1.地方公共団体の情報公開条例や規則に関する研修はどのようにやれば効果的であろうか。
(1)情報公開請求の増加傾向と「大量請求」問題
総務省から平成30年3月に、「情報公開条例等の制定・運用状況に関する調査結果」が公表されている。全国の都道府県と指定都市並びに事務組合等と市町村全体の調査結果が出ている。
また、地方公共団体でもこの間の公開請求の増加傾向などが栃木県等で詳しく分析して公開されている。
いずれにしろ、情報公開請求の増加傾向があって、その中の厄介な問題として「大量請求」問題がある。これへの対処のための誰でも無料でという情報公開条例の枠組みが国と同じように有料でいろいろな制限付き(例えば、公開請求文書の再利用や販売禁止等)がある。
また、公開請求権者は国と同じように「何人も」としている地方公共団体が多いが、住民に限っている場合もある。それは、ぞの自治体の裁量内の問題であり、少なくとも第一のステークホルダーである住民が文書を見る事が出来れば、コンプライアンス的には問題はない。これに対する攻撃は不当要求として扱えばよいだろう。警察の力も借りて対応するとよい。
(2)著作権と情報公開請求
著作権は人格権として、公表権がある。これとの調整は情報公開法で定めがあっても、地方公共団体の条例での定めが不十分なことが多いのと、何よりも法が人格権を軽視しておるのは紛れもない事実で、著作権者との衝突が非常に起きやす仕組みになっている。
(3)行政のアカウンタビリティと反情報公開的な態度
文書を隠す、カットする、変造するは財務省文書等でも平成30年になって表面化しているが、残念な国及び地方の公務員の基本的スタンスである。国家公務員法、地方公務員法の少なくとも信用失墜行為で懲戒処分の対象行為である。
(4)個人情報保護条例との調整
何が個人情報なのか、その定義からして分かっていない職員がいて、実務は非常に混乱している。定義が個人情報保護法と条例で異なっていることがあるときも混乱している。モザイク方式の個人情報と情報公開の趣旨をよく考えることである。
(5)公文書管理条例との調整
非常に遅れている。そもそも、公文書管理条例がない地方公共団体がかなりあるのだ。いったいどうなっているのか。公開の前提であろう。
2.効果の出る情報公開条例研修方法の必須内容
(1)当該地方公共団体の情報公開制度の概要
・公開対象の行政機関と対象外文書
・公開請求の可能主体…企業、団体、外国人等
・開示請求の対象文書…情報ではなく文書が対象、ビデオ、個人メモ、条例制定以前の文書、博物館等の歴史的文書
(2)不開示情報とその解釈
・個人に関する情報、法人等に関する情報、国の安全等に関する情報、公共の安全等に関する情報、審議・検討等に関する情報、事務・事業に関する情報
・部分開示
・公益上の理由による裁量的開示
・行政文書の存否に関する情報
(3)開示請求の具体的手続き
・文書の題名、行政機関の窓口での情報提供、行政資料室、開示請求書、権限の委任、補正手続