できるとする。命令権者は第1項では「市町村長等」、第2項では「市町村長」である。第2項の括弧書きにより、消防本部及び消防署を置く市町村以外の市町村の区域ではこれが都道府県知事に読み替えられる。

その結果、移動タンク貯蔵所については、設置の許可をした市町村長等には第11条の5の命令権限がない。命令できるのは、その車両が現に所在する区域の市町村長である。許可権者と命令権者が、施設の類型そのものによって分かれる唯一の場面である。第3項の通知は、この分離を事後に縫い合わせる経路として置かれている。

第1項の名宛人は「所有者、管理者又は占有者」であり、第5条第1項などに見られる「権原を有する」という限定が付いていない。命令の内容が危険物の貯蔵又は取扱いの方法を正すことであって、工作物の改修のように権原を要する行為ではないためである。現に貯蔵・取扱いを行っている者に対して直接命ずることができる。

四 用語解説

危険物保安技術協会 第11条の3又は第14条の3第3項の規定による市町村長等の委託に基づく屋外タンク貯蔵所に係る審査を行い、あわせて危険物等の貯蔵・取扱い・運搬の安全に関する試験、調査、技術援助等を行う法人である(第16条の10)。一を限り設立される(第16条の12)。役員となることができない者として、製造所等の所有者・管理者・占有者やそれらが法人であるときのその役員、工事の請負を業とする者およびこれらの事業者の団体の役員が挙げられており(第16条の26第2号・第3号)、審査の中立性が役員の欠格事由によって担保されている。役員・職員の守秘義務違反には一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金が定められ(第16条の32、第41条の4)、役員及び職員は刑法その他の罰則の適用については公務に従事する職員とみなされる(第16条の33)。

審査事務 協会が行う第16条の34第1項第1号の業務、すなわち第11条の3又は第14条の3第3項の委託に基づく屋外タンク貯蔵所に係る審査をいう(第16条の37第1項)。協会は審査事務規程を定めて総務大臣の認可を受けなければならない。

検査員 審査事務を実施する者をいう(第16条の38第2項)。資格は危険物の規制に関する政令第41条の3が定め、大学で機械工学・造船工学・土木工学・建築工学の学科又は課程を修めて卒業し石油タンク等の研究・設計・工事監督・検査に三年以上の実務経験を有する者、短期大学又は高等専門学校の卒業者で五年以上の経験を有する者、七年以上の経験を有する者、総務大臣がこれらと同等以上と認定した者のいずれかである。

特定屋外タンク貯蔵所 貯蔵し、又は取り扱う液体の危険物の最大数量が1,000キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所をいう(危険物の規制に関する政令第8条の2の3第3項)。このうち10,000キロリットル以上のものは第14条の3第1項の保安検査の対象となる(同令第8条の4第1項)。

品名 別表第一の品名欄に掲げる物品の名称をいう(第11条の4第1項)。類別・性質・品名の三つの欄で危険物を特定する別表の構造に対応する概念であり、化学物質名や商品名とは一致しない。

公示 命令をした旨を、標識の設置その他総務省令で定める方法により外部に知らせることをいう(第11条の5第4項)。命令の相手方への告知とは別の行為であり、命令の効力発生要件ではない。

五 改正の経緯と内容

改正法令主な内容
昭和40年法律第65号第11条の次に二条を追加。旧第11条の2に危険物の種類又は数量の変更の届出(十日前まで)を、旧第11条の3に貯蔵・取扱基準の遵守命令を創設。附則で施行後十日以内の変更について「あらかじめ」と読み替える経過措置
昭和49年法律第64号旧第11条の2に第2項として「前条第七項の規定は……準用する」との規定を追加し、許可の通報の仕組みを届出の受理にも及ぼす
昭和51年法律第37号第11条の3(危険物保安技術協会への審査委託)を新設。旧第11条の2を第11条の4、旧第11条の3を第11条の5に繰下げ。繰下げにより第11条の直後でなくなったことに伴い、旧第11条の2第2項中の「前条第七項」を「第十一条第七項」に改正。第三章の二(危険物保安技術協会)と第14条の3(保安検査)を創設
昭和63年法律第55号第11条の4第1項の届出事項を「種類又は数量」から「品名、数量又は指定数量の倍数」に改め、倍数の定義を条文に明記。第1項の次に含有物品に関するみなし規定を新たな第2項として追加し、従前の第2項を第3項へ移す
平成13年法律第98号別表第一第五類にヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類を追加したことに伴い、第11条の4第2項中の「第五類の項第九号」を「第五類の項第十一号」に改正
平成14年法律第30号第11条の5に第4項(公示)及び第5項(標識の設置と受忍)を追加。第12条、第12条の2、第12条の3、第13条の24、第16条の3、第16条の6に、これらを準用する規定を追加

