契約書には「署名」と「印鑑」がないと無効なのか

1.署名・記名・押印(捺印)の違い

(1)契約書等の有効性

契約書には署名と押印(捺印)があってはじめて法律的文書として十分な効果を発揮する。

契約書に署名と押印(捺印)があってこそ,その人の意思にもとづいてできた書類であることが明確になるからである。

(2)署名

ここで「署名」とは、みずから手書きで自分の氏名を書くことである。

自筆で氏名を書く自署のことである。本人自身のサインである。

(3)記名

これに対して「記名」とは、氏名を彫ったゴム印を押したり、パソコンやタイプで氏名を打ったり、または他人に代わって氏名を書いてもらったりする場合である。

(4)署名と記名の法的な違い

法律が、署名と記名とを区別しているのは、署名には押印(捺印)が不要で、記名には押印(捺印)が必要だからである。署名が原則で、記名捺印がその代わりをする。

例えば、商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律では
「商法中署名スヘキ場合ニ於テハ記名捺印ヲ以テ署名ニ代フルコトヲ得」とある。

また、 手形法第八十二条 「本法ニ於テ署名トアルハ記名捺印ヲ含ム」、小切手法 第六十七条 「本法ニ於テ署名トアルハ記名捺印ヲ含ム」とある。

2.署名に押印は要らないはずですが…。

(1)意思の明確化

このように、法律的には署名があれば押印はなくていいわけなのに、実務上は署名+押印が常識になっている。

これを悪しき日本文化であると言うのは早計である。

署名に加えて、押印をすることによって、確定的、断定的、終局的な意思表示がその文書には見られるからである。

むしろ、署名だけで押印がないと、まだその文書は未完成であって、最終的な意思表示が留保されているのではないかと解されるおそれがある。

(2)訴訟実務

裁判においても、文書の証拠書類としての信憑性や価値を判断にするに当たって、署名のみの有効、無効の形式的な判断だけでは十分ではなく、その文書が果たして本人の真意(最終的な意思表示)により作られたものかの点を実質的に判断、審理する。

その際に署名に加えて押印するという実務社会の慣習を考慮するとである、ということを考えられたら、署名に加えて押印するのが、文書の真実性の証明のためには有効である。

(3)銀行実務

銀行でも、本人確認で印鑑照合をするが、やはり署名に加えての押印は実務上は当たり前になっている。

(4)署名の柔軟性

もっとも、この署名といっても、必ず戸簿簿上の氏名ではなくても構わない。

文書の作成主体が特定できるのであれば、通称でも、ペンネームでも、または雅号だけでもよい。

個人企業の商店などであれば、商号や屋号だけでもよい。権利義務の主体が明確になればいいからである。

特に注意すべきであるのが、会社を相手にする場合である。

(5)会社の署名方法

会社を法律上の当事者とする場合には、

「山田株式会社 代表取締役 山田太郎」のように「商号-代表資格-代表者の氏名(+押印)」を書くべきである。

登記事項証明書にある代表者名との照合、会社の代表者印として登記所に届け出てある印鑑との照合もそれぞれ必要である。

また共同代表のときはその全員の署名が必要である。

念のために付け加えると、会社ではなく個人が当事者の場合には決して肩書などはつけるべきでない。

もし、仮に肩書きを付けていれば、その会社が権利義務の主体とされて思わぬ債務を負担をすることがあるからである。

3.自分が署名できないときはどうするか。

(1)第三者に「代書」してもらう方法…署名の代行(代理署名)

第三者が本人の名前を署名して、その下に本人の印鑑を押す方法である。これも法的には有効である。

⇒本人が第三者に代行権限を与えたかどうか、筆跡鑑定などで問題になりやすい難点がある。

(2)第三者Bが「A代理人B」と署名しBの印鑑を押す方法

代理人は通常は委任状を取るからその委任状にはAの署名と印鑑もあるのでこちらの方が安心できる。

また、未成年者の場合には法定代理人(親権者)の署名と押印を付け加えることが必要である。

4.実印と認印の違い

(1)実印とは

実印というのは、個人の場合は、自分の住民基本台帳がある役所に、自分の実印として印鑑登録をしている印鑑のことである。

会社の場合は、その会社の登記をしている登記所(法務局)に会社代表者の印鑑として印鑑届をしているもののことである。

印鑑登録のしていないふつうの印鑑が認印である。

(2)実印が必要な時

実印を押さなければならない場合は、公正証書を作成するときと、不動産登記や会社登記について各種登記申請をするときで、あとは特に文書を受理するほうで実印を要求したときにこれを押すことになる。

また、実印使用のときは通常は実印であることを裏づけるため印鑑証明書を添付する。

印鑑証明書の有効期間は、登記をする場合なら発行の日から三か月以内(不動産登記法施行細則四四条ノ四等)公正証書の場合は発行の日から六か月以内(昭和二四年五月三〇日民事局長通達)が原則である。

法的には実印でも認印でも通常の契約書などではその法的効果については全く優劣はない。

 

5.示談書作成時

法的なレベルの紛争になったとき、紛争を収束させるために「示談書」作成による最終解決を図ることがあろう。

会社のクレーム対応でも今日的に必要とされる。

この時に備えて、そのフォーマットは用意しておく。

さらに実際上は、清算条項はしつこいくらいに入念に記入する。

署名(サイン)とできれば印鑑(認印でもよいが実印が望ましい)がほしい(記名捺印でも可能)。

相手方と当方の2枚用意して、「割印」を押す。

なお、複数枚の示談書の時は、ページごとの「契印」を押す。

 

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