はじめに

当オフィスは、京都、大阪を中心に1000件を超える相続の無料相談に対応し、遺言作成や遺産分割協議書作成など、豊富な実務経験を積んでまいりました。代表の中川は、法律や経営といった社会科学のみならず、哲学や思想などの人文科学、さらには自然科学にも深い知見を持ち、その多角的な視点から、他の誰にも真似のできない独自のリーガルサービスを提供しております。

本記事では、相続税対策の要ともいえる「小規模宅地等の特例」について、最新の法令情報や国税庁の見解を踏まえ、より深く、そして分かりやすく解説いたします。

1. 相続税対策の切り札「小規模宅地等の特例」とは

相続相談において、相続税の負担を大きく軽減できる可能性を秘めているのが「小規模宅地等の特例」です。この特例を適用できれば、土地の評価額を最大で8割も減額することが可能であり、その影響は計り知れません。

制度の趣旨

この特例は、高額な相続税が原因で、長年住み慣れた自宅や事業の基盤である事業所を手放さざるを得なくなるという事態を避けるために設けられた、一種の社会政策的な制度です。残された家族が安心して生活を続け、事業を継続できるようにという政策的配慮が根底にあります。単なる節税策ではなく、国民の生活基盤を守るための重要な制度と言えるでしょう。

制度の根拠

この特例は、租税特別措置法第69条の4に「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」として明確に規定されています。

2. 特例適用のための2つの重要要件

この特例を受けるためには、「土地のタイプ」と「土地を相続する人」という2つの側面から、定められた要件をすべて満たす必要があります。

(1) 土地のタイプ

対象となるのは、亡くなった方(被相続人)が亡くなる直前まで、以下のいずれかの目的で使用していた土地です。

  • 特定居住用宅地等: 被相続人が自ら住んでいた自宅の敷地(330㎡まで)→ 評価額8割減
  • 特定事業用宅地等: 被相続人が事業を営んでいた店舗や工場の敷地(400㎡まで)→ 評価額8割減
  • 貸付事業用宅地等: 被相続人が不動産貸付業を営んでいたアパートや駐車場の敷地(200㎡まで)→ 評価額5割減

※特定居住用宅地等と特定事業用宅地等は併用が可能で、最大730㎡まで8割引の適用を受けられます。

(2) 土地を相続する人

誰が土地を相続するかによって、要件が異なります。

  • 配偶者: 最も要件が緩やかで、無条件で特例の適用を受けられます。
  • 同居親族: 被相続人と同居していた親族が相続する場合、相続税の申告期限までその土地を所有し、かつ居住を継続する必要があります。
  • 別居親族(家なき子): 被相続人に配偶者や同居親族がいない場合に限り、一定の要件を満たす別居親族が相続する場合にも適用が認められます。この「家なき子特例」は、平成30年の税制改正で要件が厳格化されました。

3. 近年の改正と厳格化の動向

近年、この特例の適用要件は厳格化される傾向にあります。特に、安易な節税策として利用されることを防ぐため、実態に即した判断が求められるようになっています。

(1) 「家なき子特例」の厳格化

持ち家がある相続人には、原則として適用されません。具体的には、相続開始前3年以内に自己または配偶者の持ち家に住んだことがないこと、相続した宅地を申告期限まで所有し続けることなどが要件とされています。意図的に「家なき子」の状況を作り出して特例の適用を受けるといった租税回避行為は認められません。

(2) 申告の必要性

この特例は、自動的に適用されるものではありません。相続税の申告書に、特例の適用を受けたい旨を記載し、必要書類を添付して税務署に提出する必要があります。この手続きを忘れると、たとえ要件を満たしていても特例を受けることはできません。

4. 具体的な相続税計算例

例えば、路線価5,000万円、面積200㎡の土地を、同居していた長男が相続したとします。この土地が特定居住用宅地等の要件を満たす場合、土地の評価額は5,000万円の2割、つまり1,000万円として相続税を計算することができます。これにより、課税対象となる遺産総額が大幅に圧縮され、結果として相続税が非課税になったり、税額が大幅に減少したりするケースは少なくありません。

おわりに

「小規模宅地等の特例」は、正しく活用すれば極めて有効な相続税対策となります。しかし、その適用要件は複雑で、年々解釈も厳格化しています。ご自身のケースで適用が可能かどうか、専門家の意見を聞くことが不可欠です。

中川総合法務オフィスでは、豊富な経験と深い知見に基づき、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適な相続プランをご提案いたします。初回のご相談は30分~50分無料です。ご自宅や病院、各種施設への出張相談、オンラインでのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

ご予約・お問い合わせ

Follow me!