第11条の5第2項及び第3項は第1項の繰下げ後に追加されたものであり、平成14年法律第30号が第2項中の「次項」を「次項及び第四項」に改めていることから、同改正の時点で既に置かれていたことが確認できる。

六 法的性格と解釈上の論点

審査の委託と権限の留保

第11条の3の委託は、行政庁が自らの判断の基礎となる技術的評価を外部に求める行為である。協会の審査結果は市町村長等を法律上拘束しない。許可を与えるかどうかは第11条第2項の要件に照らして市町村長等が判断するのであり、協会の審査は判断材料にとどまる。したがって、審査それ自体は申請者の権利義務を直接左右する行為ではなく、処分としての性質を持たない。申請者が審査の内容に不服があるとしても、争う対象は許可又は不許可の処分である。

この構造は、同じ時期以降に他の行政分野で進んだ民間開放とは方向が異なる。建築基準法は平成10年の改正によって指定確認検査機関の制度を導入し、建築確認という処分自体を民間法人が行うことを認めた。消防法第11条の3は、処分権限を市町村長等に残したまま、その手前の技術審査だけを切り出した。制度設計としてどちらが優れているかは別の問題であるが、権限の所在が明確である点で、消防法の方式は責任の帰属について争いを生じにくい。

委託する自由と受託を拒めない不自由

委託するかどうかは市町村長等の裁量に属する一方で、協会は正当な理由がなければ受託を拒めない。この非対称から、いくつかの帰結が導かれる。第一に、委託の有無によって審査の密度に地域差が生じうる。第二に、協会の側は、全国から持ち込まれる委託を処理できる体制を維持する義務を事実上負う。第16条の37の審査事務規程、第16条の38の検査員資格と解任命令、第16条の47の監督命令、第16条の48の報告徴収・立入検査といった総務大臣による監督の仕組みは、この体制維持義務を支えるものと理解できる。

委託費用の帰着

第11条の3の委託は市町村長等と協会の間の契約であり、申請者はその当事者ではない。委託料は委託した市町村長等が負担する。もっとも、屋外タンク貯蔵所の設置・変更の許可に係る手数料は、地方自治法第227条に基づく手数料条例によって定められており、その容量区分が協会への委託の基準と一致している例がある。柏崎市消防本部が公表する危険物関係手数料一覧表では、特定・準特定屋外タンク貯蔵所について容量500キロリットル以上1,000キロリットル未満の設置許可が570,000円、1,000キロリットル以上5,000キロリットル未満が880,000円とされている。500キロリットルと1,000キロリットルという区切りは、危険物の規制に関する政令第8条の2の3第1項・第3項の区分そのものである。制度上は行政が負担する審査の費用が、手数料の水準を通じて申請者に転嫁される構造になっている。申請者から見れば、協会の審査を受ける施設であるかどうかが、手数料の額に表れる。

命令に罰則が置かれていないこと

第11条の5第1項及び第2項の命令に違反した者を処罰する規定は、第九章に置かれていない。第42条第1項が掲げるのは第12条の2第1項又は第2項の命令違反(第4号)、第12条の3第1項の命令又は処分違反(第5号)などであり、第11条の5は現れない。命令に従わない場合は、第12条の2第2項第1号により市町村長等が期間を定めて使用の停止を命ずることができ、その使用停止命令に違反したときに第42条第1項第4号の罰則(六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金)が働く。

注意を要するのは、命令の前提となる第10条第3項の違反そのものには罰則があることである。第43条第1項第1号が三月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金を定めている。すなわち、基準違反の行為は命令を待たずに処罰できるのに、その行為を正すよう命じる命令には罰則がない。第11条の5の命令は刑罰を発動するための前段階ではなく、刑事手続とは別の軌道で是正を図るための手段である。消防庁危険物保安室の「危険物施設違反処理マニュアル」が、第10条第3項違反について警告、基準遵守命令、使用停止命令という段階を定め、告発は事故が発生して大きな被害が生じた場合などに位置づけているのは、この二本の軌道を使い分ける運用である。

移動タンク貯蔵所の場合、この段階的な処理が二つの行政庁にまたがる。命令は所在地の市町村長が行い、使用停止命令は許可をした市町村長等が行う。第11条の5第3項の通知は、段階を進めるための前提条件として機能する。通知が遅れれば、命令違反の状態が続いていても次の段階に進めない。条文が「速やかに」と定めているのは、この接続を確保する趣旨である。

標識の設置を妨げた場合

第11条の5第5項後段は、所有者、管理者又は占有者が標識の設置を拒み、又は妨げてはならないと定める。この禁止に違反した者を処罰する規定はない。第44条の各号にも現れない。設置された標識を損壊した場合は刑法の公用文書等毀棄罪の問題となり得るが、設置そのものを妨げる行為に対しては、消防法上の制裁が用意されていない。公示制度が命令の実効性を社会的な評価によって支える仕組みであることからすれば、その入口の妨害に制裁がないことは制度の弱点として残る。

