飲酒による公務員の不祥事と懲戒免職処分に対する取消訴訟の動向
もくじ
1.飲酒による公務員の不祥事
(1)公務員の飲酒運転の影響の大きさ
地方公共団体のリスクマネジメント、コンプライアンス、公務員倫理研修等では飲酒運転による不祥事防止がいつも問題になる。
それほど影響が大きいのだ。
しかも、マスコミが繰り返し取り上げる、次の福岡市での悲惨な交通事故はだれも反論できない悲惨さだ。
(2)福岡市役所での悲惨な事故
★福岡市で、平成18年に市職員による飲酒運転で幼児3人が死亡。
この事故を契機に、飲酒運転をした職員への罰則を強化する動きが全国に急速に広まった。
この事件の後は、飲酒によるものであれば、一律に「懲戒免職」が圧倒的であった。
現時点でも、講演先の条例などを見ると多い。
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2.懲戒免職処分に対する取消訴訟の動向
(1)取り消した判決
しかし、懲戒免職となった公務員が処分の取り消しを求めた裁判では、取り消された例が多くある。
・兵庫県加西市課長が、焼き肉店で飲酒後、帰宅途中に検挙された例
・佐賀県立高校教諭が、ホテルなどで飲酒後、約30分仮眠して運転した例
・三重県立病院職員が、休暇中の旅行先でビールなどを飲み翌朝検挙された例
・新潟市立小学校用務員が、飲酒から約8時間後に酒気帯び運転で物損事故を起こした例
・秋田県立高校教諭が、自宅で焼酎水割りなど5杯飲み約8時間後検挙された例
・京都市職員が、自宅で焼酎を飲み一方通行の道をバイクで逆走したとして現行犯逮捕された例
⇒これらは、けが人がいない、過去に飲酒運転での前科がない、重すぎる等の理由で取り消されている。
(2)取り消さなかった判決
もっとも、
・宮崎県都城市職員が、飲食店で焼酎のロック6杯飲み帰宅途中に検挙された例では
飲酒の量や飲食店から歩いて帰宅できる距離なのに運転した点が重視されて、取り消されていません。
3.現時点での、自治体の飲酒による処分基準
「一律免職」⇒「免職または停職3か月または6か月ほど」が増加してきた。
現状はこれが妥当であろうか。
しかし、問い合わせたところ、総務省公務員課は、自律事項として特に指導はしていない。
しかし、度重なると嘗てのような次官通達が出ることもあろうか。