1. はじめに:なぜ今、CCUSが必要なのか
「また新しい事務作業が増えるのか……」と、CCUS(建設キャリアアップシステム)を負担に感じている経営者の方も少なくありません。しかし、2026年2月現在、CCUSはもはや「選べる制度」ではなく、「勝ち残るための必須ツール」へと進化しています。
建設業界が直面する深刻な課題
国土交通省のデータによると、建設業の技能者の賃金ピークは45〜49歳で、製造業よりも約5年早く訪れています。この背景には、技能者の能力を客観的に評価する業界横断的な統一基準が存在しないという構造的な問題があります。
技能者は異なる事業者の様々な現場を渡り歩くため、個人のスキルアップが処遇向上に直結しにくい環境でした。また、若年層の離職率も高く(新卒3年以内の離職率は全産業平均を上回る傾向)、業界全体の持続可能性が危ぶまれています。
CCUSが解決する3つの課題
参考資料: 国土交通省「建設キャリアアップシステムの概要」(https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/ccus_about.html)によると、CCUSは以下の課題を解決するために2019年4月に本格運用が開始されました。
- 技能者の処遇改善:経験・技能を正当に評価し、適切な賃金に反映
- 若手入職者へのキャリアパス提示:将来の見通しを明確化
- 専門工事企業の施工能力の見える化:優秀な技能者を雇用・育成する企業が選ばれる環境整備
本記事では、最新の制度改正情報と実務的な導入ポイントを踏まえ、CCUSが建設業者と技能者にどのような利益をもたらすのかを徹底解説します。
2. CCUSの仕組みと「4つのレベル」
2-1. システムの基本構造
CCUSは、技能者の就業履歴や保有資格を業界統一のルールで蓄積する仕組みです。運営主体は一般財団法人建設業振興基金で、国土交通省と建設業団体が連携して普及を推進しています。
実務の流れ:
- 技能者登録:本人情報、保有資格、社会保険加入状況等を登録
- ICカード発行:建設キャリアアップカード(通称CCUSカード)を取得
- 現場での就業履歴蓄積:現場に設置されたカードリーダーにタッチすることで、自動的に就業実績が記録
- 能力評価:蓄積データに基づき、国土交通大臣が認定した評価基準で技能レベルを判定
2-2. 技能者の「4つのレベル」とカラー制度
最大の特徴は、技能者の能力を「見える化」するカードの色分け制度です。
| レベル | カード色 | 対象者 | 主な評価基準 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 白 | 見習い技能者 | 就業日数のみ |
| レベル2 | 青 | 中堅技能者(一人前) | 就業日数3年以上 + 保有資格 |
| レベル3 | 銀 | 職長・熟練技能者 | 就業日数10年以上 + 職長経験 + 上位資格 |
| レベル4 | 金 | 登録基幹技能者・上級職長 | 就業日数15年以上 + 登録基幹技能者講習修了 |
参考資料: 能力評価制度については、国土交通省が認定した35の技能分野すべてにおいて、求められる経験(就業日数)、知識・技能(保有資格)、マネジメント能力(職長としての就業日数)の明確な基準が公開されています。 (出典:国土交通省「建設キャリアアップシステムポータルサイト」)
2-3. 2025年レベル別年収の改訂
2025年12月4日に開催された建設キャリアアップシステム(CCUS)処遇改善推進協議会では、改正建設業法の全面施行を踏まえ、CCUSレベル別年収試算が改定されました。
改定のポイント:
- 地域ブロック別に金額を明示(全国一律から変更)
- 住宅分野や解体など新たに認定された能力評価分野11分野を追加
- 改正建設業法による指導とも連動
参考資料: 新建ハウジング「『CCUSレベル別年収』を改訂 建設業法による指導にも紐づけ」(2025年12月19日)
3. 【事業者向け】導入のメリットと「経審」への影響
3-1. 経営事項審査(経審)での加点 ★最重要★
事業者の皆様にとって、最大の関心事は経営へのプラス要素でしょう。2023年8月14日以降の審査基準日(決算日)から、CCUSの活用状況が経審のW点(社会性等)に反映されています。
加点要件と配点
参考資料: 国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和4年8月15日公布)」
| 実施範囲 | 加点 | 要件 |
|---|---|---|
| 全ての公共工事で実施 | 10点 | ①CCUS現場登録 ②カードリーダー等設置 ③誓約書提出 |
| 公共+民間全ての工事で実施 | 15点 | 同上 |
実例:元請小規模事業者ほど加点を得やすい