届出義務違反の扱い

第11条の4第1項の届出を怠った者は、第44条第8号により三十万円以下の罰金又は拘留に処される。第45条第3号が掲げる両罰の対象には第44条第8号が含まれておらず、法人に罰金刑が科されることはない。他方、前記マニュアルは、未届出が手続上の違反にとどまる場合には命令等の措置を行わず届出をさせることで足りるとし、届出の結果として変更許可を要する状態であることが判明した場合には、警告、命令、使用停止命令へと進むとしている。届出義務違反は、それ自体が処罰の対象でありながら、実務では是正の入口として扱われている。

七 裁判例

最高裁判所第二小法廷平成17年6月24日決定

第11条の3の委託の性格を考えるうえで参照に値するのは、同種の仕組みをより徹底した建築基準法に関する最高裁の判断である。

事案は次のとおりである。指定確認検査機関である株式会社が、横浜市内の大規模分譲マンションについて建築基準法第6条の2第1項の確認をした。周辺住民らが同社を被告として確認の取消しを求めて訴えを提起したが、完了検査の終了により訴えの利益が消滅した。そこで住民らは行政事件訴訟法第21条第1項に基づき、確認の違法を理由とする地方公共団体に対する損害賠償請求へ訴えを変更することを申し立て、原々審がこれを許可し、地方公共団体が抗告した。

最高裁は、「指定確認検査機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、地方公共団体の事務であり」、その帰属先は「当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体」であるとした。そしてこの地方公共団体が行政事件訴訟法第21条第1項の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」に当たるとして、抗告を棄却した。

この決定が解決したのは、処分権限そのものを民間法人に移した制度において、権限行使の結果として生じた損害の賠償責任が誰に帰属するかという問題である。消防法第11条の3のもとでは、同じ問題が生じない。協会は審査を行うにとどまり、許可をするのは市町村長等であるから、許可が違法であった場合の賠償責任の相手方は当該市町村又は都道府県である。協会の審査に誤りがあったとしても、それは許可権者が判断の基礎とした資料の誤りであって、許可という処分の瑕疵として評価される。審査のみを委託するという選択は、技術力の調達と責任の明確性を両立させる設計であったと評価できる。

教示の瑕疵に関する裁判例

第11条の5の命令は不服申立ての対象となる処分であり、行政不服審査法第82条の教示を要する。教示を欠いた場合の効果について、消防庁の違反処理要領は、東京地方裁判所昭和43年2月5日判決(行政事件裁判例集9巻2号18頁)を挙げて、教示を怠ったことだけでは命令が無効又は違法になるものではないと解されるとしている。もっとも、教示の欠落は相手方の手続上の地位に影響するため、命令書の記載事項として教示を欠かさない運用が求められる。

判例が現れにくい理由

第11条の3から第11条の5までの規定について、公表された裁判例は見当たらない。その背景は三条それぞれで異なる。第11条の3の審査は処分ではないため、争訟の対象にならない。第11条の4の届出は受理を要件とする行為ではなく、行政庁が受理を拒むという場面が生じにくい。第11条の5の命令は、これに従えば終わり、従わなければ使用停止命令という重い処分に進むため、争う実益が次の段階に移動する。実際に訴訟になるのは、営業の継続が止まる使用停止命令や許可の取消しの段階である。命令の違法を主張する機会が、命令そのものを対象とする訴訟としては現れにくい構造になっている。

八 実務上の留意点

協会審査を要する工事の工程管理

危険物保安技術協会の令和6年度の業務報告によれば、同年度に現地審査を実施したタンクは443基であり、前年度の442基から1基増加している。容量別では1万キロリットル未満が191基、1万キロリットル以上が252基であり、不適合事例は2基であった。審査の内訳としては、完成検査前検査が前年度から21基増加し、保安検査が20基減少、臨時保安検査の実施はなかったとされている。

協会の審査は、設計の段階と工事の工程ごとの段階の二つで入る。設計審査では基礎・地盤のすべり、支持力、沈下、液状化と、タンク本体の材質、板厚、荷重条件、溶接施工方法が対象となり、完成検査前検査に係る審査では基礎・地盤が標準貫入試験等により、溶接部が目視試験、放射線透過試験、磁粉探傷試験等により確認される。いずれも工事の進行と不可分に結び付いているため、協会の審査日程を工程表に組み込まないまま工事を進めると、確認できない状態まで施工が進んで手戻りが生じる。500キロリットル以上の屋外タンクを計画する段階で、許可権者が委託を行う方針かどうかを確認しておくことが、工程計画の前提になる。

