■船橋市役所youtube事件(千葉地裁令和2年6月25日)
「‥‥法人の業務は、それ自体、 法に反しない限り、円滑に遂行されるべきものであるところ、それは固定資産及び流動資産の使用を前提に、 その業務に従事する自然人の労働行為によって構成されており、 法人の業務に対する妨害が、これらの資産の本来予定された利用を著しく害し、かつ、 業務に従事する者に受忍限度を超える困惑・不快を与えるときは、これをもって法人の財産権及び法人の業務に従事する者の使用者である法人は、その業務に従事する者に対し上記の受忍限度を超える困惑・不快が発生しないよう配慮する義務を負っている。
このことと、業務の妨害が犯罪行為として処罰の対象とされていること (刑法233条、 234条) 等を併せ考慮すると、 当該法人が平穏に業務を遂行できることは、当該法人の財産権やその業務に従事する者の人格権をも包含する総体として法的保護に値する利益に当たるというべきである。
そして、法人に対して行われた当該法人の業務を妨害する行為が、当該行為を行う者による権利行使として相当と認められる限度を超えており、 当該法人の資産の本来予定された利用を著しく害し、かつ、 その業務に従事する者に受忍限度を超える困惑・不快を与えるなど、業務に及ぼす支障の程度が著しく、事後的な損害賠償を認めるのみでは当該法人に回復困難な重大な損害が発生すると認められるような場合には、
当該法人は、上記妨害行為が、法人において平穏に業務を遂行する権利に対する違法な侵害に当たるものとして、上記妨害行為を行う者に対して、平穏に業務を遂行する権利に基づいて、上記妨害行為の差止めを請求することができるものと解するのが相当である。
‥‥被告による動画撮影行為は、 これにより、原告における公務の実施状況に関する情報を得ることができるという点で、 知る権利の行使としての側面はある。 しかし、 知る権利といえども、その行使は無制限のものではない。
‥‥動画を撮影するにつき、原告職員の言動をその対象とするにとどまらず、原告職員がその執務の遂行に使用する文書をもその対象としている‥‥庁舎を訪れた一般来庁者を動画で撮影し、撮影された一般来庁者との間で、複数回にわたりトラブルを引き起こしている‥‥被告に対応する原告職員を 「狂犬」や「野良犬」、「ごろつき」といった表現で表す‥‥その人格を否定する発言を繰り返したほか、被告に対応した原告職員にとどまらず、単に退庁していただけの原告職員を執拗に追いかけまわすなどして、 その様子を動画で撮影した上、これをユーチューブに投稿するなどし‥‥」(以上判決文からの著作権法に基づく引用)