- 1年間に元請公共工事を1件のみ施工→その1件でCCUS利用すれば10点加点
- 1年間に元請民間工事を1件のみ施工→その1件でCCUS利用すれば15点加点
重要な注意点:
- 審査基準日以前1年以内に発注者から直接請け負った元請工事が対象
- 下請のみの会社は加点対象外(ただし登録自体は必要)
- 期の途中でCCUSを導入した場合、次の経審では加点されず、次の次の経審から加点対象(導入後2年以降になろう)
Z点でのレベル判定加点
技能者名簿に記載した人で、審査基準日から過去3年以内にCCUSのレベルを向上させた人数に応じて加点されます。
3-2. 事務作業の効率化
実例:仙建工業建設株式会社の成功事例
東北から建設業界DXを牽引する同社では、CCUSと連携した労務管理システムの導入により、書類業務で年間8,000時間削減を実現しました。
効率化のポイント:
- 現場ごとの施工体制台帳の作成がスムーズに
- 社会保険加入状況の確認が自動化
- 建退共(建設業退職金共済)との連携で証紙交付申請が電子化
参考資料: 建設サイト・シリーズ「導入事例」(https://www.kensetsu-site.com/cases/)
3-3. 若手採用へのアピール効果
参考資料: 国土交通省データによると、建設業の新卒3年以内離職率は製造業よりも高い傾向にあります。離職理由の一つが「キャリアパスが見えない」ことです。
CCUSの導入により:
- レベル制度で「5年後、10年後の自分」がイメージできる
- 「能力を正当に評価し、賃金に反映させる仕組みがある」ことが求職者へのアピールに
- 深刻な人手不足の中での強い武器になる
3-4. 公共工事における実質的な必須化
参考資料: 国土交通省は「CCUS利用拡大に向けた3か年計画」を策定し、直轄Cランク工事でのモデル工事を全国展開しています。
- 28県が企業評価の導入を表明
- その他の全ての都道府県においても導入を検討中
- 将来的には建設業許可の要件や更新条件に組み込まれる可能性も議論中
4. 【技能者向け】「職人の履歴書」としての価値
4-1. 処遇改善の根拠
参考資料: CCUSによって、建設業界に共通の評価基準およびデータベースができました。これまで裏付けが難しかった技能者の経験や技能を、簡単に証明できるようになりました。
具体的なメリット:
- 自分の経験や資格が客観的に証明されるため、賃金交渉の強い根拠に
- レベルアップに応じた手当支給制度を導入する企業が増加中
- 転職時にも実績を証明しやすい
4-2. 建退共との連携強化
参考資料: 2023年度から建退共のCCUS完全移行が実施されています。
メリット:
- カードのタッチで就業履歴が記録されるため、退職金の積み増しがより確実・簡便に
- 証紙の購入・貼付・消印といった煩雑な事務作業を大幅削減
- 対象労働者の就労実績を漏れなく建退共退職金の掛金充当につなげ、透明性も向上
4-3. キャリアの継続性
実例:スカイツリーのような大規模工事への道
能力評価制度の明確な基準を参考に、自分に必要な経験や技能およびその時期を具体的に把握できます。
- 会社が変わっても、これまでの実績はすべてCCUSに引き継がれる
- レベル4(金カード)取得者は大規模プロジェクトへの参画機会が増加
- 将来的に分野のエキスパートとして認知される道筋が明確に
4-4. 技能者向けアプリ「建キャリ」の登場
参考資料: 建設業振興基金は、2024年11月29日に技能者向けスマートフォンアプリ「建キャリ」をリリースしました。
機能:
- 就業履歴や保有資格を手元のスマートフォンで確認可能
- 登録している資格者証などをいつでも画面に表示
- 能力評価のサポート
- 建退共掛金の納付状況確認
- CCUS応援団の特典確認
2025年12月には多言語表示機能も追加され、外国人技能者の利便性も向上しています。
5. 登録費用と今後のスケジュール
5-1. 2026年現在の費用体系
参考資料: 一般財団法人建設業振興基金「ご利用方法・料金」(https://www.ccus.jp/p/use)
技能者登録料(10年間有効)
| 登録タイプ | 費用 | 有効期限 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 簡略型 | 2,500円 | 発行9年経過後最初の誕生日まで | 本人情報のみ |
| 詳細型 | 4,900円 | 同上 | 保有資格・健康診断等も登録可 |
| 詳細型への変更 | 2,400円 | - | 簡略型からの変更時 |
優遇措置:
- 申請時60歳以上の方:有効期限は14年目の誕生日まで
- 再発行(紛失・破損・券面書換):1,000円
事業者登録料(5年間有効)
| 資本金 | 費用 |
