はじめに:リスクマネジメント研修(危機管理研修)の変遷と現代的意義
(1)リスクマネジメントのフレームワークの普及
リスクマネジメント研修は、字義的にはリスク管理研修のことであり、ISO31000の国際規格が普及したこともあって、危機管理研修に代わるものとしてこの数年なされてきている。
地方公共団体においては災害対策のための、「危機管理課」等の名称で主に自然災害に備える中堅以上の自治体で組織が出来てきており、それは定着した感があろう。
一方、COSO1992(現在は2013)の普及で企業では、COSOーERMの企業リスクマネジメントモデル2004が普及しており、その改訂版が2017年に出たこともあって、リスクマネジメント態勢は、従来よりもずいぶんと取り組みやすくなってきた。
(2)それでも遅れている企業と自治体のリスクマネジメント態勢
多分に主観的かもしれないが、リスクに備えるという言葉と危機に備えるという言葉では後者に緊迫感があり災害をイメージしやすといえようか。
もっとも、リスクマネジメントは危機管理よりも扱う対象がより広いことも事実であろう。
しかし、それ以外の点では自然災害や大事故に加えて不祥事等も含めて管理することが中心である事に変わりはない。
災害列島加えて国も地方も官の不祥事の多さよ。
それにもかかわらず、リスクマネジメントの普及が遅れている最大原因は、このグローバリゼーション時代にやはり島国根性と究極的には言ってしまわざるを得ないのであろうか。
(3)効果のでるリスクマネジメント態勢とその研修の主な内容は
国際リスクマネジメント規格であるISO31000等を参考にリスク管理の全体枠組みを知り、自然災害や大事故に備え、不祥事リスクも含めて行政機関や組織の危機管理を行う。
殊に、地域におけるリスク管理は今日では地方公共団体のリスク応方法が問われる時代になっており、また組織内の従業員や職員の安全確保も東日本大震災(2011/3/11)以降は当然に要請されている。
そこで、企業や行政機関の災害危機管理の成功例や失敗例を十分に参考にするとともに、それに加えて不祥事や不当要求等の事例を多数取り上げ個別具体的に対応方法を確認する。
2.リスクマネジメント態勢の重要ポイント
(1)ISO31000を参考にした組織におけるリスク管理の全体的把握
①リスクマネジメントプロセス(リスクアセスメント含む)、ハインリッヒの法則
②地方公共団体特有のリスクの把握 企業リスクマネジメントのリスクマップ作成
(2)災害における統合型リスクマネジメント
①現在の災害型リスクマネジメントの全体像の把握
②危機管理の諸相とその特徴
多発する事件・事故・災害:NBC災害、公害、天災、火災、飛行機、船舶、テロ
具体例:阪神・淡路大震災(1995/1/17)、新潟県中越地震(2004/10/23)、東日本大震災(2011/3/11)、熊本地震(2016/4)等の具体例を参考
(3)企業や地方公共団体の災害型リスクの認識(洗い出しワーク)
(4)平時の備え
職員意識改革、危機管理能力開発、地域の自然環境と人工環境の両者の再把握
(5)危機管理組織の在り方
事例紹介(東京都行政区、企業など)、中央省庁、消防、警察などとの連絡
(6)危機管理広報
ポジショニングペーパー、マスコミ対応の5原則等メディア対応(模擬記者会見)~デマの排除と住民・社会への広報
(7)災害に対する法制度の外観
災害対策基本法、災害救助法等
(8)BCPの作成方法
BCPは企業も官もこの数年で重要性が高まってきた。先進国の中で日本の遅れも目立つ
(9)トリアージ手法
詳しくはこのサイトの別稿参照。
(10)過去の事例研究と対応危機管理の問題点
新潟中越地震におけるプロジェクトチーム方法
熊本地震(2016/04)でのソニーのBCP成功例等
3.不祥事発生防止の統合型リスクマネジメント
(1)理論と実践の両面から企業や自治体業務における不祥事型リスクの発生を洗い出して取り上げる。
(2)経済産業省のリスク指摘や総務省の自治体リスク管理意見を踏まえてリスクアセスメントを行う。
自治体職員に必要な意識と手法を確認する。
公益通報者保護法等のコンプライアンス態勢も普及が遅れている。
(3)リスク管理すべき不祥事リスク
・「クレーム・不当要求」の発生と対応事例
・陸運支局における不正車検事案
・市役所における地元ミニ新聞・雑誌の購読強要事案
・近畿地方の市立病院における恐喝事案
・建設関係・福祉関係での事例や議員を使った事例その他
(4)対応方法
・不当要求行為対策要綱・不当要求マニュアル・職員研修
・警察との連携 反社会的勢力の場合の留意点
・行政機関における「不祥事」の発生と対応事例
事例(京都市の市職員覚せい剤使用、奈良市の病気休暇制度を悪用による不祥事等、
職員の横領防止方法としての【不正のトライアングル】、
パワハラ・セクハラ発生時の対応事例等