西武鉄道事件2004年:有価証券報告書の虚偽記載・インサイダー取引で内部統制の必要性、2006年金融商品取引法制定等に影響

【西武鉄道事件の概要】

西武鉄道(東証1部)の筆頭株主で創業家が支配するコクド(非上場)は, コクドの西武鉄道持ち株比率は40%台として公表され、東証の少数特定者持株比率基準に抵触しないよう、長年にわたって同社が保有する西武鉄道株を個人名義に偽装しており,2004年6月にコクドの所有する西武鉄道の持ち株比率について,故意に虚偽の記載をした有価証券報告書を提出した。

この時にコクド会長は,名義偽装が発覚すると西武鉄道の上位10位の持ち株比率が80%を超えて上場廃止となるのでコクドや西武鉄道などのグループ会社の幹部に,コクドの所有する西武鉄道株を売却するように指示して売却させ, 自らも親しい取引先にコクドの所有する西武鉄道株を売却してから名義偽装や有価証券報告書の虚偽記載の事実を公表した。

西武鉄道株の名義偽装は,2004年8月の西武鉄道の取締役会で監査役が指摘し,同社がコクドに調査を求めたが, これに対して, コクドの幹部から, 西武鉄道の取締役や監査役に辞任を求めるような圧力があったと報道されている。

また, 当時の西武鉄道の社長は,コクド側からコクドの所有する西武鉄道株を売却するよう指示があったとき,インサイダー取引に当たるとしてこれを拒否したが, 西武鉄道株の売却は、 これを無視して実行されたとも報道されている。

本件では,当時のコクド会長とコクド及び西武鉄道が証券取引法違反(インサイダー取引等)で起訴され,会長は執行猶予付き懲役刑及び罰金500万円,コクドは記金1億5.000万円,西武鉄道は罰金2億円のそれそれ有罪判決を受けた。

この事件の結果,当時のコクドの会長は, ゲループ会社の全役職を辞任し,また, 西武鉄道は、2004年12月に上場廃止となっている。再編等を進めた西武グループは、株式会社西武ホールディングスを中核とする企業グループになり、2014年4月、同社は東証1部上場となった。

本件は、法令上は「金融商品取引法(当時は証券取引法)197条1項1号、24条1項(虚偽有価証券報告書提出)、197条の2第13号(当時は198条19号)、166条3項(会社関係者等の禁止行為)」となる。

さらに,多数の企業や個人が西武鉄道に対して本件による株価下落によって被った損害の賠償を求めて 訴訟を起こしている。西武鉄道、コクド(の承継者)および会長に対し、西武鉄道株式を買い取った取引先企業、元株主等から損害賠償請求訴訟(最判平成23・ 9 ・13民集65巻6号2511頁、最判平成23・ 9 ・13判時2134号45頁ほか)がなされた。

(参照:西武グループ経営改革委員会2004年11月22日設置、2005年3月25日最終答申公表)

※答申による改革の一部引用

西武鉄道のコンプライアンス改善 

◆コンプライアンス室設置、◆企業倫理規範制定、◆企業倫理委員会設置、◆企業倫理ホットライン設置、◆コンプライアンス・マニュアル作成・配布、◆コンプライアンス・リーダー選任、◆コンプライアンス研修の実施

【内部統制・コーポレートガバナンス・コンプライアンス等の問題】

鉄道会社という公益的存在にもかかわらず、創業家オーナーの個人商店が実態であり、しかもそのトップをマスコミも褒めそやす絶対的存在であった。金商法の内部統制やトップや執行部のコンプライアンスを見守るコーポレートガバナンスの必要性を痛感させる事件であった。

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