中川総合法務オフィスでは、企業のコンプライアンス、リスク管理、そして企業倫理に関するコンサルティング、研修、講演に長年携わってまいりました。

そのなかで、金融機関での研修も担当してきていますが、銀行での横領事件や企業の検査不正など、残念ながら我が国ではいまだに企業不祥事が後を絶たず、社会的なシステムが疲弊している現状を目の当たりにしています。このような状況を打開し、組織を再生させるためには、形式だけではない、実質的なリスクマネジメントの視点や職業倫理向上の仕組みを取り入れることが不可欠です。

下記では、過去に発生した東京池袋のある信用金庫での1億円着服事件を題材に、企業不祥事を未然に防ぐためのリスクマネジメントと、私が提唱する「3段階リスクチェックの方法」についてお話しいたします。この考え方は、銀行業界はもちろんのこと、メーカーの検査不正防止など、あらゆる業種・組織に応用可能です。

池袋の信用金庫で発生した不正事件から紐解く不祥事の構造

この事件は平成8年(1996年)に発生しました。当時50歳前後の女性行員が、主に高齢の顧客を狙い、得意先での営業活動を通じて約1億円もの大金を不正に着服したというものです。なぜこのような巨額の不正が可能だったのでしょうか。背景には、個人の「動機」「機会」「正当化」という不正のトライアングルが存在します。ローンの返済に追われるといった動機、高齢者という立場の顧客に対する営業という職務上の機会、そして「一時的に借りるだけ」といった自己正当化が不正を後押ししました。

しかし、見過ごせないのは組織側の問題です。当時の行内の検査体制では、このような継続的な不正行為を見抜くことができませんでした。これは、内部統制、リスク管理、そして組織の倫理体制に構造的な欠陥があったことを示唆しています。

企業不祥事を防ぐための鍵:リスクマネジメントと職業倫理

私の考えでは、コンプライアンスは単なる法令遵守という「手段」ではなく、組織が社会からの信頼を得て持続的に発展していくための「目的」そのものです。そして、その目的を達成するための不可欠な「手段」が、実効性のあるリスクマネジメントと、従業員一人ひとりの職業倫理の向上、すなわちエシックスの実践です。

実践的な不祥事防止策:3段階リスクチェックの方法

では、具体的にどのように企業不祥事を防止すれば良いのでしょうか。内部統制の国際的なフレームワークであるCOSOや、リスクマネジメントの国際規格であるISO31000の考え方を基礎としつつ、私は以下の「3段階リスクチェックの方法」を提唱しています。

  1. 第1段階:リスクの洗い出しと評価 組織内外に存在する潜在的なリスクを網羅的に洗い出します。過去の不祥事事例(本事例のような銀行不正だけでなく、最近の個人情報漏洩、ハラスメント、景品表示法違反、税務リスクなど、多岐にわたるリスクを最新の情報や官公庁の指針なども参考に検討します)を踏まえ、発生可能性と影響度を評価します。ここでは、一般的なリスクだけでなく、組織固有のビジネスモデルや社風に潜むリスクを見抜く洞察力が重要です。
  2. 第2段階:リスクへの対応策の策定と実施 洗い出したリスクに対する具体的な対応策を策定し、実施します。これには、規程やマニュアルの整備、従業員への継続的な研修、内部通報制度の実効性向上、ITシステムの導入によるチェック機能強化などが含まれます。特に、従業員がリスクを認識し、適切な行動をとれるようにするための教育は、単なる知識付与に終わらず、自分事として捉えられるような啓蒙的なアプローチが必要です。
  3. 第3段階:モニタリングとレビュー 実施した対応策が有効に機能しているかを継続的にモニタリングし、必要に応じてレビューを行います。内部監査や外部監査、第三者委員会によるチェックなどがこれに該当します。変化する社会情勢や新たなリスクの出現に対応するため、このプロセスはPDCAサイクルとして継続的に回していく必要があります。経営層による定期的なレビューと改善へのコミットメントが不可欠です。

この3段階リスクチェックの方法は、組織のあらゆる階層、あらゆる業務において適用されるべきであり、経営層、管理職、一般従業員それぞれが自身の役割と責任を理解し、主体的に関与することが成功の鍵となります。メーカーの検査不正なども、このフレームワークを応用し、製造プロセス、検査体制、報告ラインにおけるリスクを特定し、それぞれの段階で実効性のあるチェック機構を組み込むことで、再発防止に繋げることが可能です。

幅広い知見に基づくコンプライアンスへのアプローチ

私は、法律や経営といった社会科学の領域にとどまらず、哲学や思想といった人文科学、さらには自然科学まで、幅広い分野に深い関心と知見を有しております。これは、単に表面的な法規制の遵守だけでなく、人間の心理や組織の病理といった問題の根源に迫り、より本質的なコンプライアンス文化を醸成するためには、多角的な視点が不可欠であると確信しているからです。行動経済学の理論、組織心理学の理論、心理的安全性の理論やアンガーマネジメントの理論とそれぞれの実践方法等も豊富な人生経験に裏打ちされた洞察力で、組織が抱える潜在的な課題を浮き彫りにし、真に機能するコンプライアンス体制構築を支援いたします。

中川総合法務オフィスにお任せください

中川総合法務オフィス代表の中川恒信は、これまでに850回を超えるコンプライアンス研修などを担当し、多くの企業や自治体のリスク管理体制構築、組織風土改革に貢献してまいりました。特に、不祥事を起こした組織のコンプライアンス態勢再構築においては、豊富な経験と実績を有しています。また、現に内部通報の外部窓口を担当しており、生きた情報に基づいた実践的なアドバイスが可能です。マスコミからも不祥事企業の再発防止策について意見を求められることも少なくありません。

貴社のコンプライアンス体制に不安はありませんか? 法令違反リスク、ハラスメント問題、情報管理の問題、品質不正など、解決すべき課題は多岐にわたります。コンプライアンスは、リスクへの「対応」だけでなく、組織の信頼性を高め、競争力を強化するための「投資」です。

是非一度、中川総合法務オフィスのコンプライアンス研修やコンサルティングをご検討ください。豊富な経験と幅広い知見に基づき、貴社の組織文化に根ざした、実効性のあるコンプライアンス体制構築を全力でサポートいたします。

コンプライアンス研修の費用は、1回30万円(別途消費税、実費等)から承っております。貴社の状況やご要望に応じて、柔軟なカスタマイズも可能です。

お問い合わせは、お電話(075-955-0307)またはサイトの相談フォームからお気軽にご連絡ください。金融機関、上場企業をはじめ、あらゆる組織のコンプライアンス強化を支援いたします。まずはお気軽にご相談ください。

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