|---|---|
| 500万円未満 | 6,000円 |
| 500万円以上1,000万円未満 | 12,000円 |
| 1,000万円以上2,000万円未満 | 18,000円 |
| 2,000万円以上5,000万円未満 | 30,000円 |
| 5,000万円以上1億円未満 | 48,000円 |
| 1億円以上 | 60,000円 |
| 従業員ありの個人事業主 | 6,000円 |
| 一人親方 | 無料 |
ランニングコスト
| 項目 | 費用 | 対象 |
|---|---|---|
| 管理者ID利用料 | 11,400円/年 | 全事業者 |
| 管理者ID利用料(一人親方) | 2,400円/年 | 一人親方 |
| 現場利用料 | 10円/回 | 元請事業者のみ(技能者の就業履歴1回ごと) |
注意点:
- 現場利用料は月末締めで翌月初旬に請求
- 一定額(1,500円)に満たない場合、最大6ヶ月間請求の繰り越し
5-2. その他の費用
カードリーダー等の設備投資
参考資料: 実務上、カードリーダーは約1万円〜約3万円で、特徴や機能により費用形態が異なります。
選択肢:
- 専用カードリーダー(卓上・可搬・据付タイプ等)
- iPhone + 専用アプリ「建レコ」
- CCUS認定連携システム(グリーンサイト等と連携)
- 顔認証システム(定置事務所等の離隔地作業向け)
埼玉県の事例: 埼玉県では、CCUSの普及促進のため、建設業振興基金と連携してモデル工事の受注者に対しカードリーダーの無償貸与を実施していました(2024年5月31日に終了)。現在は建設業振興基金によるモニター募集制度を活用できます。
参考資料: 埼玉県「建設キャリアアップシステム(CCUS)活用モデル工事」
5-3. 代行申請サービスの活用
費用相場:
- 事業者登録代行:2万円〜5万円程度
- 技能者登録代行:1名あたり3,000円〜5,000円程度
- 運用サポート:月額費用または年間契約
メリット:
- 登録時の書類不備を防止
- 現場運用のノウハウを短期間で習得
- 本業に集中できる
6. 導入ステップと実務上の注意点
6-1. 導入の推奨スケジュール
参考資料: 行政書士法人の実務アドバイスによると、「経営事項審査の申請を控えている場合は、審査基準日や申請期限から逆算し、余裕を持ったスケジュールで、できるだけ早めに手続きを開始すること」が推奨されています。
標準的なスケジュール:
- 1〜2ヶ月前:事業者登録申請(インターネット or 窓口)
- 申請後2〜6週間:審査・ID発行
- ID発行後:技能者登録申請(従業員分)
- 申請後2〜6週間:審査・カード発行
- カード到着後:現場運用開始
合計所要時間の目安: 申請開始から運用開始まで、おおむね2〜3ヶ月
6-2. よくある課題と解決策
参考資料: 建設キャリアアップシステム推進本部「15社における優良取組み事例集 第2版」(2021年11月)より
課題1:下請企業・技能者の登録が進まない
大手ゼネコンの成功事例:
- 購買業務管理要領を改定し、見積依頼書でCCUSとグリーンサイト加入を必須化
- 協力会HPでCCUS必須化を明記、代行申請受付窓口を設置
- 元請職員の目標管理にCCUSの達成状況(タッチ率)を追加し、人事考課に反映
課題2:現場でのカードタッチ率が低い
奥村組の工夫: ポイントプログラムを導入し、以下の活動に対してボーナスポイントを付与
- 沿道清掃への参加
- 現場の改善提案立案
- 朝礼での指差呼称立候補
- ワンポイント訓話
→生産性向上や安全意識高揚につながる
課題3:事務作業の増加
解決策:
- CCUS認定連携システムの活用(グリーンサイト等)
- RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入
- 実例:CCUS・GS加入状況調査の自動化で年間作業時間を425時間→223時間に削減(202時間削減)
参考資料: 建設業導入事例「Power Automate Desktop活用事例」
6-3. 外国人技能者への対応
参考資料: 2020年1月以降、外国人技能実習生や特定技能外国人を受け入れる場合は、事業者と実習生本人のCCUS登録が義務化されています。
必要書類:
- 特別永住者証明書
- 在留カード
- パスポート + 住民票(いずれか)
2025年12月の改善: 技能者向けアプリ「建キャリ」に多言語表示機能が追加され、外国人技能者の利便性が大幅に向上しました。
7. 最新動向と今後の展望
7-1. 2026年以降の制度改正予定
参考資料: 国土交通省「CCUS利用拡大に向けた3か年計画」(2024年7月)
ロードマップ:
- 2026年度:あらゆる工事でのCCUS完全実施を目指す
