はじめに:なぜ今、内部通報制度の「実効性」が問われるのか
現代の企業経営において、コンプライアンス態勢の構築は、もはや単なるリスク管理の一環ではありません。それは、企業の社会的信頼を維持し、持続的な成長を遂げるための根幹をなす経営課題そのものです。そして、その実効性を左右する試金石となるのが「内部通報制度(ヘルプライン、ホットライン)」に他なりません。
2022年6月に施行された改正公益通報者保護法は、事業者に対して内部通報に適切に対応するための体制整備を義務化しました。さらに現在、通報者探索の禁止などを盛り込んだ新たな改正案の審議が進められており、社会が企業に求める倫理水準はますます高まっています。
しかし、制度を設けるだけで安心はできません。通報者が「報復されるのではないか」と恐れ、声を上げられない。窓口が機能せず、不正の兆候が見過ごされる。そのような「形骸化した制度」は、かえって組織の病巣を深刻化させる危険すら孕んでいます。
本稿では、数々の不祥事対応と組織再建に携わってきた経験から、真に実効性のある内部通報制度の構築と運営、そしてその要となる外部通報窓口の重要性について、深く解説していきます。
※2025年6月4日「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」が下記の内容で成立している。

これについては、「公益通報を理由とする不利益取扱い(解雇・懲戒)に対する立証責任の転換と刑事罰導入」が最も目を引く。不正を内部通報したことを理由に従業員を解雇や懲戒処分にする行為を刑事罰の対象とし、個人には「6か月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金」を、法人には「3000万円以下の罰金」を
科すとしています。さらに、従業員が300人を超える事業者が内部通報者の窓口の担当者を配置しなかった場合、国が立ち入り検査を行うことができるほか、命令などに従わない場合には30万円以下の罰金を科すとしています。
しかし、国会審議の中での批判も厳しいです。特に配置転換の禁止が盛り込まれていません。通報者の多くは業務のない部署への異動や嫌がらせなどの不利益取扱いを受けている実態があります。必要な証拠資料の持ち出しの免責、公益通報者の探索行為の禁止なども議論しただけで盛り込まれていません。また何よりも、審議でも明らかになりましたが、この法制度自体への理解が非常に公務員や国民の間で低いのです。こちらの方が最大の問題かもしれません。
【1】内部通報制度の構築・運営コンサルティング
信頼なくして機能せず。魂を込めた制度設計を
内部統制・コンプライアンスを実践するためには、リスクマネジメントとしての内部通報制度が不可欠です。この制度で何よりも大事なのは、組織内の人間がその制度を「信頼」し、安心して利用できるようにして運営していくことです。
表面的な体裁を整えるだけでは不十分です。消費者庁が公表している「公益通報者保護法に基づく指針」などを踏まえ、自社の実情に即した、血の通った制度を設計・運用しなければなりません。中川総合法務オフィスでは、単なる規程作成に留まらず、組織の隅々にまでその精神が浸透し、実効性のある内部通報窓口として機能するための包括的なコンサルティングを行っています。
【2】外部通報窓口の受任
なぜ、外部窓口の設置が推奨されるのか
組織内のリスク管理部門とは別に、経営陣からも独立した「外部の通報窓口」を設置することは、極めて有効な選択肢です。その理由は、内部の力学や人間関係から完全に切り離された中立・公正な立場を確保できる点にあります。これにより、通報者は心理的な安全性を感じ、より躊躇なく声を上げることが可能となります。
専門家の選定で、制度の成否は決まる
ここで特に注意したいのは、コンプライアンスや内部統制に詳しい「本物の」法律・法務事務所に依頼することです。決して、自称・僭称の専門家を謳うだけの法律事務所等に依頼してはなりません。
なぜなら、内部通報制度は非常にセンシティブな制度であり、その構築と運用には、付け焼き刃の知識では到底太刀打ちできないからです。内部統制に関する深い知見はもとより、実際の企業経験や人生経験に裏打ちされた洞察がなければ、痒い所に手が届く制度を構築することは困難です。法律の勉強だけで法務の仕事をしてきた方には、通報という極めて繊細な行為に及ぶ人間の内心を深く理解することは難しいでしょう。
リスク管理に対し、倫理的かつ実践的に深い経験を有する中川総合法務オフィスに、ぜひお任せください。企業や公共組織などの不祥事を未然に防ぐコンプライアンス態勢の礎として、どこまでも丁寧で専門的な通報窓口の運営をお約束します。
- 費用(顧問契約締結の場合):月額3万円(税別)~ ※ご予算に応じて相談可能です。
【代表・中川恒信によるコンプライアンス研修・コンサルティングのご案内】
貴社の組織風土を、より健全で強靭なものへ。
内部通報制度の構築は、あくまでコンプライアンス経営の一角です。真に不正を許さない組織文化を醸成するには、働く一人ひとりの意識改革が不可欠となります。
当オフィス代表の中川恒信は、これまでに850回を超えるコンプライアンス関連の研修を担当し、多くの企業の組織風土改革を支援してまいりました。単なる法令解説に終始する研修ではありません。心理的安全性の確保と、部下の主体性を引き出す相談型リーダーシップを組織の隅々にまで浸透させることで、風通しの良い、健全な職場環境の実現を目指します。
また、近年増加するハラスメントや悪質クレームへの対応策として、怒りの感情と適切に向き合うアンガーマネジメントの導入も推進。不祥事を起こしてしまった組織のコンプライアンス態勢再構築という困難な課題にも、数多く取り組んでまいりました。
現に多くの企業の内部通報外部窓口を担当し、マスコミから不祥事企業の再発防止策について頻繁に意見を求められるなど、その知見と実績は各方面から高い評価をいただいております。
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