遺言の撤回
遺言書の「生前行為・抵触行為等」による撤回擬制の法理論と実務 〜大審院・最高裁判例で確立された解釈論の展開〜
2025年6月14日
遺言書の撤回擬制は、遺言者の最終意思を尊重するための重要な法理論です。民法1023条は、前の遺言が後の遺言や生前処分と抵触する場合、前の遺言は撤回されたとみなすと規定しています。大審院判例は「抵触」を広く解釈し、物理的不可能だけでなく、遺言者の意思として両立させない趣旨が明白な場合も含むとしました。最高裁は、養子縁組後の遺贈が協議離縁により撤回されたと判断した事例や、遺言の復活を認めた判例など、遺言者の真意を重視する姿勢を示しています。生前行為による撤回擬制は、遺言者自身の行為に限られ、法定代理人や債権者による行為は含まれません。令和2年からの自筆証書遺言保管制度導入により実務はさらに複雑化しており、遺言作成時の明確な意思表示、定期的見直し、専門家への相談が重要です。特に重要な最高裁判例(昭和56年11月13日、平成9年11月13日など)を詳細に解説します。