手数料の見通し

屋外タンク貯蔵所の設置・変更許可の手数料は、容量区分によって大きく変わる。前述の例では500キロリットル以上1,000キロリットル未満の設置許可が570,000円であり、容量の増加に応じて段階的に上がる。手数料の額は市町村の条例で定められるため、計画地の条例を確認する必要がある。協会への委託の有無によって申請者が別途費用を負担するわけではないが、手数料の水準にその区分が反映されている。

変更届の実務

品名、数量又は指定数量の倍数の変更の届出は、危険物の規制に関する規則第7条の3に定める届出書により行う。消防機関の審査基準では、届出に際して添付を求める書類として、移動タンク貯蔵所であれば危険物の比重証明書や側面枠取付図、屋外タンク貯蔵所であれば構内配置図、タンク容量計算書、防油堤容量を示す図書、消火設備検討書などが挙げられている。製造・取扱い工程の増減を伴う場合はフロー図の添付を求め、変更により保有空地が拡大する場合は位置基準の変更に当たるものとして変更許可申請を求める扱いがとられている。届出で足りると考えて進めた変更が許可を要する変更に当たると判断されると、工事の着手時期まで戻ることになる。品名の変更を検討する段階で、保有空地、敷地内距離、消火設備への影響をあわせて確認しておく必要がある。

倍数の変更が、指定数量の倍数が十以上の製造所や二百以上の屋外タンク貯蔵所といった区分に施設を組み入れる場合には、届出の受理が公安委員会等への通報の対象となる。届出をもって手続が完結するわけではない。

命令を受ける側の手続的な確認事項

第11条の5の命令は、原則として書面で交付される。消防庁の違反処理要領は、命令書の記載事項を命令の主体、客体、命令内容、命令の理由、履行期限、教示とし、交付は名宛人への直接交付を原則として受領書を求め、直接交付できない場合には従業者や防火管理者等の相当の関係者への交付、配達証明付き内容証明郵便による送達によるとしている。命令は受領者に到達したときに効力を生ずる。履行期限について、危険物施設違反処理マニュアルは、改修、移転、除去その他必要な措置を行うために必要な合理的な期間とするとしている。期限が実際の工事に要する期間と合わない場合は、命令を受けた段階で工程を示して協議することが、履行不能による次段階への移行を避ける道になる。

公示については、同要領が、標識の大きさの目安を縦42センチメートル×横29センチメートルから縦72センチメートル×横51センチメートル程度とし、記載事項の例として命令内容、命令日、設置日、所在地、受命者名、管轄の消防長又は消防署長名などを挙げ、設置場所の権原者の損害と第三者の利益を比較衡量して設置場所を決める必要があるとしている。命令が履行されて効力が消滅したときは標識を撤去する。公示は社会的な評価に直結するため、履行の完了を速やかに報告し、撤去を求めることが実務上の要点となる。

移動タンク貯蔵所に特有の事情

移動タンク貯蔵所の設置・変更の許可申請は、車両を常置する場所を管轄する市町村長等に対して行う(平成9年3月26日消防危第33号)。一方で、走行中又は積みおろし中に基準違反が現認された場合の命令は、その場所を管轄する市町村長が行う。消防庁は移動タンク貯蔵所等に対する立入検査を期間を定めて全国的に実施しており、平成12年9月29日消防危第100号は、実施場所として常置場所、危険物の積みおろし場所、道路上を挙げ、道路上以外の場所での検査にも重点を置くこと、道路上の検査は警察も実施するため原則として合同で行うことを求めている。重点確認事項として水圧試験に係る定期点検の実施状況や、危険物運搬車両の消火設備・標識・運搬容器の表示・積載方法が挙げられ、基準不適合には違反点数の付与を含む措置がとられる。

運送事業者の側では、ある車両が他県で命令を受けた場合、第11条の5第3項の通知によって常置場所の許可権者にその事実が届く。現場での是正が済んだとしても、許可権者の側では命令の記録が残り、第12条の2第2項第1号の使用停止命令の検討対象となり得る。現場限りの話として処理せず、常置場所を管轄する消防機関への報告を自ら行うことが、後の段階での不意打ちを避ける。

協会の審査と事業者の立場

協会の審査は市町村長等の委託に基づくものであり、事業者が協会に直接申請する関係にはない。審査の過程で協会から求められる資料の提出や現地での立会いは、許可権者を通じた求めに応じる形で行われる。審査の結果に疑義があるときに協会へ直接異議を述べる手続は法律上用意されておらず、許可又は不許可の処分に対する不服申立てによることになる。設計段階から許可権者と協会の双方が確認する事項を把握し、設計の根拠資料を整えておくことが、審査期間の見通しを立てるうえで有効である。

参考文献・資料

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