- 将来的:建設業許可の要件や更新条件に組み込まれる可能性を議論中
注意: 現段階で全事業者への法的義務化の時期は明言されていませんが、実質的な必須化が進行中です。
7-2. 「技能者を大切にする企業」自主宣言制度
参考資料: 2025年7月の中央建設業審議会で、経審の新たな加点項目として方向性が示唆されました。
制度概要:
- 発注者、元請、下請の区分ごとに、CCUSを活用した技能者の処遇改善のための取組を宣言
- 宣言企業はロゴマークを使用可能
- 企業の一覧を国交省HP上で公表
- W点での加点(詳細は今後決定)
参考資料: ORION行政書士オフィス「【経営事項審査】経審の加点項目改正か 令和7年(2025年)」(2025年7月10日)
7-3. 登録・利用状況
参考資料: 国土交通省「建設キャリアアップシステムの利用状況(2025年10月末)」
最新データ(2025年10月末時点):
- 技能者登録:約220万人(建設技能者の約2人に1人が登録)
- 事業者登録:約27万社(建設業許可事業者の約6割)
- 登録から運用フェーズへ移行中
技能者・事業者ともに登録数が年々増加しており、建設業界においては常識になりつつあります。
8. まとめ:今すぐ始めるべき理由
CCUSは、もはや「検討段階」ではなく「実行段階」に入っています。
今すぐ始めるべき3つの理由:
- 経審加点の対象期間は過去1年
- 次回の経審に間に合わせるには、今すぐ登録が必要
- 期の途中導入では2〜3年後にならないと加点されない
- 公共工事での実質的な必須化
- 国・自治体の工事でCCUS登録が必須となるケースが増加
- 未対応では入札参加資格に影響する可能性
- 人材確保の競争力
- 若手採用において「キャリアパスが見える会社」は強い
- 優秀な技能者を確保・育成する企業が選ばれる環境へ
次のステップ:
- 自社の経審スケジュールを確認
- CCUS登録にかかる費用を試算
- 代行サービス利用の検討
- 事業者登録申請の開始
参考リンク:
- 建設キャリアアップシステム公式サイト:https://www.ccus.jp/
- 国土交通省CCUSポータル:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/ccus_about.html
- 建設業振興基金(問い合わせ先):公式サイト参照
【コンサルティング・事務所案内】
CCUS導入・運用支援から建設業コンプライアンスまで
~「中川総合法務オフィス」が貴社の経営基盤を強固にします~
CCUS(建設キャリアアップシステム)は、単なる登録作業ではありません。それは、貴社が「法を遵守し、技能者を大切にする優良企業」であることを公的に証明する、経営戦略の柱です。
当事務所では、850回を超える全国での研修実績と、建設業法の逐条解説を完成させた専門知識に基づき、CCUSの導入・活用をトータルでサポートいたします。
■ 中川総合法務オフィスのCCUS・コンサルティング内容
- 戦略的導入支援: 経審(経営事項審査)での加点を最大化するための登録・運用アドバイス。
- 社内体制の構築: 現場での就業履歴蓄積をスムーズにするための事務フロー構築支援。
- 技能者処遇改善コンサル: レベルアップに応じた賃金体系の構築など、法改正に準拠した社内規定の整備。
- 建設業コンプライアンス研修: 改正建設業法、取適法、CCUSの意義を全社員・協力会社に浸透させるための出張研修。
事務所紹介:中川総合法務オフィス
当事務所は、京都を拠点に全国の企業・自治体のコンプライアンス経営を支援しています。
- 代表プロフィール: 行政書士。全国での講演実績は850回を超え、現在は「1,000回登壇」を目標に精力的に活動中。建設業法の逐条解説を自ら執筆し、ブログやYouTubeで最新の法改正情報を発信し続けています。元バレーボール高校選抜選手としての情熱を持ち、実務にあたっています。
- 主な業務範囲:
- 企業法務・コンプライアンス: 建設業・IT企業を中心に、不祥事防止研修、内部統制、内部通報窓口の受任。
- 公務員倫理: 地方公共団体向けのコンプライアンス研修。
- 知的財産・著作権: 著作権実務および関連相談。
- 相続実務: 京都(長岡京・向日市)、大阪、神戸エリアを中心に、遺言・遺産分割・相続税相談を総合サポート。
- 運営メディア:
- YouTube「中川総合法務オフィスチャンネル」:法改正やリスクマネジメントを分かりやすく解説。
- 公式ブログ:建設業法、著作権、相続に関する専門情報を日々更新。
「法を味方につけ、次世代に選ばれる建設会社へ。」 CCUSの導入や、建設業法への対応でお困りの際は、ぜひ当事務所へご相談ください。
お問い合わせは https://compliance21.com/contact/ へ

