1.クレーム対応3類型とコンプライアンス
(1)クレームは和製英語化
クレームは苦情の事で、claimでなくて complaint のこと
一般に私たちは claim と言っているが、これは英語で要求の事で、正確には complaint である。
しかし、もうこういう言い方で長年言ってきているので和製英語化している。
私も一般の使い方にならって、クレームを苦情等の意味で使うことにする。
(2)コンプライアンスとクレーム
クレーム対応は、その地方公共団体等組織の社会における評価と直結するので、住民や業者等のステークホルダーからの信頼を得るためには、会計年度任用職員も含めた全職員が対応方法をわきまえておくべき重要事項である。
そして、これをコンプライアンスの一環と位置づけることによって、軸足のしっかりした対応が可能となる。
感情論、損得論などが交錯するが、組織としてコンプライアンスの観点が最も重要でなかろうか。
(まさか今どき、「なめられたらあかん」等の昭和言葉でやっているアナクロ組織はないと思うが)
(3)クレーム対応3類型
クレームには、
通常の苦情にあたるクレーム(第1類型)、
悪質な不当要求に相当するクレーム(第2類型)、
そしてこの両者のいずれかが当初に分らないグレーゾーンのクレーム(第3類型)
がある。
第3類型は、やがては第1類型か第2類型に分類される。
このそれぞれに対する対応の使い分けが初期の段階では最重要であろう。
しかし、コンプライアンスが、ステークホルダーの信頼を得ることであるならば、クレームが発生した時点で、コンプライアンス違反の疑いがあると思って対応した方がいいのでなかろうか。
また各種の調査結果が出ているが、第1類型に入るものが実はほとんどなのである。
たしかに、クレーム商売という商売があるのかどうか知らないが、自分でクレーム原因を創作したり、不祥事クレームなどに便乗する方々もいるであろう。
しかしそれは実はごく一部である。
通常のこちらに何らかの落ち度があってのクレームと考えて、迅速で正確な初期対応を行なえば、問題が大きくなることもいざこざが起こることもないことは確かでなかろうか。
絶対に騙されまいとして、怪しいと思えば、不当要求かも知れないと思って頑なな対応をして、もしもそれが正当な苦情であったときはどうするのか。
グレーゾーンも誠実対応で臨んだ方がいいのはこのためである。
2.クレーム対応の実践
(1)クレーム対応3類型は会計年度任用職員も身に付けよう
今日のクレーム対応は、総務や警察OBの専門職ではない。組織で対応する時代である。
なぜなら、日本人の気質の変化もあって、謙虚を美徳とする控えめ文化が薄くなり、権利主張はきちんとしようといった権利意識の高い文化になってきていることも関係していようか。
いずれにしろ、私も含め企業等での現場経験が長い者は、少なくとも2度や3度は、ハードクレーマーに遭遇して、コテンパンにやられたことがあるのでなかろうか。
講演等で大阪や京都で私がコテンパンにやられたクレームの話もするが、話している最中に自ずから泣けてくる。
だから、非常勤の会計年度任用職員であろうと特別職であろうと臨時職であろうと派遣の方であろうとこの一定レベルは完璧にマスターしておく必要がある。
つまり、ほとんどのクレームは現場で発生するのである。
(2)クレーム対応専門家の信じられない現実感覚
次の対応方法は精神論としては素晴らしいし、クレーム対応専門部署や民間企業のコールセンターなどの経験を持つ方も意外といるので、そういう方はこれまでにやってきたクレーム対応でもいいであろう。
しかし、一般の地方公務員がこういうことをいうコンサルタントやその書物を読んでそのような行動を起こすとどういうことになるのか。
クレーム専門家を自称すること自体がもうすでに怪しいが、
「クレームは顧客満足を与えるチャンスであるから、総力を結集して、クレーマーによい組織として宣伝してもらえるように、最高の対応をすべきである」
「クレーマーには、怒鳴り返すのが一番である。相手はひるんで何も言わなくなる」
等を平気で喧伝しているコンサルタントがいる。
話としては面白い。ほんまにそれをやるのか。やれるのか、全員が。どの自治体でも。
(3)「顧客満足第一主義」「お客様は神様」の考え方が妥当しない場合
上の第2類型はもちろん他の類型でも、非合理的な対応をして労力と金銭をそれに費やするのは、逆にマイナスでなかろうか。
しかし、一定のクレーマーの要求を無視できないのも確かである。
そこで、労力も少なくて済む迅速な対応として、法的処理を背景にした倫理的な誠実対応が決め手になるのである。
3.クレーム対応は演習が不可欠
(1)組織の事例を含めた事例演習
クレーム対応は、知恵を働かせることが大切である。
知恵は、原則となる基準を大切にする。知識はその次である。
クレーム対応3類型による対応が不可欠である。
そして、演習事例はそれぞれの組織に特有のクレームがあるはずで、それを盛り込んだ演習をしよう。
(3)クレーム対応15原則
これは、数々のクレーム処理に実際苦しんむ中で、実際に知恵を働かせてやった私の成功した解決方法がもとになっている。
大阪や京都の民間企業に足掛け20年もいると、凄まじいクレーマーに遭遇する。社長にも頼んで前面に出てもらい、もう少しで警察の手を借りる所であった。思い出すたびに、金切り声やどすの利いた声が耳底にこだまする。当方の髪の毛も真っ白になるくらいであった。踏ん張る理由は、別にかっこつけて言うわけではないが、自分の会社と自分の家族を守るためであった。一匹オオカミで生きているわけではなかった。もちろん今もそうだが。
15原則はクレーム対応の可能性のあるすべての方々、実社会の人生経験のない士業の方々、現場を知らない方々等にお勧めする原則である。クレーマーに苦しむ方を助けたいから。
口頭でしか言えないような、信じられない不当要求と反社会的勢力対応の自分自身の経験も踏まえている。
4.地方公共団体等のクレーム対応研修
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