コンプライアンスが今日求められる理由…ステークホルダーの信頼

1.コンプライアンス(経営)が今日求められる理由

企業のステークホルダーズは、企業に対し、利潤を追求するに際しても、社会や環境と折合いをつけていくことを要求・期待している。

企業は、単に法令のみを遵守しているだけでは、ステークホルダーズの要求・期待に十分に応えたことにはならない。

広く、法令を超えて社会のきまりを遵守することではじめて、ステークホルダーズの要求・期待に応え、社会の信頼・信用を獲得することができる。

だからこそ、コンプライアンスは、単に、最低限の法規範を遵守するのみならず、社内規範や業界自主ルール、さらには社会の良識・常識といった社会規範まで遵守することを求めるようになってきたのである。

 

2.企業の社会的責任(CSR)理念の一般化

企業を取り巻くステークホルダーズからの要求・期待に積極的に対応し、社会もそうした優良企業を評価してこそ企業との共存共栄の関係が築かれる、という考え方を「企業の社会的責任(CSR)」という。

 

3.企業倫理(Business Ethics)を社会が要求

また、コンプライアンスや企業の社会的責任(CSR)に関連して企業倫理(Business Ethics)という考え方がある。

企業倫理とは、社会的存在としての「企業はどうあるべきか」との命題に対する理念・哲学であり、コンプライアンス経営の基礎にあるものである。

企業の活動が、営利を目的とするときにしばしば倫理とぶつかることがあるが、その時に倫理を優先させることを社会が求めている。

例えば、平成21年に中国産のタケノコを輸入して京都(長岡京市)産と偽って販売した私の地元の農協(JA)があったが、安い中国産であれば利益は出るでしょう。しかし、嘘をついていいのであろうか。強い倫理違反があるのではないか。

そのような利益を優先して倫理をないがしろにすることを止める人間として当たり前の倫理を絶対に守ることが企業活動にも求められている。

不正競争防止法などの強制力ある法の規定もあるが、それよりも「バレなければいい」といった考え方を企業が利益のためにとることを社会は認めない時代なのだ。

 

4.ステークホルダー理論

(1)ステークホルダー理論とは?

コンプライアンスの基本においては、ステークホルダー(利害関係者)は誰かを考えるべきとよく言われる。これは何を意味しているのであろうか。

それは、コンプライアンス=法令遵守の向こうにあるもの、それがステークホルダーの存在だからである。

確かに、コンプライアンス経営に中心にあるのは、経営に関連する法令だが、単に法令順守で企業の信頼が得られると考えたら大間違いであろう。

例えば、法には触れないが、消費者の信頼を失った「パロマ事件」があるではないか。

ステークホルダーの信頼を得ることができているかどうか、これからさらにその信頼を高めることができるかどうかか継続的に企業が発展していくために必要で、コンプライアンス経営の核心であろう。

「コンプライアンス=法令遵守」だけでいいと考えていると、逆に法律に違反していなければ何をしてもいいというずれた認識につながりかねない。

「コンプライアンス」の本来の目的は、企業の永続的な発展のためにステークホルダーの信頼を得ることである。

法律に明らかに違反している場合はもちろん、法の網をすり抜ける行為や、法令違反ではないがステークホルダーの信頼を失う行為は、「コンプライアンス違反」だと考えるべきであろう。

そこで、ある会社にとっては全く問題にならない服務規程でもその会社にとっては、ステークホルダーの信頼を得るために必要なことであればそれはその会社のコンプライアンスの内容になる。

必ずネクタイをして仕事をする会社とそうでない会社があるのもステークホルダーがどう考えるかから判断すべきことであろう。

つまり、個々の会社には、法律の規制がなくても、必ず守らなければならないルールがあるはずだ。その会社を取り巻く環境におけるステークホルダーから考えて、これはこの会社のコンプライアンスの内容になるとすればコンプライアンス・ガイドラインに入れるべきで、コンプライアンスは1社毎に違うのである。

コンプライアンスマニュアルなどを丸写ししても意味がない。コンプライアンス研修を同じ内容でやっても意味ないし、講師を呼んでテキスト読ませる研修が流行だが何か意味があるのであろうか。やった言い訳に過ぎない。

 

(2)ステークホルダー(利害関係者)は誰か。

コンプライアンス経営におけるステークホルダーには、株主・顧客・取引相手・地域社会の利害関係者はもちろんの事であるが、さらにはステークホルダーには従業員も含まれていることを忘れてはいけない。

ある者の行為が他の従業員の業務の集中を妨害すればコンプライアンス違反になる可能性がある。働きやすい職場環境があってはじめて、社員は会社を信頼して安心して働けるからである。

もっとも、社会や会社内のルールは、初めての事態により後追いでつくられるのが実際である。ルールを作成する前に規程等で定めたコンプライアンス違反相当の行為があっても注意を促し社内処分はすべきでない。

 

5.問われる経営者の方針

経営者は個々の社におけるコンプライアンス体制を整備する根拠である経営方針を明らかにして、社としての明確なコンプライアンス経営方針に基づいて、各種規定・規程類を整備していく。

そして、説明会や研修等を通して、コンプライアンス経営の目的や意義、社内推進体制等を社内外に周知徹底していくことが大切である。

 

経営者は、今の時代の現在性を認識しているかどうかが問われる。どんな時代なのか?

上記の企業倫理やCSR(企業の社会的責任)、企業統治などはその中核にコンプライアンスがある。

例えば、著作権を含めた知的財産権の侵害をしないことは今日重要な企業のマネジメント問題で、著作権法はどのような法律で許される行為とそうでない行為がはっきりしていなくてはいけない。

企業は営利団体として利益の追求が目的である。しかし、社会との調和のもとで営利を追求するべきで、このことは従来より当たり前のことであった。

しかし、従来であれば、会社のためにやったのであるから多少は法律違反があってもいいのではないか。社会は大目に見てくれるとされていたものが、現在では許されなくなっている。

雪印乳業の事件や浅田農産の事件やニッポンハム事件など枚挙にいとまがない。

 

※ここで具体例を一つ上げると、

著作権関連では、過去にTBSのHPが読売などのコラムを編集長コラム「DUGOUT」で盗用した。

担当部長は社内調査に対し「外部ライターが執筆した」と説明したようだが、ライターの指摘で虚偽が発覚した。

真実はTBSのスポーツ局担当部長(47)が、計35件を盗用した。そして、TBSは記事盗用の部長を諭旨解雇した。 役員を含む上司5人も減俸や出勤停止処分になった。

従来は、これは単なる個人的犯罪行為ですまされたことであろう。

しかし、時代は変わった。

会社も認めているが、問題のコラムを掲載前にチェックする体制がなかったことから「組織にも一定の責任がある」として、退職金の出ない懲戒解雇は見送った。

この会社はコンプライアンス経営の格付けをすればかなりの下位になるだろう。

著作権コンプライアンスはできていない。管理職にあるものが著作権の侵害をして、最初は誤魔化すことにも多くの問題が横たわっている。

コンプライアンス態勢はこのようなリスク対応に応じた経営である。

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